今日、午後のミーティングが1つなくなったので、これ幸いと15分ほど向かいの本屋に行ってみました。ふと思い立って白秋の「思ひ出」を読みたくなったのですが、文庫本しか見つけられませんでした。中学生の頃だったと思いますが、近代文学館の復刻版を父に貰い、とても気に入ったことを覚えています。「時は逝く。赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく。」などの綺麗で、かつヴィジュアルなフレーズがちりばめられた、素敵な詩集です。文庫本をパラパラとめくってみたのですが、確かに昔読んだのと同じ詩が収められています。しかし初めて読んだ時の感動には、到底近付くことができません。1つは感受性が落ちたせいでしょう。しかし本の活字(復刻版ですから正しくは活字を模した写植ですが)、紙質、紙の厚さ、本の大きさ、表紙のデザイン(「思ひ出」は掌に載る、とてもコンパクトな宝石箱のような装丁だったと記憶しています)、そういったもの全てによってトータルにプロデュースされた世界がそこにはない、というのも大きな理由ではないでしょうか?オペラにも歌舞伎にも、舞台衣装や舞台装置があり、それはトータルな芸術の重要な一部です。たとい「詩」という文字情報であっても、周辺装置、即ち装丁は、トータルな作品にとって重要な仕掛けなのではないでしょうか。特に詩のような雰囲気が重要な要素を占めるものにとっては必須な気もします。もっといい活字(もしくは写植)、装丁の本が出てこないでしょうかね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。