引き続き大変厳しい状況が続いています。被災された方々には心からお見舞い申し上げると共に、様々な事態が好転していくことを希い、信じます。この「つぶやき」を暫く停止することも考えたのですが、私は証券会社の運営者として、このような状況の中でも、或るいはこのような状況の中であるからこそ、資本市場という大切な社会インフラの活動を支える一端として、資本市場に関して視点を発信することが、今出来ることの一つであると考え、敢えて書くこととしました。

マーケットはほぼ全面安です。しかしこの下がり方が、いわゆる日本売り=トリプル安(株式、債券、円が同時に売られること)ではありません。株は建設株などを除いて売られていますが、債券は買われており、円も変動が大きいですが、強い円高になり、若干円安に戻り、また円高になっている状況です。どうしてこうなるのか?これは既に説明されていることだと思いますが、読者のために、そして私なりの解釈を、書かせて頂きます。

株が売られているのは電力供給懸念を含めて日本経済の先行きが不安だからです。企業収益が下がると想像されるからです。一方建設会社などは、復興需要があると想起され、企業収益が良くなるだろうとの連想で買われているのでしょう。機関投資家はリスク資産から安全資産へのシフトを行っています。端的には株を売って債券を買っています。なので債券の金利は下がり、価格は上がっています。或いはそのようなイメージが、債券の値段を上げているのでしょう。復興のためにより多くの日本国国債が発行されるであろうという供給懸念よりも、今日どのように資金をシフトするか、といった需給やイメージの影響の方が大きいのだと思います。

一方で、得も云われぬリスクの上昇から、様々な換金売り=換金行動が行われていると思われます。「手元にお金を置いておきたい」と云う行動です。これが外国にある資産を売って円に替える行動となります。或いはそのようなことが想起されます。保険会社は払い出しに備えて外国の保険会社と再保険契約などをしていますが、それらが払われる時にはお金が円に替えられます。或いはそれが想起され、そして円は買われたのでしょう。

マーケットは、長いスパンでは事実に沿って動きますが、短いスパンではイメージ・心理が大変大きな作用をもたらします。今回のことが、この二日間株が売られたほど日本経済に、日本企業の収益に影響を与えるのか?恐らくそうではないでしょう。復興に必要なお金は、いずれは増税によって賄うしかない(日本国民全員で負担するしかない)と思いますが、税制を変えるには時間が掛かります。先ずは国債を発行して借金を増やして対応しなければなりません。ですから需給からいずれは国債は売られるのではないでしょうか?しかしこれは中々微妙で難しい問題です。

そして為替。日銀は昨日・今日と大量に資金供給をしましたが、今回の事態で直面している日本の状況や株式市場を考えると、もっともっと資金供給は行われるべきです。行うでしょう。そうすると世界における"円"という通貨の供給量が増える。するとモノの値段と同様、円の値段も供給増から安くなっていくことでしょう。しかしそのようなことよりも、今何を想起するかがマーケットを大きく左右します。明日は明日のイメージがあるでしょう。

こう云うとフラフラとしたものの様に聞こえるかも知れませんが、そのような"フラフラ"の中で流動性が生まれ、経済の血液になっていくのだと思います。資本市場が受け身ではなく、主体的に今の日本社会の再生に貢献出来ることは何であろうか。私の役目としてはそう云うことを考えていきたいと思います。