週末に、或る会議で、ドルの行方について議論しました。アメリカ政府に対するアドバイザーや、中国人民銀行の幹部、中東の政府系財閥のCEOなどとの議論だったのですが、重要で、且つ或る意味で対立する軸がそれぞれ参加し、それぞれの視点を明解に述べたので、とても有意義な議論でした。
アメリカの金融機関救済案が、アメリカの財政赤字を膨張し、インフレが起き、ドルは安くなると考える者。一方、今後の金融機関に対する規制強化が、レバレッジを大きく下げ、逆にデフレ圧力が起きるので、インフレ懸念は相殺されると考える者。これ以上のアメリカ政府の借金(債券)を外国政府として買うのは無理だとか、外貨準備はドルからユーロへの分散を進めなければいけないと考える者と、一方、世界の資本市場(債券と株)の半分以上はアメリカの資本市場であり、お金の置き場所としてアメリカを避けることは出来ず、ドル安は限定的だと考える者。様々な「読み」と、それぞれの立場が滲み出ていて、味のある議論が展開されました。
私は思うのですが、この最後のポイントは極めて重要です。バランスシート(財政)の内容などの根源的な価値よりも、実際に買われる物は下がらない、と云うトレーダー的な見方は、個人的に馴染みがあります。この意味で、アメリカが、巨大な国債市場と云う、お金の受け皿を造ってきたのは、とても賢明なことだったと思います。
ドルの行方は、まだ見えません。しかし世間でよく云われるような単純な構図であることは、先ずあり得ないと考えるべきでしょう。