先週の中国株ですが、創業板指数は続落となったものの上海総合指数と深セン総合指数、香港ハンセン指数は揃って反発となり、大きな意味を持つ週だったと思います。ここで2018年の上海総合指数の大きな流れを確認しますと、2018年2月の世界的な株価下落に次いで、4月には中国当局がいわゆるシャドーバンキング(陰の銀行)規制の強化策を発表し、上海総合指数は1月29日につけた3,587.032ポイント(年初来ザラ場高値)から7月6日には2,691.021ポイント(年初来ザラ場安値)まで下落しました。およそ5ヶ月で25%も株価が下落したわけです。

しかし、奇しくも年初来ザラ場安値をつけた7月6日に状況が変わったように見えます。この日は米国と中国が実際に追加関税を一部の製品に実行した日です。ところが、悪材料出尽くしのように上海総合指数は7月6日から3日続伸となりました。その後、トランプ大統領が対中関税の対象を5,000億ドル相当に引き上げする用意があると発言し、再び貿易摩擦懸念が台頭したのですが、7月6日の安値は割らずに切り返しています。そして7月20日からは3日間の大幅続伸となり2,900ポイントを回復しています。

この大幅上昇の背景には米国との貿易戦争による経済下押しを和らげるため、中国政府が景気刺激策に舵を取ったことがあります。景気テコ入れ策として、人民銀行が緩和的な金融政策に舵を取り、具体的にはこの日過去最大となる5,020億元の資金供給を行いました。その資金で格付けの低い社債を購入するよう市中銀行に促すことで、これまでの債務の健全化から締め付け方向にあった政策を方向転換しました。同時に政府は財政出動をさらに積極的にすることも示唆し、道路や鉄道などのインフラ整備に充てられるとの期待が急浮上し、インフラ関連株は大幅高となりました。香港株も政策転換が明らかとなった7月24日に大幅高となり、さらにその動きは他の市場にも影響しました。MSCIエマージング・マーケット・インデックスは7月24日以降に上昇基調となっていますし、たとえば東京市場でもファナック、コマツ、日立建機、ツガミなどが大幅高となっており、銅などの金属価格も大幅高となりました。

中国株においては、これまで米中貿易摩擦懸念が相場の足を引っ張ってきましたが、貿易摩擦が景気浮揚策を呼び起こし、相場上昇要因に変わってきていることは大変重要な変化と思います。さらに銘柄を見ても、2月から6月までは電力やガスといったディフェンシブ銘柄が上昇してくる一方、テンセント(00700)や平安保険(02318)などの時価総額の大きな優良株が大きく調整しました。つまり、2月から6月までは主力株がしっかりと下がる、下げ相場らしい下げトレンドであったわけですが、中国政府の政策転換を機に、主力銘柄が相場を引っ張る、上昇トレンドらしい相場を今後は期待できるのではないかと思います。

コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)