今日は日本の株価シリーズの最終章です。
まず最初に、現在のところ正確な詳細は不明ですが、イラクで拉致されたという日本人3名の無事を祈ります。一昨々日に「本格的な戦争のリスクは下落している」と書きました。言い訳をするつもりはありませんが、テロと戦争は別物です。テロは局地的・散発的なものであり、戦争はより大規模で、継続性のあるものです。当然、経済に与える影響も、比較できないほどの差があります。自衛隊を撤退すべきか否かについてのコメントは、敢えて控えさせて頂きますが、いずれにしろ決してテロを戦争に結びつけてはいけないと思います。しかし今回の件は、テロリストは戦争を仕掛けているのでもなく、米軍の撤退を求めているのでもなく、自衛隊の撤退だけを求めているので、その背景は中々複雑な気がします。
さて、本題の日本の株価に戻りますが、最後に人口構成の与える影響について考えたいと思います。いわゆる団塊の世代が、これから数年の間に大量に退職していきます。そのような中でも、企業の売上げは同水準を維持するでしょう。むしろ場合によっては、退職した団塊世代が消費を増やすかも知れません。一方で企業のコストは、高給世代の大量同時引退により低減し、企業の利益水準は独りでに上昇する可能性があります。これも日本の株式市場にとってはいいことです。しかし4日間書いてきたそれぞれの理由は、いつまでも続くものではありません。どんなことにも循環がありますし、特に人口構造問題は、当面はいいニュースですが、いずれ日本経済、ひいては株式市場の大きな足枷となっていくでしょう。但しこの一年間の株式市場の上昇が、偶発的なものではなく、4日間書いたような構造的な理由による側面が大きいことは、やはり重要な点だと考えています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。