10月の振り返り=長期金利低下で米ドル安・円高に
株安拡大で世界的な長期金利上昇から低下へ
10月の米ドル/円は、約1ヶ月続いた157~159円中心のレンジを下旬にかけて一時下抜ける場面がありました。ただ156円割れには至らず、156~158.9円と最大値幅は3円にも満たない小動きとなりました(図表1参照)。
それでも、一時156円割れ近くまで米ドル安・円高となったのは、それまで続いてきた世界的長期金利上昇が一段落し、長期金利が低下に転じた影響が大きかったのではないでしょうか(図表2参照)。長期金利が低下に転じたのは、AI投資への懐疑的な見方が浮上したことなどをきっかけに、日米などの株価が大きく下落し、安全資産と位置付けられる債券へ資金がシフトした影響が大きかったでしょう。
一時163円まで米ドル高・円安となった動きは、日本の長期金利上昇と連動したように見えました(図表3参照)。その意味では、長期金利が低下に転じたことは、米ドル安・円高を後押しした可能性があります。
「長期金利上昇=円安」は再燃しないか?=鍵握る株安の行方
一時、日本の長期金利である10年債利回りが3%を大きく上回るまで上昇したのは、世界的な長期金利上昇に連動した以上に、リフレ政策と見られている高市政権の「責任ある積極財政」に対し、財政規律が懸念された影響との見方が有力でした。
これに対して、9月にかけて、ベッセント米財務長官などから「日本はリフレ政策をやめるべき」といった意見があり、それを受けるように高市政権の関係者もリフレ政策を否定するようになりました。ただ、これについては、なお財源が曖昧なままの消費税減税を進める方針など、具体的な政策姿勢は変わっていないとの評価が一般的でしょう。
その意味では、まだ「長期金利上昇=円安」が再燃するリスクが払しょくされたわけではなさそうです。世界的長期金利上昇が再燃せず、むしろ長期金利が下がるかどうかは、米国などの株安がさらに広がるかが鍵ということではないでしょうか。
円安が一段落したもう1つの理由=ヘッジファンドの円買いへの転換
7月にかけての163円までの米ドル高・円安を正当化したもう1つの要因として、投機筋の米ドル買い・円売り拡大がありました。しかしこの動きは、9月以降大きく変わった可能性があります。
ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、9月に入るとそれまでの売り越し(米ドル買い越し)から買い越し(米ドル売り越し)に転換し、10月も継続しました(図表4参照)。なぜ、投機筋の代表格でもあるヘッジファンドは、9月以降それまでの円売りから円買いに転換したのでしょうか。
なぜヘッジファンドは円買いに転換したのか?
2026年に入ってから、米ドル/円は、基本的に120日MA(移動平均線)より米ドル高・円安の水準で推移してきました。ところが、7月末の日米協調円買い介入をきっかけに120日MAを大きく割り込み米ドル安・円高となると、その後は120日MAより米ドル高・円安に戻れない状況が続きました(図表5参照)。
この120日MAは、ヘッジファンドの円売りと円買いの分岐点の目安という見方があります。それを前提に考えると、ヘッジファンドがそれまでの円売りから円買いに転換したのは、120日MAより米ドル安・円高となり、9月以降も120日MAより米ドル高・円安に戻れなかったことが一因ではないでしょうか。
また9月にかけて、ベッセント財務長官が日本に対して、利上げへの期待や「リフレ政策はやめるべき」、「円高になる政策を期待」などの発言を続けました。ヘッジファンド業界出身のベッセント財務長官は以前からヘッジファンドと緊密な関係があると見られていたことも考えると、ヘッジファンドの円買い戦略への転換は、日米通貨当局の円安是正策と連携している可能性にも注目できるでしょう。
11月の注目点=「長期金利低下=円高」は株安の行方が鍵か
ヘッジファンドと日米当局が連携?=159円以上なら介入か
ベッセント財務長官を中心に、日米当局の円安是正とヘッジファンドの円買い戦略が連携しているのであれば、日米当局はヘッジファンドの円買いを支え、円売りへの再転換を回避するべく動く可能性があるのではないでしょうか。それは、すでに見てきたヘッジファンドの円買いと円売りの分岐点の目安、つまり120日MAより米ドル高・円安が広がることを阻止するということです。
米ドル/円の120日MAが、足下159円台で推移していることを考えると、それを超えて米ドル高・円安が広がる動きに対しては日米当局が円買いの為替介入に踏み切る可能性があるのではないでしょうか。
11月の米ドル/円は152~160円で予想
以上を踏まえると、11月の米ドル/円の上値には自ずと限界がありそうです。株安拡大などにより日米の長期金利がさらに低下し米ドル安・円高への動きが広がるかどうか、注目したいと思います。11月の米ドル/円は152~160円で予想します。
11月第1週の米ドル/円は155~159円で予想
11月3日に米中間選挙が予定されていますが、事前予想ではトランプ大統領の与党共和党の劣勢、上下両院で野党・民主党がともに過半数を獲得するとの見方も出ています。為替相場への影響については、それによって最近の株安がさらに拡大するかに注目したいと思います。
また今週(11月2日週)は11月第1週ということで、10月雇用統計など注目度の高い米経済指標も多く発表される予定ですが、総じて米景気の強さを確認するという予想が基本のようです。米ドル/円は、中間選挙の結果などを受けて、「株安=長期金利低下」がどれだけ広がるかに注目し、上値が限られる一方で下値を試すといったイメージで、155~159円で予想します。
