フランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンが亡くなったそうです。享年95歳。ブレッソンといえば、”The Decisive Moment”(邦題:決定的瞬間)という写真集の名前から、「決定的瞬間」をカメラで切り取る写真家として名を馳せました。確かに有名なパリ解放の写真や、水溜まりの上を飛び越えている紳士の写真など、或る意味で決定的な瞬間を高速シャッターで切り取ることが上手だったのでしょう。個人的にはブレッソンは営業というかマーケティングが上手で、こんなことを言ったら世界中の多くのファンや評論家からお叱りを受けそうですが、実力以上に評価されてきた気がします。−まぁ好みの問題でしょうか。私はロベール・ドアノーの写真の方が好きで、単純なようで構図にアイデアがあり、人臭い力もあります。いずれにしても写真はモノクロが一番だと思っており、黒と白だけのグラデーションの中に、見る者の想像力を掻き立てる要素と、見る者の想像力を制限しない自由度が同時に存在し、毎回観賞時にダイナミックに芸術が生まれるのではないでしょうか。いずれにしろブレッソンの死によって、一時代を作った巨匠達は全て鬼籍に入ったと思われますが、だからこそ「省略の美学」を再評価してもいいのではないかと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。