8月13日、米7月PPI(生産者物価指数)が発表されました。PPIは企業間における原材料や製品の仕入れ・卸売価格の変動を示す指標で、CPI(消費者物価指数)などのインフレの動向を占う先行指標です。

米金融政策動向を見極める上でも注目度が高い経済指標ですが、7月総合PPI(前年比)は前月+5.5%から+4.7%へ低下、コアPPI(前年比)は前月+4.7%から+4.2%へと低下する軟調な数字となりました。ヘッドラインを受けた直後、米ドル/円相場は円高方向に動きましたが、すぐさま切り返し、発表前の水準を上回る米ドル高となっています。

なぜ、PPIの数字が悪かったのに米ドル高となるのでしょうか。

ヘッドラインは弱かったものの、サービス価格は跳ね上がった

項目別にみていくと、食品・エネルギー・貿易サービスを除く指標が+0.4%と、6月の+0.1%から4倍に跳ね上がっています。牽引したのは「資産運用手数料」で、この数字がなんと+6.5%に跳ね上がっていました。

PPIの「資産運用(ポートフォリオ管理)手数料」という項目は、米商務省が算出するPCE価格指数の中の「金融サービス」の直接的な算出元データとして使われるため、8月26日発表のコアPCEを押し上げる可能性があります。PCE価格指数は金融政策を司るFRB(米連邦準備制度理事会)が、政策金利を決める際に、最も重視している公式の物価指標です。

資産運用手数料の増加により、サービス価格が上昇

直近の米国株の上昇ラリーによって、運用会社の預かり資産が増えたことが主因とみられます。例えば「100億円の資産」を預かり「1%の手数料」を取っている場合、手数料は1億円です。しかし株価が20%上昇すると、預かり資産が自動的に120億円に増え、手数料もその1%の1.2億円に増えることになります。株価上昇によって運用手数料が引き上げられる結果となり、サービス価格上昇につながったということです。

株価上昇は資産効果によって物価上昇=インフレをもたらすことは想像に難くありませんが、株価上昇そのものが手数料報酬を引き上げることでインフレを押し上げる、という構造でもあるのです。

9月FOMCでの利上げ織り込みは低下も、年内利上げ織り込みは上昇

PPI後、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)における利上げ確率はさらに低下し、足元では32%程度です。わずか1ヶ月前は9月75%程度の利上げが織り込まれていましたので、現状では9月の利上げはないと見込まれます。問題は2026年末までの利上げ織り込みでしょう。8月12日のCPI(消費者物価指数)発表後は55%前後でしたが、8月13日のPPI発表後には70%程度まで上昇しています。

PPIのヘッドラインが弱かったため、発表直後は米ドル売りとなりましたが、株高による金融サービス価格の上振れで年内利上げ確率がむしろ上昇してしまったことで、米ドル高が持続しているのです。日米協調介入の効果も、米ドルがあまりに強い環境では薄れつつあります。次の注目は8月26日発表のPCE価格指数ですね。