昨日、トム・スコットの演奏を聴きました。私はフュージョンがクロスオーバーと呼ばれて生まれ始めた瞬間からフュージョンやジャズを聴いて来ましたが、当時トム・スコットは私にとってはメジャーな存在ではありませんでした。スタッフ、リー・リトナー、ボブ・ジェームス、クルセイダーズといる中で、トム・スコットは商業的なイメージがあって、ちょっと軽く見ていました。レコードも買わずに図書館でトム・キャットというアルバムを借りてきてテープにダビングした程度でしたが、トム・スコットとロベン・フォードのやり取りは、中々オシャレではありました。昨日は朝起きて、予習(復習でしょうか?)のつもりで久し振りにトム・キャットを流して出勤の準備をしました。さて、いざ演奏を聴いてみると・・・、これがトンデモナク素晴らしいものでした。音・サイコー、メロディ・サイコー、乗り・サイコー、グループのバランス・サイコー、選曲・サイコー、ここ1年ぐらいに聴いた生演奏の中では、明らかに最高のセッションでした。音楽に酔いながら、「何故いいのか」を考えていました。

理由は2つです。ひとつは、彼がずっと現役であり、今回もバリバリの現役としてステージに立ったということです。日本に来るジャズ・ミュージシャンの中には、既にバリバリの現役でないのに、楽して小遣い稼ぎに来る人もいます。昨日の演奏スタイルを見る限りでは、彼は昨日だけでなく、ずっと第一線でパフォームし、聴衆の落胆や興奮を見ながら鍛練を重ねてきたのでしょう。もうひとつは、彼がプレイヤーであると同時に、とても優秀なプロデューサーであるということです。セッションは一人では出来ません。若くて新しい感覚を持ったベースやドラムを入れつつ、懐かしいギター、マイク・ミラーを入れ、かつ優秀なコンダクターたるピアノを入れる。この人選とバランスが最高でした。彼もそろそろ還暦ですから、地力は落ちている筈です。それをバイ・プレイヤーの力によって一切見せないのでしょう。

−自らが現役であり続けることと、新しくいい人を選択し入れ替えること。これはビジネスや投資にも通じるものがあると思います。特に後段は、オルタナティブ投資/ファンド・オブ・ファンズの考え方と全く同様です。久し振りに右脳を掻き回される快感と共に、一人納得した夜でした。