未だ猛暑が続き、どこにも秋の気配を感じるのは難しいこの頃ですが、今日は立秋です。立秋と云えば、先ずは思い出されるのはこの歌です。

「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(藤原敏行 古今集秋歌上)

古の貴人たちは、春や夏の到来は匂いで感じ、秋の到来は音や風で感じました。それが今はどうでしょうか。排気ガスや様々な飲食店から排出される煙などによって、街には自然以外の匂いが溢れ、駅のアナウンスを始めとした鳴りっぱなしのお節介放送や、テレビ、クラクションなどによって自然の音は全く掻き消され、高層ビルの乱立によって、或る所は不自然なビル風に見舞われ、一方都心などは海風が入って来なくなるなど、自然の風を感じることも少なくなってしまいました。

鮨屋に於いて、「ネタ」で季節を感じるのもオツなものでしたが、これも最近は海流の変化などで獲れる魚の季節性が混乱してしまって、全くとは云わないまでも、季節を感じるのは困難になってしまいました。特に今年のネタの乱れ方は尋常ではありません。四季のある国に生まれた私達にとって、季節の移ろいを感じることは、常に身の回りにあり、かつ様々な情感を与えてくれる、誰にでも得ることの出来る素晴らしいものだった訳ですが、現代に於いてはわざわざ探しに旅行などに出掛けなければいけない、贅沢なものになってしまいました。

なんにもないところで、そっと目をつぶる。四季を感じることの有り難さ、大切さを、もっと思い出してみるのもいいことではないでしょうか。