未だニューヨークにいます。日本の様子はインターネットなどを通じて知りますが、食べ残しもしくは箸を付けなかった料理を、使い回して他のお客様に提供していたと云う某有名店の話を聞いて、甚だ呆れています。呆れると云うよりは、不快感・嫌悪感を感じると云った方が正しいでしょう。
しかし料理店で提供される料理と云うものは、皆、或る程度同様のリスクを孕んでいると云えるでしょう。奥の厨房で作っている訳ですから、残った料理の使い回しは流石になくとも、ちょっと虫が入ったがつまみ出してそのまま出すとか、落としたものを使うとか、紫蘇の葉の類だけ使い回してしまうとか、色々なことが起きている可能性があり、我々は店を信頼する以外に術はありません。だからこそ、今回のような事件は、信頼全体に影響を及ぼしかねないので、本当に困ったものです。
しかしここで思うのは、私のこよなく愛する「鮨」と云う食べ物の、極めて傑出した優れた点です。鮨は目の前で握ります。しかもネタもザクから目の前で切り出すので、一切の不正があり得ません。まぁ正確に云うと仕込みの段階で何かが起きている可能性はありますが、それらも時間を掛けて問題なく直してからネタ箱に入れると思われるので、やはり不正、少なくとも出来心によるよろしくない行為は、先ずあり得ません。鮨は謂わば、全て「ライブ」の料理です。こんな料理は他にないでしょう。
更に云うならば、これは以前にも書いたことがありますが、ライブであるが故、目の前のお客様の嗜好や、腕利きであれば見た目の体調などに併せて、微妙にネタやシャリの量や味付けを、握り分けることも可能です。なんと優れた料理であることか。
いいなぁお鮨って。などと書いていると、早く東京に帰って、美味しいお鮨を食べたくなってきました。今回の海外出張は未だちょうど折り返し地点です。 あまり妄想を膨らませないようにして、後半を乗り切りたいと思います。