夏の夜と云うと、つい数日前にも引用しましたが、私はいつも古今集の清原深養父の歌を思い出します。
-「夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらん」
古今集が編まれてから100年後頃に書かれた枕草子には、「夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。」とあります。
私は深養父のこの夏の歌がとても好きなのですが、朝まで遊んでいた歌と思われるので、やはり男性の歌なのでしょう。それに比べて清少納言の文章は、女性らしく、かなり抑えられたものです。夏の夜には男性の遊びの感があり、女性である清少納言はお淑やかにしたのでしょうか。
清少納言の清は清原姓の略であり、深養父の孫もしくは曾孫に当たります。祖父もしくは曾祖父の詠った偉大な歌を念頭に、その周辺情況を丁寧に書いたのかも知れません。
今宵は月齢28.5日なので闇夜です。東京の街中に、虫でない蛍を探してみましょうか。