好調な第1四半期決算、上方修正企業の割合は例年超えに

3月期決算企業の第1四半期決算発表が一巡し、株式市場は個別材料に乏しく、方向感が出にくい局面を迎えています。一方で、企業業績に目を向けると、足元のトレンドは良好です。

例年、第1四半期決算の段階で、会社側が今期の営業利益計画を上方修正する企業の割合は、全体の概ね5~10%程度にとどまります。ところが今回は、金融業を除くTOPIX構成銘柄で見ると、第1四半期決算で営業利益計画を上方修正した企業の割合は17%に達しました。例年と比べても上方修正に踏み切る企業が多く、企業業績は良い方向に向かっているとみられます。

そこで今回は、利益の「現実」を測る「アーニングサプライズ指数」と、利益の「期待」を読む「リビジョンウォッチ」という2つの指標を使って、足元の業績トレンドを確認するとともに、今後の株式市場の方向性を探ります。

業績を読み解くカギ、利益の「現実」と「期待」を測る2つの指標

アーニングサプライズ指数とリビジョンウォッチは、本連載の2026年5月21日付の記事「決算後の「期待」と「現実」から探る株価の行方、一服感の先にある魅力的な業種とは? 」で取り上げています。詳しい算出方法などは同記事をご参照いただきたいのですが、2つの指標の違いを簡単に整理しておきましょう。

アーニングサプライズ指数は、決算で発表された実績利益が、事前のアナリストコンセンサス予想を上回ったか、下回ったかを集計したものです。いわば「利益の答え合わせ」をすることで、市場の期待に対して実際の業績がどの程度上回っているのか、という利益の「現実」を捉える指標です。

一方、リビジョンウォッチは、アナリストによる利益予想の上方修正や下方修正の動きを捉えることで、市場が今後の企業業績をどのように見ているのか、という利益の「期待」を捉える指標です。

つまり、「現実」を見るアーニングサプライズ指数と、「期待」を見るリビジョンウォッチを組み合わせることで、企業業績の実態と先行きの両面から株式市場を捉えることができます。

第1四半期決算で確認する利益の「現実」

まずは、利益の「現実」を測るアーニングサプライズ指数から見ていきましょう。

高水準を維持するアーニングサプライズ指数、良好な業績トレンドが継続

実際に、図表1が足元のアーニングサプライズ指数です。青線のアーニングサプライズ指数がゼロを上回っていることは、ポジティブサプライズとなった銘柄がネガティブサプライズとなった銘柄を上回っていることを示しています。つまり、市場の期待を上回る決算を発表する企業が多く、業績モメンタムの拡大に対する信頼性が高まっていることを意味します。

【図表1】アーニングサプライズ指数と日経平均株価の推移
注1:データ期間は2026年2月2日から、8月21日まで。データサイクルは日次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄
注3:アーニングサプライズの計算は今期予想の営業利益を対象に算出している
注4:過去4ヶ月間のアーニングサプライズを集計している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

足元の動きを見ると、8月に入ってからアーニングサプライズ指数はおおむね横ばいで推移しています。ただし、その水準は30%を上回る高い状態を維持しています。さらに、少し長い期間で見ると、3月下旬を底に、青い矢印が示すようにアーニングサプライズ指数は上昇トレンドをたどってきました。つまり、足元では上昇の勢いこそ一服しているものの、市場の期待を上回る決算を発表する企業が多いという良好な状況に変化はありません。

株価上昇を裏付ける利益の「現実」、指標から読み解く今後の確信度

こうしたアーニングサプライズ指数の改善と歩調を合わせるように、赤線で示した日経平均株価も3月下旬を底に上昇基調を強めてきました。足元のアーニングサプライズ指数が高水準を維持していることは、株価上昇を企業業績の「現実」が支えていることを示す材料といえるでしょう。

アーニングサプライズは、一見すると過去の決算結果を振り返る指標に見えるかもしれません。しかし、その本質は単なる結果の確認ではありません。市場の期待に対して、実際の経営環境がそれを上回っているのか、それとも下回っているのかを測ることで、今後の業績拡大に対する確信度を捉えることができます。

利益の「期待」も改善、リビジョンウォッチは右上へ

そして、今回取り上げるもう1つの指標が「リビジョンウォッチ」です。

株価上昇のシグナルを捉える、リビジョンウォッチの見方と仕組み

市場(アナリストコンセンサス)予想が従来の見通しより上方に修正されることを上方リビジョン、逆に下方に修正されることを下方リビジョンと言います。筆者は、このリビジョンを集計して株価動向の判断に生かす「リビジョンウォッチ」という手法を考案し、継続的に観察しています。

図表2で足元のリビジョンウォッチを見てみましょう。リビジョンウォッチは、市場全体で集計したリビジョンの水準(横軸)と、その変化(縦軸)を2つの軸でプロットしたものです。

【図表2】リビジョンウォッチ
注1:2026年3月2日から始まる週から8月17日からスタートする週(8月21日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerで提供されるリビジョンインデックスをもとに計算している。実際の出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

このプロットは、多くの局面で時計回りに循環する特徴があり、これが「リビジョンウォッチ」という名称の由来です。特に、赤い矢印が示すように、変化がマイナスからプラスへ転じ、その後に水準もマイナスからプラスへ向かう局面は、株価上昇の起点となりやすい重要なシグナルと考えられます。

横軸で示す「水準」が低くても、縦軸の「変化」がプラスであれば、今後の改善につながる可能性が高まります。逆に、足元の「水準」が高くても、「変化」がマイナスに転じていれば、先行きの勢いが弱まる可能性があることを示しています。

3月以降の停滞から一転、足元では「期待」が急速に改善

3月以降のリビジョンウォッチは、いったん左下方向へ進みました。米国によるイランへの軍事攻撃を受けて先行きの不透明感が強まり、アナリストの企業業績に対する見方が慎重になったことが背景の1つと考えられます。また、3月期決算企業の本決算発表では、企業側が示した2027年3月期の業績予想も慎重な内容が目立ったことから、アナリストによる利益予想も上方修正しにくい状況が続きました。

しかし、その流れは足元で大きく変わっています。今回の第1四半期決算では好調な業績を発表する企業が多く、通期の2027年3月期業績予想を上方修正する企業も相次ぎました。こうした実績の好調さを受けて、アナリストによる利益予想の引き上げも広がり、リビジョンウォッチは青い矢印が示すように、再び右上方向へ大きく進んでいます。

特に注目したいのは、横軸の「水準」だけでなく、縦軸の「変化」も大きくプラスになっていることです。つまり、利益予想の上方修正が優勢であるだけでなく、その勢いも強まっています。先ほど見たアーニングサプライズ指数が企業業績の「現実」の強さを示しているのに対して、リビジョンウォッチからは、今後の企業業績に対する「期待」も改善していることが確認できます。

「現実」と「期待」がそろって示す日本株の行方は?

このように、2つの指標を合わせて見ることで、足元の企業業績をより立体的に捉えることができます。リビジョンが「今後の業績に対する期待」を表す指標であるのに対し、アーニングサプライズは「その期待に対して実際の業績がどの程度伴っているか」を示す指標と言えます。

足元では、アーニングサプライズ指数が高水準を維持しており、企業業績の「現実」は良好です。さらに、リビジョンウォッチも右上方向へ大きく進んでおり、今後の業績に対する「期待」も改善しています。つまり、企業業績の「現実」が良好であることに加えて、先行きに対する「期待」も上向いている状況です。

この「現実」と「期待」がともに良い方向を示していることは、今後の株式市場を考えるうえで明るい材料です。企業業績の改善が株価上昇を支える環境が整っていると考えられます。足元では、イラン情勢などの地政学リスクに加え、AI・半導体関連銘柄を中心に株価の変動が大きくなる場面もみられます。それでも、企業業績という面からみれば、株式市場の上昇トレンドは底流で続いているとみています。

リビジョンインデックスを最新データで確認する方法

ここからは補足的な話題です。リビジョンウォッチは計算処理に手間がかかるものですが、比較的簡単に市場全体のリビジョンの傾向をとらえるものとして、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」では最新のデータでリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。

「アナリスト予想変化」「概況」タブで図表3の青丸印から1週間のリビジョンインデックス水準を見ることができます。そして「1ヶ月の変化」の項目で出力された水準と比較して、足元の水準が改善しているのかを合わせて見ることが大切です。

【図表3】リビジョンインデックス(RI)の出力画面(銘柄スカウター)「アナリスト予想変化」
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― アナリスト予想変化、2026年8月25日時点)