●金融政策も物価見通しも維持。先週来長期金利が上昇していたが今後の動きは不透明
●物価の下振れリスクは高まっている。トランプ米大統領の日中の通貨安誘導を批判する発言もあり、日銀の長期金利のメド引き上げ等の可能性は低下、緩和は長期化へ
●我々の個人投資家アンケートでも、現状の政策下では2%の目標達成を危ぶむ声が圧倒的。「投資や消費をするより貯金を増やすべき」という回答も増加。今後追加的な施策が、恐らく政府サイドから打たれない限り消費に弾みをつけるのは難しい
1月31日、日銀の金融政策決定会合で現状維持が発表された。同時に発表された展望レポートでも、基準改定もあったGDP見通しが若干上方修正されたものの、物価予想の中央値は据え置かれた。但し、委員の中の物価見通しの最高値は、2017年度、2018年度それぞれ前回から0.1ポイントずつ引き下げられ、1.7%、1.9%の上昇となった。委員の殆どが2018年度までの2%達成は難しいとみていることになる(図表1)。
更に、日本時間2月1日未明、トランプ米大統領が中国と日本の通貨安誘導を批判する発言を行ったこともあり、為替にも不透明感が増している。これらによって、金融緩和の一層の長期化の可能性が高まった。3月15-16日に次の決定会合が予定されているが、少なくとも展望レポートが出る4月27日まで政策の方向性の変更は考えにくいだろう。
先週来、長期金利が上昇しており、円金利をドル金利に転換するコストを示すベーシススワップレートも改善していたが、これらの点から反転の可能性が高まっていると思われる(図表2、3)
物価上昇に対する施策としては力不足の状態が続く。我々の日銀政策決定会合に関する事前アンケートによれば、個人投資家は、現在の日銀の政策は総じてデフレ脱却に貢献しておらず、2018年度の2%達成は難しいと考えている(図表8、図表9)。相変わらず、家計の財布のひもは固く(図表4)、「投資や消費より、貯金を増やすべきだ」とする回答が増加した(図表5)。
このようなセンチメントに対して金融政策でできることは限られている。今回のアンケートでは、前回に続き、「マイナス金利の停止(金利引き上げ)」が、各種の緩和策よりもむしろ効果があるという意見が多かった(図表11)。
とはいえ、物価下振れリスクが大きく、為替が不安定な情勢で、緩和の方針性を大きく修正する可能性はゼロに近い。当面は、賃上げなど政府や企業側の施策がない限り、投資や消費に弾みをつけるのは難しいだろう。
図表4: 1年前と比較して、家計を引き締めているか?(回答者数610名)
(上記質問に「投資意欲が高まった」とお答えされた方におたずねします。) 図表7:具体的にはどのような資産に投資、または投資を検討したか (複数回答可) (回答者数156名)
図表8:日銀のマイナス金利導入は、インフレ期待の拡大に貢献していると思うか(回答者数610名)
図表9:日銀はインフレ率2%達成を「2018年度頃」としていますが、達成できると思うか(回答者数610名)