グリーンスパン、米連邦準備制度理事会(FRB)議長が昨日退任しました。そしてその最後の日に、予想された通りに利上げを行いました。短期金利(フェデラルファンドレート・FF金利)の誘導目標を4.25%から4.5%に引き上げたのです。

中央銀行総裁にとって、利上げによって任期を終えるのは、引け際の美学だと言われます。何故でしょうか?これは恐らく先進国の中央銀行の生い立ちというか、オリジナルな使命に依るのでしょう。インフレが基調であり、インフレを放置することの諸問題と闘う「インフレ・ファイター」としての役割を期待された時代の記憶が強いので、そのような美学が形成されたのではないでしょうか。

しかし先進国の基礎的事情は大きく変わってきています。人口動態の変化などから、デフレが基調になりつつあり、その苦しみとの闘いも大きなテーマになっています(少なくともつい最近までは)。グリーンスパン議長は、4.5%というほぼど真ん中の金利水準までにFF金利を戻して、あとは次期議長に舵取りを託したのでしょう。そういう意味での美学があったのかも知れません。しかし「美学」というセンチメンタルなこだわりは必ずしも純粋には生産的ではないので、今後はこのような美学の修正も行われていくのではないでしょうか。