日経平均は7月末を底に、しっかりと戻り基調をたどってきました。前回のコラム「【日本株】「風が吹けば桶屋が儲かる」金利上昇の連鎖反応。私たちの生活と株価はどう変わる?」で「底打ちと思いたいが、直感的には一筋縄にはいかないのでは」と記しましたが、これまでのところは杞憂だったという結果になっています。
とはいえ、筆者はまだ慎重です。以前に懸念していた「弱気相場への転換」シナリオはかなり遠のいた印象ですが、上昇相場への回帰には、もう少し日柄調整が必要なのではないかというスタンスです。引き続き、長期成長シナリオと短期調整と、しっかりと時間軸を分けた投資戦略で相場に臨みたいと考えています。
レアアースとは?「産業のビタミン」と呼ばれる理由
今回は「レアアース」をテーマに取り上げてみましょう。このテーマは2024年に一度取り上げているのですが、当時と現在では状況に変化が生じています。そこで最新の情報を織り込んでのアップデートを試みたいという意図です。
【日本株】レアアース関連銘柄/日本国内で自給可能な重要資源発見により有望株となった投資対象とは(2024年7月17日付)
当時と現在で大きく変わったのは、中国が事実上の輸出制限を発動し、その一方で南鳥島近海のレアアース泥の採取に成功し、国産レアアースの実現に現実味が増してきた、という2点です。
まずはこれら変化の影響を考える前に、レアアースについて簡単におさらいをしておきましょう。そもそもレアアースは希土類元素とも言われる金属の一種で、主に強力磁石や研磨剤、磁性材などのハイテク製品に材料として用いられます。レアアースの市場は世界でおよそ7000億円程度と規模はそれほど多くありませんが、その性能の獲得や機能の飛躍的な向上には不可欠な元素でもあるため、レアアースは(少量でも不可欠という意味で)「産業のビタミン」とも呼ばれています。
ただし、そのレアアースを供給できるのは世界中でも特定の地域に限られています。中でも中国は圧倒的な存在感にあり、埋蔵量で世界のおよそ半分、製錬量では約9割のシェアを有しているとされています。このことは、幾つかのハイテク製品は中国からのレアアース供給がなければ製造できないということであり、それが部品・部材であれば、最終製品もまた製造できなくなってしまうという構造を意味しています。ビタミンの欠乏があれば、どれだけ頑健な身体を有していても、体調を崩してしまうというのと同じです。まさに「レアアースを制するものはハイテク製品を制する」ということであり、ハイテク製品の生殺与奪の権は中国が握っているといっても過言ではない構造にあるのです。
ハイテク製品の要、「レアアース」市場における中国の圧倒的シェアとリスク
そうした状況下で、2026年に入って中国政府はレアアースの事実上の対日輸出制限に踏み切りました。実は2010年にも同様のアクションがあったのですが、今回は日本企業において、当時ほどの「ショック」には至っていません。これは2010年の教訓から、日本企業がレアアースの備蓄、代替素材の開発、輸入先の分散化などを推進し、ストレス耐性を磨いてきた成果と言えます。
とはいえ、そのような激変緩和措置も永久には機能しません。中国の輸出制限が長期化すれば、レアアース調達制限がやはり日本企業にとってチョークポイント(要諦)となる可能性は払拭できないのです。日本企業は中国以外からの調達増加努力を続けて時間を稼ぎつつ、根気よく中国に対しては輸出制限の撤廃・緩和を強く求めているというのが現実と言えるでしょう。
南鳥島近海レアアースが秘める、希少な「中重レアアース」
一方で、内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2026年7月に南鳥島近海で採取した泥からレアアースの存在が確認されたと発表しました。採取したレアアース泥には(原子番号の小さい)軽レアアースと(番号の大きい)中重レアアースがおよそ半々の構成比で存在していたとの分析報告もなされています。これは非常に興味深い結果と言えるでしょう。
なぜなら、世界市場における軽レアアース、中重レアアースの構成比はおよそ8割強、2割弱という割合だからです。つまり、南鳥島近海のレアアース泥は、より稀少な中重レアアースが比較的ふんだんに含まれていることが示唆されるのです。これまでレアアースを一括りにして解説してきましたが、軽レアアースにおける中国の採掘世界シェアが7割弱にとどまるのに対し(製錬シェアは国外鉱石の輸入により中国が9割を占めます)、中重レアアースの中国の採掘シェアはほぼ100%を占めています。これは中重レアアースの脱中国化はかなり難しい状況にあるということ。しかし、この分析結果を見る限り、その中重レアアースに自給化の可能性が出てきたということになるのです。
もちろん、6000メートルを超える深海からの安定的採取、製錬技術の取得、それらコストの経済合理性確保といった難題はまだまだ待ち受けています。しかし、それらをクリアできた暁には日本の産業競争力に大きな変化の生まれる可能性があります。かつてイギリスは1960年代に北海油田に多額の開発費を投じ、1980年代には石油輸出国へと様変わりしました。産業面でも安全保障面でも、この油田は英国を大きく変えていったのです。南鳥島近海のレアアースも、日本にとっての北海油田になるのではないかと期待したいところです。
海洋資源開発のど真ん中銘柄と、期待が高まるコンソーシアム参画企業
では、関連銘柄としてはどのような企業が挙げられるでしょうか。
まずは南鳥島における海洋資源開発の実績から東亜建設工業(1885)、東洋エンジニアリング(6330)、古河機械金属(5715)、岡本硝子(7746)といった名前が挙げられます。これらはまさにど真ん中銘柄ということができるでしょう。
また、レアアース調達元の分散に関しては、双日(2768)、豊田通商(8015)などの商社が実績を有しています。
この他にも「レアアース泥開発推進コンソーシアム」に参画している企業群は、産業素材開発だけでなく、今後何らかの形で南鳥島開発に寄与する可能性は十分あると考えます。こうしたプロジェクトが実際の業績に反映されるまでには相応の時間を要するのでしょうが、現実度が高まってくれば、株式市場はその前から期待が高まっていくのではないかと予想します。
