先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は全て反落となりました。8月14日(火)までは中国政府の金融緩和とインフラ投資拡大への期待感から比較的底堅い推移となっていたのですが、8月15日(水)に大きく下落し、8月17日(金)には2年7ヶ月振りの安値を付けました。株価が大きく下落した理由はいくつかあります。まず、8月14日(火)に発表された7月の中国の経済指標が思わしくなかったことです。鉱工業生産は+6.0%増(市場予想+6.3%、6月実績+6.0%))、小売売上高+8.8%(市場予想+9.1%、6月実績+9.0%)、固定資産投資+5.5%(市場予想+6.0%、6月実績+6.0%)と全て事前予想を下回りました。中国当局は金融緩和と財政投資拡大に舵を切っていますが、その効果が出る前にもう一段の景気の落ち込みがありそうとの見方が台頭しました。

また、ハイテク株の企業決算が予想を下振れたことも要因です。まず、8月13日(月)の引け後に発表された舜宇光学科技(02382)の上半期決算は売上が+19.4%の119億7,635万元、純利益が+1.8%の11億7,979万元となりました。これは市場予想に対し、売上が9%ほど、純利益が22%ほど低い実績となりました。この翌日の同社株は24%も下落し、同業の瑞声科技(02018)も7%安と連れ安となりました。さらに8月15日(水)の引け後に発表されたテンセント(00700)の上半期決算も売上が+38.7%の1,472億300万元、純利益が+25.8%の411億5,700万元と増収増益だったものの、こちらも売上と営業利益が予想を下回り、発表翌日の同社株は3%安と沈みました。ちなみにここに書いた3銘柄だけでなく、先週に決算を発表した米国・香港市場に上場している中国株のIT・ハイテク銘柄は、決算内容というよりは決算発表それ自体を狙ったかのように売り込まれました。

IT・ハイテク銘柄がここまで売り込まれるところを見ると、投資家マインドが米中の貿易摩擦への懸念と中国経済のスローダウンで相当冷え込み、そこに付け込んだ売り投機が発生し、必要以上に売り込まれているのかもしれません。少し前なら、同じ内容・材料でもここまで売り込まれなかったと思いますし、ここまで売り込まれるほど悪い決算が出ているわけでもないと思います。しかし、前述のように中国当局は金融緩和と財政投資拡大に舵を切っており、時間はかかるとしてもその効果は年末頃には出てきそうです。また、米中の貿易摩擦についても、米国の中間選挙までにはある程度の妥結が図られるのではないかと予想します。このように考えていくと、必要以上に売り込まれている現在のタイミングは、引き続き優良銘柄を拾うチャンスと捉えても良いと思います。

コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)