今回は、皆さんがご自身で身近なAIを使って日経平均を予想する方法を紹介するとともに、AIの予想を利用する際の留意点や、上手な付き合い方についてお話しします。
調べものや文章の作成、プレゼン資料づくり、さらには困ったときの相談まで、今ではさまざまな場面でAIが使われるようになりました。仕事上の悩みや人間関係について相談したり、「こんなとき、自分はどうふるまえばよいのだろう」と尋ねたりすると、思いのほか納得できるアドバイスが返ってくることもあります。
このようにAIが私たちの生活に身近な存在となり、さまざまなことをAIに頼るようになるなかで、「資産運用にもAIを活用できないだろうか」と考える人もいるでしょう。さらに進んで、「AIに株価を予想してもらいたい」と考えるのも自然な流れかもしれません。
最近のAIは、こちらから質問すると、株価が上がるのか下がるのかという方向性だけでなく、具体的な予想値や、その予想に至った理由まで示してくれます。そうなると、「AIの予想を参考にすれば、投資の成果を高めることにもつながるのではないか」と期待したくなるかもしれません。
実際、AIによる株価予想も、特徴を理解したうえで上手に利用すれば、投資を考える際の有益な情報の1つになります。しかし、ここには注意が必要です。AIは私たちに説得力のある予想を示してくれますが、説得力があることと、予想が実際に当たることは同じではないからです。そしてAIの予想をどのように受け止め、投資判断にどう生かすかという付き合い方が重要になります。
そこで今回は、AIを使った株価予測に焦点を当て、AIによる予測にはどのような特徴や留意点があるのか、そして、その予想とどのように付き合い、資産運用に活用していけばよいのかを考えてみたいと思います。
AIの株価予想はどこまで頼れる?
AIによる株価予想を利用するうえで、まず意識しておきたいのは、予想した時点では分からない新しい情報が、その後の相場を大きく動かす可能性があることです。
株価は、その時点で分かっている情報だけで動くわけではありません。予想した後にも、経済指標や企業業績、為替、金利、海外市場の動き、さらには突発的なニュースなど、株価に影響を与える新しい材料が次々と出てきます。
こうした新しい材料によって投資家の見方が変われば、それまで想定していた相場のシナリオが変化し、株価が予想とは異なる方向に動くこともあります。AIがどれだけ多くの情報をもとに予想しても、予想した時点ではまだ明らかになっていない材料まで織り込むことはできません。そのため、その後に出てくる情報によって、実際の相場展開がAIの予想から大きく変わることもあります。
例えば、短期の株価予想として、日経平均の1週間先の水準をAIに予想してもらうケースを考えてみましょう。先週末の8月7日(金曜日)の日経平均を、週初の8月3日(月曜日)時点で予想してもらったとします。その週の8月5日(水曜日)には、日経平均が2,342円の大幅高となりました。その背景の1つには、ベッセント米財務長官が4日、ホルムズ海峡の開放に向けたイランとの合意について「きょうか明日にも成立する可能性がある」と述べたことで、中東情勢の緊張緩和への期待が高まったことがありました。
しかし、週初の時点で、数日後にこうした発言が出てくることまで予想するのは困難です。これはAIの分析能力が高いか低いかという問題とは少し異なります。そもそも、その時点ではまだ世の中に出ていない情報をあらかじめ知ることはできないからです。相場には日々新しい情報が加わり、その内容によって投資家の見方が変化し、株価も大きく動きます。将来どのような情報が出てくるのか、さらに市場がその情報をどのように受け止めるのかまで事前に見通すことは、AIにとっても難しいのです。
もちろん、予想する期間が長くなるほど、その間に新しい情報が入ってくる機会も増えます。そのため、翌日の予想と1週間後、あるいは2週間後の予想では、同じAIを使ったとしても、後者のほうが予想時点では分からない材料が増えることになります。AIによる株価予想を見る際には、「いつの時点の情報を使って、どれくらい先を予想しているのか」を意識することも大切でしょう。
ただし、こうした限界があるからといって、AIによる株価予測が役に立たないわけではありません。将来を確実に言い当てるものとして使うのではなく、その時点で得られる情報を整理し、「現在の市場環境から考えると、どのような展開が想定されるのか」を考えるための材料として利用することが重要です。AIの特徴と限界を理解したうえで使い方を工夫すれば、株価予想も投資判断に役立つ情報の1つとして活用できるでしょう。
ChatGPTに日経平均を10回予想させてみた
ここで、実際にAIを使って日経平均を予想した例を紹介しましょう。
先週末の8月7日(金曜日)、株式市場が始まる前の午前8時45分に、ChatGPTに次の質問を投げかけました。
「あなたはストラテジストです。前日の8月6日(木曜日)の日経平均株価の終値は6万5683.26円でした。2026年8月7日(金曜日)の日経平均株価の変動幅と終値を予想してください」
これに対する回答は、「前日比+150円、終値6万5833円程度と予想します」というものでした。予想の主な根拠として挙げられたのは、前日の米国株が下落した一方で、日本時間の夜間に取引されるシカゴの日経平均先物が比較的底堅く推移していたことです。
さらに、「海外株安は重しですが、日経平均先物が比較的底堅いことから大幅安は想定しません。一方、中東情勢、原油上昇、今夜の米雇用統計を控えているため、6万6000円台では利益確定売りが出やすいでしょう」との見方も示されました。その時点で得られる市場情報を踏まえて考えると、予想の根拠にはそれなりの説得力があったといえるでしょう。
実は、今回の予想は1回だけではありません。同じ質問をChatGPTに繰り返してみました。すると、興味深いことに、まったく同じ質問をしているにもかかわらず、毎回同じ予想が返ってきたわけではありません。
最初の回答は前日比+150円でしたが、もう一度同じ質問をすると、今度は+250円という予想が返ってきました。そこで、同じ質問を合計10回繰り返してみたところ、同じ予想値が示されることもありましたが、予想される上昇幅にはばらつきが見られました。ただし、今回は10回すべてが上昇予想となり、その上昇幅を平均すると199円でした。
つまり、ChatGPTは同じ時刻に同じ条件で同じ質問をしても、必ずしも同じ株価予想を示すわけではないのです。一方で、今回については予想値にはばらつきがあったものの、「日経平均は上昇する」という方向性については10回すべてで一致していました。
では、実際の相場はどうなったのでしょうか。
8月7日の日経平均はプラスで始まったものの、材料に乏しい相場展開のなかで次第に下落しました。その後は好業績銘柄を物色する動きなどから後場にかけて持ち直しましたが、大引けの日経平均は前日比76円安となりました。
ChatGPTは10回すべてで上昇を予想していましたが、実際の日経平均は下落しました。つまり、今回については、予想値にばらつきはあったものの、方向性という点では10回の予想がすべて外れたことになります。
もっとも、こうしたAIによる株価予想を筆者はこれまでも何度も試しており、予想した方向と実際の相場が一致するケースもあります。今回行った8月7日(金曜日)の予想結果だけを取り上げて「AIによる株価予想は当たらない」と判断することはできません。逆に、予想どおりになったからといって、「AIなら株価を当てられる」と考えるのも適切ではないでしょう。
同じ質問なのに答えが違う? AIの「ゆらぎ」とは
ここで、もう1つ注目したいのが、同じ質問をしているにもかかわらず、ChatGPTが+150円、+250円というように異なる予想を示したことです。
なぜ、まったく同じ質問をしているのに、AIの回答に違いが生じるのでしょうか。ここで知っておきたいのが、生成AIの回答に見られる「ゆらぎ」です。
ChatGPTのような生成AIは、あらかじめ用意された1つの正解を取り出して、そのまま答えているわけではありません。質問を受けると、学習してきた膨大な情報などをもとに、「この質問に対して、どのような答えが適切なのか」を判断しながら、その都度、回答を組み立てています。
そのため、同じ質問をしたからといって、必ずまったく同じ答えが返ってくるとは限りません。株価予測であれば、「米国株の下落を重視する」「日経平均先物の底堅さを重視する」「為替や原油価格を重視する」など、いくつもの見方が考えられます。どの材料をどの程度重視するかによって、同じ情報をもとにしていても、導き出される予想は少しずつ変わってきます。
これは、人間のストラテジストを考えてみても分かりやすいでしょう。同じ日の同じ市場を見ていても、あるストラテジストは強気に予想し、別のストラテジストは慎重な見方を示すことがあります。見ている材料が大きく違うわけではなくても、どの材料を重視するかによって結論が異なることがあるからです。
生成AIも、まったく同じ答えを機械的に繰り返すのではなく、考えられる複数の回答の中から、その都度、回答を組み立てています。その結果、同じ質問であっても予想値に違いが生じることがあります。これが、AIの回答に見られる「ゆらぎ」です。
こうした特徴を考えると、AIに株価を予想してもらう場合には、1回の回答だけを見て「AIはこう予想している」と判断するのではなく、同じ質問を何度か繰り返してみる方法が有効です。最低でも10回は質問を繰り返す必要があると見ていますが、複数回の回答を見ることで、予想の平均的な水準だけでなく、予想がどの程度同じ方向にそろっているのか、あるいは予想値がどの程度ばらついているのかも確認することができます。
そして、この「ゆらぎ」を単なるAIの弱点として捉えるのではなく、株価予想に利用するという考え方ができます。例えば、何度質問しても予想の方向や水準が比較的そろっている場合と、上昇予想と下落予想が入り交じり、予想値も大きくばらついている場合とでは、AIが示す見通しの安定度も異なります。
予想のばらつきが大きい場合には、それだけAIが複数の異なるシナリオを示していると見ることもできます。したがって、予想の平均値だけを見るのではなく、そのばらつきにも注目することで、相場の先行きを考える際の参考情報の1つとして活用できる可能性があります。
2週間後の日経平均をAIはどう予想した?
そこで、実際にChatGPTに2週間後となる8月21日(金曜日)の日経平均を予想してもらいました。先ほど、予想した後に新しい材料が出てくれば投資環境が変わり、予想から外れる可能性があることを指摘しました。ただ、これまでAIによる株価予想を繰り返してきた経験からは、本手法は2週間後程度までの予想であれば、今後の相場を考えるうえで一定の参考になる情報が得られると考えています。
具体的にどのように予想するのかを見てみましょう。
今回は8月9日(日曜日)のお昼の時間にChatGPTに「あなたはストラテジストです。先週末の2026年8月7日(金曜日)の日経平均株価の終値は6万5601.71円でした。2週間後にあたる8月21日(金曜日)の日経平均株価の変動幅と終値を予想してください」と問いかけました。
これに対する回答は、「8月21日(金曜日)の日経平均予想:予想終値6万6500円程度、8月7日比+900円程度(+1.4%)」というものでした。
もちろん、単純に「ここから一直線に900円上昇する」という予想ではありません。ChatGPTはそのシナリオについて、「CPIなどでいったん6万4000-6万5000円台まで下押しする場面を挟みながら、最終的には米金利上昇懸念の後退を背景に8月7日終値を上回る」というイメージを示しています。単に2週間後の株価を数字で示すだけでなく、その間に想定される相場の動きや注意すべき材料についても触れており、現時点の投資環境を踏まえたシナリオとして、うまく整理されています。
ただし、ここでも1回の回答だけで判断するのではなく、同じ質問を10回繰り返してみました。すると、+600円から+900円程度と、2週間後の日経平均がやや上昇すると予想する回答が多くなりました。一方で、10回のうち1回だけ、約800円下落するという予想も示されました。
この下落予想で挙げられた主な理由は、「景気後退懸念による半導体・AI関連株の調整」と「円高」でした。9回が上昇予想だからといって、この1回の下落予想を単なる例外として無視してしまうのは、もったいないでしょう。むしろ、多数を占めた予想とは異なるシナリオがなぜ示されたのか、その理由を確認することにも意味があります。
ここに、AIによる株価予想を利用する際の需要なポイントがあります。1回だけ質問して、その予想値をそのまま受け入れるのではなく、例えば同じ質問を10回程度行い、そのうち上昇予想と下落予想がそれぞれ何回あったのかを確認します。今回であれば、10回中9回、つまり9割がやや上昇するとの予想でした。この結果からは、AIが示した複数のシナリオのなかでは、「2週間後の日経平均は底堅く推移する」という見方をメインシナリオとして捉えることができます。
一方で、残り1回の下落予想にも目を向けることが重要です。メインシナリオとは反対の予想が示されたときには、「なぜ反対の予想になったのか」を確認することで、相場が想定とは違う方向に動く場合のリスク要因を知ることができます。今回であれば、景気後退懸念による半導体・AI関連株の調整や円高が、注意しておきたいリスクシナリオとして浮かび上がってきます。
このように、AIによる株価予想は、示された予想値をそのまま信じて投資判断に使うものではありません。複数回(最低10回と見ています)の予想から多数を占める見方をメインシナリオとして捉える一方、少数となった反対方向の予想からはリスクシナリオを読み取る。そして、それぞれの予想がどのような理由から導き出されたのかを確認することが大切です。
つまり、AIに「答えを出してもらう」だけで終わるのではなく、AIが示した複数の答えを材料として、最後は私たち自身がその意味を考え、解釈することが重要です。こうした使い方こそが、AIによる株価予想と上手に付き合い、資産運用に生かしていくための方法だと考えています。
