フランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンが亡くなったそうです。享年95歳。ブレッソンといえば、”The Decisive Moment”(邦題:決定的瞬間)という写真集の名前から、「決定的瞬間」をカメラで切り取る写真家として名を馳せました。確かに有名なパリ解放の写真や、水溜まりの上を飛び越えている紳士の写真など、或る意味で決定的な瞬間を高速シャッターで切り取ることが上手だったのでしょう。個人的にはブレッソンは営業というかマーケティングが上手で、こんなことを言ったら世界中の多くのファンや評論家からお叱りを受けそうですが、実力以上に評価されてきた気がします。−まぁ好みの問題でしょうか。私はロベール・ドアノーの写真の方が好きで、単純なようで構図にアイデアがあり、人臭い力もあります。いずれにしても写真はモノクロが一番だと思っており、黒と白だけのグラデーションの中に、見る者の想像力を掻き立てる要素と、見る者の想像力を制限しない自由度が同時に存在し、毎回観賞時にダイナミックに芸術が生まれるのではないでしょうか。いずれにしろブレッソンの死によって、一時代を作った巨匠達は全て鬼籍に入ったと思われますが、だからこそ「省略の美学」を再評価してもいいのではないかと思います。