企業の利益の「質」を考える手掛かりを活用

近年、AI(人工知能)ブームを背景に、世界的にデータセンターへの投資が急拡大しています。とりわけ米国のビッグテックによるAI関連の設備投資は巨額となっており、その積極的な投資姿勢が成長期待を高める一方で、一部では投資負担の大きさからキャッシュフローへの影響を懸念する見方も聞かれるようになりました。

企業の業績を見るとき、私たちは売上高や利益に目を向けがちです。しかし、同じように利益を計上している企業でも、その利益がどの程度キャッシュとして回収されているかには違いがあります。 こうした違いに着目することで、利益の数字だけからは見えにくい企業の姿を捉えることができます。

そこで注目したいのが、会計や投資分析の分野で知られる「アクルーアル」です。アクルーアルは、企業が計上する利益とキャッシュフローの差に着目する考え方です。利益の数字だけを見るのではなく、その利益がどの程度キャッシュを伴っているのかを見ることで、企業の利益の「質」を考える手掛かりになります。

実は株式市場では、このアクルーアルの大きさと、その後の株式パフォーマンスとの関係が古くから研究されてきました。今回は、日本株を対象にアクルーアルと株価の関係を検証するとともに、アクルーアルを活用して銘柄を選ぶ投資戦略を紹介します。

利益とキャッシュの差「アクルーアル」とは

居酒屋を例として考える

アクルーアルという言葉は、会計の専門用語なので、少し難しく感じるかもしれません。そこで、身近な居酒屋を例に考えてみましょう。

お客さんが居酒屋で食事をして、その場で代金を現金で支払ったとします。店にとっては売り上げが計上されると同時に、実際に現金も入ってきます。もちろん、売り上げがそのまま利益になるわけではなく、食材費や従業員の給料などの費用を差し引いたものが利益になります。

一方、昔ながらの居酒屋では、お客さんがその場で代金を支払わず、「ツケ」にすることもありました。ツケの場合でも、食事を提供して売り上げが成立しているため、会計上は売り上げとして計上されます。費用を差し引けば利益にも反映されます。

ところが、この時点では店に現金は入ってきていません。お客さんが後日ツケを支払って、初めて現金を回収することができます。つまり、利益としてはすでに計上されているものの、まだキャッシュとして回収されていない部分があるわけです。

ここで、利益とキャッシュフローの差に注目します。ツケが多くなれば、利益が計上されていても、それに比べて実際に入ってくるキャッシュは少なくなります。このような利益とキャッシュフローの差を捉えるのが、アクルーアルの基本的な考え方です。

もちろん、ツケであっても後からきちんと支払ってもらえれば問題ありません。しかし、なかには代金を回収できないケースもあるでしょう。その場合、いったん利益に反映されていた売り上げが、後になって貸し倒れなどの損失につながる可能性があります。

企業を見る際に重要な視点とは

企業についても考え方は同じです。会計上の利益が大きくても、その利益に比べて営業活動から得られるキャッシュが少なければ、利益とキャッシュフローの差であるアクルーアルは大きくなります。反対に、利益に見合ったキャッシュをしっかり生み出していれば、アクルーアルは小さくなります。

このため、投資の世界では、アクルーアルが小さい企業ほど利益がキャッシュを伴っているという点で、利益の質を評価する一つの手掛かりになると考えられています。

冒頭で、AIブームを背景にしたデータセンターへの巨額な設備投資について触れました。こうした投資でも重要なのは、多額のお金を投じた結果、それが将来の売り上げや利益につながり、最終的にキャッシュとして回収できるかどうかです。規模はまったく違いますが、先ほどの居酒屋のツケも考え方は似ています。売り上げや利益として数字に表れていても、実際にお金として回収できているかを見ることが大切なのです。

つまり、企業を見る際には、利益がどれだけ増えたかだけでなく、その利益がどれだけキャッシュにつながっているのかという視点も重要になります。アクルーアルは、こうした点を数字で捉えるための一つの方法です。

「アクルーアル比率」を使った企業比較

具体的な計算方法

そこで本稿では、企業規模による違いを調整するため、アクルーアルを前期末の総資産で割った「アクルーアル比率」を使って企業を比較します。具体的な計算方法は、次のようになります。

アクルーアル比率(前期実績)
=(前期実績の親会社株主に帰属する当期純利益-前期実績の営業活動によるキャッシュフロー)
÷前期期初(前々期末)総資産

なお、アクルーアルの計算方法については、学術研究でもさまざまな考え方があり、用いる利益や調整項目などによって複数の算出方法があります。本稿では、そうした複雑な調整は行わず、投資家にとって身近な「純利益」と「営業キャッシュフロー」の差に着目し、できるだけ分かりやすい計算方法を採用しました。

アクルーアル比率が低い企業に注目する理由

ここで注意したいのが、アクルーアルの数値の見方です。アクルーアルは小さいほど、つまりマイナス方向に大きいほど、利益に対して営業キャッシュフローが大きいことを意味します。 それだけ利益がキャッシュを伴っていると見ることができるため、アクルーアル面では魅力的と考えます。

同様に、総資産で調整したアクルーアル比率についても、数値が小さいほど、つまりマイナス方向に大きいほど魅力的と捉えます。したがって、これから行う銘柄選別でも、アクルーアル比率が低い企業に注目していきます。

アクルーアルと利益成長を組み合わせた投資戦略

実際にアクルーアル比率を用いた投資戦略を図表1で紹介します。その時点で入手可能な情報のみを用いて構築できる戦略です。ここでは2026年8月時点を例に説明します。まず、図表1の上段では、「アクルーアル面が魅力的」な企業を抽出します。

①では、直近実績のアクルーアル比率が、母集団の下位から3分の1に入っているかを確認します。先ほど見たように、アクルーアル比率は低いほど、利益に対してキャッシュフローが相対的に大きいことを意味します。そこで、単にアクルーアル比率が低いだけでなく、母集団の中でも相対的に低い企業を選びます。

さらに②では、直近実績のアクルーアル比率が、その企業自身の前年までの過去3年間の平均を下回っているかを確認します。①が他の企業と比べた「横の比較」であるのに対して、②はその企業自身の過去と比べた「縦の比較」です。母集団の中でアクルーアル比率が低く、さらに自社の過去と比べても低下している企業を選ぶことで、アクルーアル面がより魅力的な企業を抽出します。

【図表1】アクルーアル面が魅力的で、利益成長加速が期待される銘柄の判定イメージ(2026年8月時点)
出所:マネックス証券作成

続いて、図表1の下段では、「利益成長が加速している」企業を抽出します。

冒頭では、AIブームを背景にしたビッグテックの巨額な設備投資と、その投資負担がキャッシュフローに与える影響について触れました。もちろん、企業が将来の成長に向けて積極的に投資すること自体は重要です。そこで今回は、将来の利益成長が期待される企業の中から、さらにアクルーアル比率に着目して、利益とキャッシュフローの面でも魅力的な企業を選ぶという考え方で戦略を組み立てます。

そのため、①と②のアクルーアルに関する条件に加えて、③から⑤では将来の利益成長について条件を設けます。

③と④では、営業利益伸び率が「直近実績<今期予想<来期予想」と段階的に高まっているかを確認します。具体的には、③で今期予想営業利益伸び率が直近実績を上回っていること、④で来期予想営業利益伸び率が今期予想を上回っていることを条件とします。これにより、単に利益が伸びている企業ではなく、先行きに向けて利益成長の勢いが強まることが期待される企業を選別します。

ただし、「直近実績1%、今期予想2%、来期予想3%」という企業でも、「実績<今期予想<来期予想」という条件だけなら該当します。そこで⑤では、今期予想営業利益伸び率が5%以上であることを条件に加えます。利益成長の方向だけでなく、一定の成長率も求めることで、利益成長の加速がより期待できる企業に絞り込みます。

このように、①と②でアクルーアル面が魅力的な企業を選び、③から⑤で今後の利益成長の加速が期待される企業を選びます。将来の利益成長だけを見るのではなく、利益とキャッシュフローの関係にも目を向けることで、「アクルーアルが魅力的で、利益成長の加速も期待される企業」を抽出する戦略としています。

パフォーマンス検証

このように選別した銘柄の株式パフォーマンスが実際に良好だったのか、バックテストを行いました。分析対象となる母集団は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄とし、金融業は除外しました。アクルーアル比率の算出には、その時点で入手可能な直近の本決算の実績情報を使用しています。具体的には、前期実績の親会社株主に帰属する当期純利益と営業活動によるキャッシュフローの差を前期末総資産で割って求めています。

検証では、毎月末時点で取得可能な情報のみを用いて、図表1で示した5つの条件をすべて満たす銘柄を選定しました。そして、選定した銘柄に等金額で投資した場合の翌月のリターンを求め、これを毎月繰り返すことで累積リターンを算出しました。

その結果を示したのが図表2です。青線は「アクルーアルが魅力的で利益成長加速銘柄」の累積リターンを示しています。途中では上昇・下落を繰り返す局面もありますが、分析期間を通して見ると右肩上がりで推移しました。

【図表2】アクルーアル比率が魅力的で利益成長加速銘柄群の累積超過リターン
注1: データ期間は2016年10月~2026年8月(ただし2026年8月は8月14日まで)。データサイクルは月次
注2: 母集団はTOPIX構成銘柄を対象とした。ただし金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外した
注3: アクルーアル比率は「(前期実績親会社株主に帰属する当期純利益-前期実績営業活動によるキャッシュフロー)÷前期末総資産」として算出した。毎月末時点で、①アクルーアル比率が母集団の下位3分の1にあること、②当年のアクルーアル比率が前年までの過去3年間の平均を下回ること、③実績営業利益伸び率が今期予想営業利益伸び率を下回ること、④今期予想営業利益伸び率が来期予想営業利益伸び率を下回ること、⑤今期予想営業利益伸び率が5%以上であること、の5つの条件をすべて満たす銘柄を「アクルーアルが魅力的で利益成長加速銘柄」とした。
注4: 各月末時点で注3の5つの条件をすべて満たす銘柄群を対象とした。絶対リターンは各銘柄の配当込み収益率(月次)の単純平均を累積したものとした。超過リターンは、母集団全銘柄の平均リターンを控除した月次超過リターンを累積したものである。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

さらに、赤線は選定銘柄群のリターンから、母集団である金融業を除くTOPIX構成銘柄全体の平均リターンを差し引いた累積超過リターンです。こちらも長期的には上昇しています。つまり、選定銘柄の株価が上昇しただけでなく、母集団と比較しても良好なパフォーマンスを示したことが確認できます。

銘柄選別に効果的な点とは

興味深いのは、アクルーアル比率だけで銘柄を選んでいるわけではない点です。今回の戦略では、アクルーアル比率が低く、さらにその企業自身の過去3年間の平均を下回っているという「利益とキャッシュフロー」の条件に、営業利益の成長加速という条件を組み合わせています。冒頭で触れたように、企業が将来の成長に向けて積極的に投資することは重要ですが、その一方で、利益がどの程度キャッシュを伴っているのかという視点も大切です。

今回の結果からは、将来の利益成長が期待される企業の中でも、アクルーアル比率から見て利益のキャッシュ面での裏付けが相対的に強い企業に注目することが、銘柄選別に効果的なことが示唆されます。

実例:アクルーアルが魅力的な銘柄11選

そこで直近データを使って銘柄を抽出しました。今回は、単にアクルーアル比率が低い企業を選ぶのではなく、アクルーアル面が魅力的で、さらに今後の利益成長の加速が期待される企業に絞り込んでいます。

具体的には、直近実績のアクルーアル比率が母集団の下位3分の1に入る企業を対象としました。さらに、一時点で他社と比べて低いだけではなく、その企業自身の過去と比べてもアクルーアル面が改善している企業を選ぶため、直近実績のアクルーアル比率が前年までの過去3年間の平均を下回ることも条件としています。

そのうえで、実績営業利益伸び率を今期予想営業利益伸び率が上回り、さらに来期予想営業利益伸び率が今期予想を上回る企業を抽出しました。加えて、今期予想営業利益伸び率が5%以上であることも条件とし、単に利益成長率が段階的に高まるだけでなく、一定の利益成長が期待される企業に絞り込みました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除くTOPIX構成銘柄とし、流動性を考慮して時価総額1000億円以上の企業に限定しています。

具体的な条件:
①の条件:直近実績のアクルーアル比率が母集団の下位3分の1にある(4.3%以下)。
②の条件:直近実績のアクルーアル比率が、前年までの過去3年間の平均を下回る。
③の条件:今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が直近実績営業利益伸び率を上回る。
④の条件:来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率を上回る。
⑤の条件:今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が5%以上である。

結果を図表3に示しました。①および②については、各企業の直近の本決算実績を用いて算出したアクルーアル比率で判定しています。また、③~⑤については、QUICKが提供するコンセンサス予想データを用いて判定しています。

【図表3】アクルーアル比率が魅力的で利益成長が加速している銘柄(2026年8月14日終値時点):比率の前年までの3年間平均からの乖離で魅力的な順(昇順)に並べ替えている
注1: スクリーニング基準日は2026年8月14日。対象はTOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除き、時価総額1000億円以上の企業とした。
注2: アクルーアル比率は「(親会社株主に帰属する当期純利益-営業活動によるキャッシュフロー)÷前期末総資産」として算出した。
注3: ①アクルーアル比率が母集団の下位3分の1(4.3%以下)、②当年のアクルーアル比率が前年までの過去3年間の平均を下回る、③実績営業利益伸び率<今期予想営業利益伸び率、④今期予想営業利益伸び率<来期予想営業利益伸び率、⑤今期予想営業利益伸び率が5%以上、の5つの条件をすべて満たす銘柄を抽出した。
注4: ③~⑤で用いた今期予想営業利益伸び率、来期予想営業利益伸び率は、いずれもQUICKが提供するコンセンサス予想を用いているため、他社推計のコンセンサスとは異なる。
出所: QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

銘柄の中には、直近実績の営業利益伸び率がマイナスとなっている企業も見られます。 しかし、今回の条件では、今期予想営業利益伸び率が直近実績を上回り、さらに来期予想営業利益伸び率が今期予想を上回ることを求めています。このため、足元の業績が好調な企業だけではなく、足元では利益が減少していても、今後の回復、さらに成長加速が期待されている企業も抽出されます。

さらに、こうした利益成長への期待だけで銘柄を選んでいるわけではありません。アクルーアル比率が母集団の下位3分の1にあり、かつその企業自身の過去3年間の平均を下回っていることも条件としています。つまり、利益成長の加速が期待される企業の中から、アクルーアル面でも魅力的な企業を選んでいる点が今回のスクリーニングの特徴です。

足元の利益の増減だけではなく、利益成長の方向性と、その利益がどの程度キャッシュを伴っているかという両面から企業を見る方法として、銘柄選びの参考にしてみてください。

実践編:ツールを使って該当銘柄を確認する方法

ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが投資候補として銘柄を検討する際に、その銘柄が本稿で取り上げた「アクルーアル比率が低く、利益成長の加速が期待される企業」**に該当するかを確認する方法を紹介します。

銘柄をチェック:「銘柄スカウター」と5つの条件

マネックス証券ウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、図表4の赤丸印の検索欄に銘柄コード、あるいは銘柄名を入力することで、銘柄の詳細な財務情報や業績予想を確認できます。

ここでは図表3のランキングで7位となったLINEヤフー(4689)を例に挙げます。同社は、「LINE」や「Yahoo! JAPAN」などのサービスを展開するインターネット企業です。ランキングは7位ですが、前期実績の営業利益伸び率もプラスとなっており、実績の利益成長という点からも注目されます。 図表4の赤丸印に同社の銘柄コード、あるいは銘柄名を入力します。

【図表4】銘柄スカウター
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年8月18日時点)

実際に、次の5つの条件を順番にチェックしていきます。

①の条件:直近実績のアクルーアル比率が母集団の下位3分の1にある(4.3%以下)。
②の条件:直近実績のアクルーアル比率が、前年までの過去3年間の平均を下回る。
③の条件:今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が直近実績営業利益伸び率を上回る。
④の条件:来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率を上回る。
⑤の条件:今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が5%以上である

ステップ1:条件①と②で「アクルーアル比率」が魅力的かを確認

まずは①と②のチェックに必要なアクルーアル比率を計算します。

アクルーアル比率(前期実績)
=(前期実績の親会社株主に帰属する当期純利益-前期実績の営業活動によるキャッシュフロー)
÷前期期初(前々期末)総資産

同算式から、前期実績の親会社株主に帰属する当期純利益、前期実績の営業活動によるキャッシュフローと前々期末の総資産が必要です。
前期実績の当期純利益は図表5のマネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「企業分析」「通期業績推移」で取得します。図表5の赤丸で示す193,692百万円です。

【図表5】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の企業分析」「通期業績推移」、例:LINEヤフー(4689)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年8月18日時点)

前期実績の営業活動によるキャッシュフローは図表6のマネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「企業分析」「通期業績推移」で取得します。図表6の赤丸で示す662,854百万円です。

【図表6】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の企業分析」「キャッシュフロー推移」、例:LINEヤフー(4689)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年8月18日時点)

前々期末の総資産は図表7のマネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「企業分析」「貸借対照表」で取得します。図表7の赤丸で示す9,158,346百万円です。1期前を使うので注意が必要です。

【図表7】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の企業分析」「貸借対照表」、例:LINEヤフー(4689)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年8月18日時点)

このようにして、同社のアクルーアル比率を求めると
=(193,692百万円-662,854百万円)÷9,158,346百万円=―5.1%(―0.051)
です。これが①の条件:直近実績のアクルーアル比率が母集団の下位3分の1にある(4.3%以下)を満たしており、条件①はクリアです。

次に、「②の条件:直近実績のアクルーアル比率が、前年までの過去3年間の平均を下回る」ですが、①で計算した年度を含めず、その前までの3年間のアクルーアル比率を同様にして求めると、―1.7%(―0.017)であるため、直近期の―5.1%はこれを下回っていることから②の条件も満たしています。

ステップ2:条件③~⑤で「成長が加速している」を確認

続いて、成長が加速に関する③~⑤の条件をチェックします。図表8に示される「銘柄スカウター」の「アナリスト予想」 の「財務状況」で確認できます。

③今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回るについては、青四角の12.1%が、紫四角の8.3%を上回っており、条件を満たしています。
④来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回るについては、青四角の12.1%に対して、赤四角の15.7%が上回っており、条件を満たしています。
⑤今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が5%以上かについては、青四角が12.1%と上回っており、条件を満たしています。

【図表8】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「アナリスト予想」 の「財務状況」、 例:LINEヤフー(4689)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年8月18日時点)

割安株投資や成長株投資とアクルーアル比率を組み合わせて銘柄選別を

もっとも、5つすべての条件を満たす銘柄は多くありません。そこで実際の銘柄選別では、まず「アクルーアル比率が魅力的」であることを示す①と②の条件に着目するのも一つの方法です。必ずしも今回紹介した利益成長加速の条件と組み合わせる必要はありません。例えば、低PER銘柄を選ぶ場合でも、その中からアクルーアル比率が低く、さらに過去と比べても低下している企業を選ぶといった活用が考えられます。

このように、アクルーアル比率は単独で銘柄を選ぶためだけの指標ではなく、割安株投資や成長株投資など、さまざまな銘柄選別に加える視点の一つとして活用できます。

皆さんも、投資候補銘柄を分析する際に、利益の数字だけでなく、その利益がどの程度キャッシュを伴っているのかを確認する手掛かりとして活用してみてください。