世の中の流動性が低下しています。ここで云う流動性とは、お金の動き、或いはお金を伴うあらゆる取引の頻度と額のことを主に指しています。流動性は至るところで落ちてきているように見えますが、株式市場の流動性の低下はとても由々しき問題です。

サブプライム問題から発展した世界金融危機は、お金を何倍にも回転させたレバレッジ投資がひとつの原因だったので、今は世界中でレバレッジを下げる方向に規制等の圧力が掛かっています。これは或る意味で致し方ないことです。しかし市場、マーケットは、モノとモノ、モノとカネを交換するためにある場所・仕掛けですから、流動性が下がると云うことは、本来の存在意義が否定されることになります。レバレッジ投資を抑制するために流動性を下げると云うことと、マーケットの流動性を下げると云うことを混同してはいけません。
マーケットは、流動性が命です。いわゆる空売り規制は、短期的には株価を上昇させる効果があり得るでしょう。しかし長期的には流動性を低下させるデメリットの方が大きくなってくると思います。氏名公表なども含めた、空売りをしにくくする施策は、一旦は空売りを手仕舞おうとする買い戻しが入りますから、短期的には株価上昇効果があり得ます。長めの観点で考えると、空売りしたものはいつか必ず買い戻さなければいけないので、マーケットに対する需給バランスはニュートラルです。しかしひとつの売買手法がある程度制限される訳ですから、売買はしにくくなり、流動性は低下します。

流動性が低下することは、マーケット本来の機能低下を意味しますから、そこで扱われる株式の価値も低下しやすくなる可能性があります。流動性のない未上場企業の株と、流動性のある上場企業の株では、当然その価格に大きな差があります。流動性を下げることは、斯くも危険な問題を孕んでいるのです。現時点に於いては、世界的な流れの中で、緊急措置として決定されたことであり、それは十分理解できます。しかし今後は、「どうしたら流動性を低下させないか」と云う点につき、政治・行政に限らずマーケット参加者全員で真剣に考え、規制を改善していく決意と努力が肝要だと思います。