決算発表前に注目、「アナリスト・リビジョン」で読み解く投資戦略
9月も終わりに近づくと、3月期決算企業の第2四半期(上期)決算が気になる時期です。実際の決算発表が本格化するのは10月中旬以降ですが、投資家にとって気になるのは、上期の業績内容だけではありません。今期の業績が最終的にどうなりそうか、そして会社が通期の利益計画を上方修正するのかも大きな注目点です。
こうした業績予想の修正は、投資の世界では「リビジョン(revision)」と呼ばれます。英語で「修正」「改訂」を意味する言葉です。
そして、会社自身による業績予想の修正とあわせて注目したいのが、企業の業績を分析するアナリストによる業績予想のリビジョンです。決算発表を待つ前から、アナリストの利益予想が上向いているのか、それとも下向いているのかを見ることで、企業業績に対する見方の変化を捉えることができます。
今回は、このアナリストの業績予想のリビジョンに着目し、今期だけでなく来期の予想も組み合わせた投資戦略を紹介します。
上方修正は「大きさ」と「新しさ」で見る
リビジョンは、感覚的には捉えやすいものです。例えば、アナリストが利益予想を引き上げれば「上方リビジョン」、反対に引き下げれば「下方リビジョン」となります。
ただし、リビジョンを実際の銘柄選びに活かすには、単に「上方か、下方か」だけでは十分ではありません。どの程度、予想が修正されたのかを数字で捉える必要があります。例えば、同じ上方リビジョンでも、利益予想が1%引き上げられた企業と10%引き上げられた企業では、その意味合いは異なるでしょう。他の銘柄と比較するためにも、リビジョンの大きさを見ることが重要になります。
もう1つ考えたいのが、「いつ修正されたのか」です。同じ大きさの上方リビジョンであっても、数カ月前に行われたものより、直近で行われたもののほうが、足元の企業業績に対するアナリストの見方をより強く反映していると考えられます。
そこで今回は、こうしたリビジョンの「大きさ」と「新しさ」の両方を考慮した「リビジョンファクター」を作りました。直近の予想修正ほど大きなウェイトを与えることで、足元でアナリストの業績見通しがどの程度改善しているのかを捉えようというものです。
実際のリビジョンファクターの作り方を見ていきましょう。
今回は、アナリストによる営業利益予想の変化に注目します。データには、QUICK Workstation Astra Managerが提供するQUICKコンセンサスの営業利益予想を用います。
ステップ1:業績予想の改善度合いを測る「リビジョンの大きさ」
まず、「リビジョンの大きさ」を計算します。具体的には、今月の営業利益予想が1ヶ月前と比べてどの程度変化したかを、次の式で求めます。分母を1ヶ月前の営業利益予想の絶対値としているのがポイントです。これにより、赤字予想の企業でも、利益予想の改善をプラスのリビジョン、悪化をマイナスのリビジョンとして捉えられます。
リビジョン =(今月の営業利益予想 - 1ヶ月前の営業利益予想)÷|1ヶ月前の営業利益予想|
このようにして、リビジョンの「大きさ」を数字で捉えることができます。
ステップ2:直近の動きをより重視する「リビジョンの新しさ」
次に考えるのが、リビジョンの「新しさ」です。アナリストによる業績予想の修正は、1ヶ月だけを見るのではなく、少し長い期間でその動きを追うことも重要です。ただし、数ヶ月前の修正と直近の修正を同じように扱うのではなく、より新しいリビジョンを重視することにします。
そこで今回は、当月、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前の4つのリビジョンを使い、新しいものほど大きなウェイトを与える「線形時間減衰」の考え方を取り入れました。
具体的には、当月のリビジョンに「4」、1ヶ月前に「3」、2ヶ月前に「2」、3ヶ月前に「1」のウェイトを与えます。そして、それぞれを加重した値をウェイトの合計である「10」で割って、「リビジョンファクター」とします。
つまり、計算式は次のようになります。
リビジョンファクター
=(当月のリビジョン×4 + 1ヶ月前のリビジョン×3 + 2ヶ月前のリビジョン×2 + 3ヶ月前のリビジョン×1)÷10
この方法なら、過去数ヶ月にわたるアナリスト予想の変化を取り込みながら、足元で起きている予想修正をより強く反映できます。リビジョンファクターが高いほど、最近になってアナリストの業績見通しが上向いている銘柄と捉えることができます。
年度後半は「今期」より「来期」に注目
それでは、実際にリビジョンファクターを使った投資戦略を紹介します。
リビジョンファクターは、今期の営業利益予想と来期の営業利益予想について、それぞれ計算することができます。ここでは前者を「今期リビジョンファクター」、後者を「来期リビジョンファクター」と呼ぶことにします。
年度の前半であれば、投資家の関心はまず今期の業績が会社計画を達成できるかに向かいやすいでしょう。しかし、年度も後半に差しかかると、株式市場の視線は徐々にその先へ移っていきます。今期の着地だけでなく、来期にどの程度の利益が期待できるのかが、株価を考えるうえで重要になってきます。
特に今回のように、第2四半期決算の発表が近づく時期には、この視点が大切です。今期の業績予想が上向いていることに加えて、来期についてもアナリストの見方が改善していれば、業績改善が今期だけで終わらず、その先まで続くとの期待につながります。
狙うのは「来期の勢いが今期を上回る」銘柄
そこで今回の投資戦略では、今期と来期のリビジョンを組み合わせます。
具体的には、TOPIX構成銘柄のうち金融業を除く3月期決算企業を対象に、まず今期リビジョンファクターが上位20%に入る銘柄を選びます。さらに、来期リビジョンファクターについても上位20%に入ることを条件とします。
ただし、今回はそれだけではありません。今期と来期のリビジョンファクターを比べて、「来期リビジョンファクター>今期リビジョンファクター」となることも条件に加えます。
つまり、狙うのは、単に今期の業績予想が上向いている企業ではありません。今期も来期もアナリストの業績予想が上向いており、しかも来期の上向きの勢いが今期を上回っている企業です。年度後半に市場の視線が来期へと移っていくことを考えれば、こうした銘柄は、今期の業績改善に加えて、「その先の業績」に対する期待も高まりつつある銘柄と捉えることができます。
「今期・来期リビジョン戦略」のパフォーマンスを検証
今回、この条件を満たす銘柄を「今期・来期リビジョン戦略」の対象銘柄として、そのパフォーマンスを検証してみます。
検証では、TOPIX構成銘柄のうち金融業を除く3月期決算企業を対象としました。各月末時点でリビジョンファクターを計算し、その情報を使って銘柄を選び、翌月の株価パフォーマンスを調べます。これなら、その時点で実際に得られた情報だけを使った検証になります。
まず確認したいのは、リビジョンファクターそのものに銘柄選択の効果が見られるかです。そこで、今期リビジョンファクターと来期リビジョンファクターについて、それぞれ対象銘柄を数値の高い順に5つのグループに分けました。最も高いグループが「上位20%」、つまり第5分位です。
さらに、今回提案する戦略については、今期と来期がともに第5分位に入り、かつ「来期リビジョンファクター>今期リビジョンファクター」となる銘柄のパフォーマンスを調べました。
ここで特に注目したいのが、第2四半期決算が意識され始める9月から、その後の2月までの動きです。年度後半になるにつれて、株式市場の関心は今期の着地から来期の業績へと少しずつ移っていきます。
加えて今回は、月別の季節性という観点にも注目します。リビジョンが良好な銘柄の株価がいつも同じように評価されるとは限りません。第2四半期決算、年末、そして第3四半期決算と進むなかで、市場が重視する業績の年度も変わっていきます。そこで、リビジョンを使った銘柄選びの効果が、年度後半のどの時期に強く表れやすいのかも確認します。
具体的には、9月、10月、11月、12月、1月、2月について、各戦略のリターンが検証対象銘柄全体の平均をどの程度上回ったのかを月別に調べました。これによって、今期リビジョンと来期リビジョンのどちらが、どの時期に株価と結びつきやすいのかを見ていきます。
決算期末に向けて高まる「来期リビジョン」の有効性
図表3は、その月別の超過リターンを過去5年(2021年9月~2026年2月)について平均したものです。今期リビジョンだけを見る場合、来期リビジョンだけを見る場合、そして今期と来期の両方を組み合わせた場合で、どのような違いが見られるのかを比較してみましょう。
注2: 「今期リビジョン」は今期リビジョンファクターが上位20%、「来期リビジョン」は来期リビジョンファクターが上位20%の銘柄。「今期も来期もリビジョンが良く、来期が上回る」は、両ファクターがともに上位20%で、かつ来期リビジョンファクターが今期リビジョンファクターを上回る銘柄
注3: リビジョンファクターは、アナリストによる営業利益予想の前月からの変化率をもとに、当月、1カ月前、2カ月前、3カ月前のリビジョンを4:3:2:1の線形時間減衰ウェイトで加重して算出。対応するアナリスト予想社数が3社以上の場合を対象とした
注4: グラフは各戦略の月次リターンから、同月の検証対象銘柄全体の単純平均リターンを差し引いた超過リターンの過去5年平均(2021年9月~2026年2月)。過去5年は、9月から翌年2月までを1期間として、直近の完結した5期間を対象としている
出所: QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
今期リビジョンファクターが上位20%の銘柄を赤色、来期リビジョンファクターが上位20%の銘柄を青色で示しています。さらに今回提案する戦略として、今期と来期がともに上位20%に入り、かつ来期リビジョンファクターが今期を上回る銘柄を紫色で示しました。それぞれの棒が高いほど、その月に検証対象銘柄全体を上回るパフォーマンスをあげたことを表します。
まず注目したいのは、年度後半になるにつれて、今期よりも来期のリビジョンが重要になっていることです。10月は今期リビジョンの1.13%に対して来期は1.76%、12月も0.73%に対して0.91%、翌年1月はマイナス0.04%に対して0.58%、2月は2.37%に対して2.81%となっています。11月を除けば、青色の棒が赤色を上回っています。
これは、年度後半に入ると、投資家の視線が今期の業績だけでなく、次第に来期の業績へ移っていくことと整合的な結果といえるでしょう。特に翌年2月には、来期リビジョンが良好な銘柄の超過リターンが2.81%と大きくなっています。
来期の「勢い」が今期を上回る時、株価はどう動くか?
そして、今回提案する「今期も来期もリビジョンが良く、さらに来期が今期を上回る」戦略を示した紫色の棒を見ると、10月は1.99%、12月は0.92%、翌年2月は3.96%となっています。11月と翌年1月は必ずしも他の戦略を上回っていませんが、5ヶ月を通してみると、今回の戦略の超過リターンが最も高くなっています。
特に2月の3.96%という結果は目を引きます。決算期末が近づくにつれて市場の関心が来期業績へと移るなか、単に来期予想が上向いているだけでなく、今期も良好で、さらに来期のリビジョンの勢いが今期を上回る銘柄を選ぶことが、銘柄選択の一つの手掛かりになる可能性を示しています。
年度後半の銘柄選びでは、今期の業績予想だけを見るのではなく、「来期の予想がどちらに動いているか」まで一歩先を見ることが重要だという点は、今回の検証から読み取れるでしょう。
アドバンテスト(6857)やキオクシア(285A)、最新データで探す「今期も来期も上向く」銘柄12選
そこで、直近データを使って、今回提案する「今期・来期ダブル上方修正」戦略に該当する銘柄を抽出しました。
今回の狙いは、今期の業績予想が上向いているだけでなく、来期についてもアナリストの見方が良好で、さらに来期のリビジョンの勢いが今期を上回っている企業を探すことです。
具体的なスクリーニング条件は、次の通りです。
① 今期リビジョンファクターが対象銘柄の上位20%に入っている。
② 来期リビジョンファクターも対象銘柄の上位20%に入っている。
③ 来期リビジョンファクターが今期リビジョンファクターを上回っている。
④ 流動性の観点を考慮して、時価総額が1,000億円以上である。
⑤ 金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除くTOPIX構成銘柄のうち、3月期決算企業である。
結果を図表4に示しました。表は、来期リビジョンファクターの高い順に並べています。
上位銘柄を見ると、アドバンテスト(6857)は今期リビジョンファクターが6.70%、来期が9.24%、キオクシアホールディングス(285A)は今期が4.46%、来期が6.62%となっています。このほかにも電気機器に属する企業が複数入り、AI・半導体関連の代表格である銘柄が上位にみられることが特徴です。
注2: 「リビジョンファクター」は、アナリストによる営業利益予想の変化を捉えた指標。当月、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前のリビジョンを、それぞれ4:3:2:1の線形時間減衰ウェイトで加重して算出した。リビジョンは、前月からの予想営業利益の変化率を用いている
注3: 今期リビジョンファクター、来期リビジョンファクターがともに対象銘柄の上位20%に入り、かつ「来期リビジョンファクター>今期リビジョンファクター」となる銘柄を抽出した。リビジョンの算出にあたっては、対応するアナリスト予想社数が3社以上の場合を対象とした
注4: 表は来期リビジョンファクターの高い順に掲載している。株価、時価総額は2026年9月15日時点
出所: QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
AI・半導体関連株は足元で株価の変動が大きくなりやすい点には留意が必要です。しかし一方で今期だけでなく来期のリビジョンも良好で、しかも来期の勢いが今期を上回っている点は、年度末に向けて注目したい材料です。
年度後半になるにつれて市場の視線が来期業績へ移っていくなか、業績モメンタムの強さが改めて評価されるかが、これらの銘柄の株価を見るうえでのポイントとなりそうです。
リビジョンを最新データで確認する方法
ここからは補足的な話題です。今回の計算で使ったデータとは異なりますが、類似データとしてリビジョンはマネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」で確認することができます。
「アナリスト予想変化」「銘柄一覧」「1ヶ月の変化」を見ると、個別銘柄のアナリスト予想変化のランキングが確認できますので、ご利用ください。
