先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数と創業板指数は反落、香港ハンセン指数は続伸となりました。軟調な株価推移の続く中国株ですが、引き続き米国との貿易摩擦問題が株価の頭を抑えています。また、アルゼンチンペソやトルコリラなど、新興国の通貨が急落していることも市場心理に影を落としています。米国は中国に再び圧力をかけ、今週にも、もはや中国が報復しようのない領域となる(対抗しようにも中国の対米総輸入額を超えてしまう)対中制裁第3弾2,000億ドルの追加関税発動を表明しようとしています。もっとも、対中制裁第3弾自体は以前から伝わっている話であり、本当にするのか?という市場の驚きが少しはあるものの、大きなサプライズではありません。
トランプ大統領としては11月6日の米国中間選挙前に一定の成果を挙げてから票固めを行い、中間選挙に突入するというのが一番好ましいシナリオでしょう。一方、中国としても、前述のように、これ以上の対抗ができない領域に入っていますし、株価の低迷や実体経済への影響も徐々に効いてきています。したがって、今後の予想としては、この対中制裁第3弾までは発動されるものの、その後、9月~10月のどこかで米中の合意がなされる折に、中国に「お土産」として発動を撤回するのではないかと予想します。メキシコと同じようなパターンといえるでしょうか。結局、以前の姿に戻るだけなのに、中国にとっては何か大きな対価を得るような形となってメンツが立つようになりますので、譲歩を引き出す為の交渉カードになるのではないかと思います。
一方、香港株の個別株の動きを見ていると、舜宇光学科技(02382)、吉利汽車(00175)、瑞声科技(02018)など、決算発表を機に大きく売られた成長株の株価がようやく底をつけて反転してきているようにも見えます。ちなみに、舜宇光学科技(02382)や瑞声科技(02018)の上半期の業績は予想を下回ったものの、強烈な株価下落ほどに悲観するほど悪い内容には思えません。また、2018年上半期は為替が人民元高になっていたことが業績の逆風となりましたが、現在は人民元安にふれているために下半期には追い風となります。したがって、現在の優良株は実態以上に売り込まれているため、株価の割安感が強くなっています。テンセント(00700)は中国政府がオンラインゲームについての総量規制を行うとのニュースから株価は下げており、もう少し調整が続きそうですが、業績を見ればクラウドや決済など、これまで投資を行ってきたゲーム以外の部門が堅調に育ってきており、中長期には再び株価は上昇基調に戻れるとみています。
そして、中国政府は7月23日にすでに金融緩和と財政投資拡大による景気を刺激していく方向へと政策の舵を切っています。したがって下半期の中国経済は成長加速する要因が整っていると言えます。つまり、実態以上に株価が売られている一方、中国政府が景気刺激の方向へと舵を切っているだけに、あとは米中貿易問題さえ解決すれば、株価は急反発する可能性が高いと思います。
コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)