7月に入ると、3月期決算企業の第1四半期(1Q)決算発表が本格化します。この時期、投資家が注目する情報の一つが、会社側による営業利益予想(会社計画)の修正です。第1四半期決算時点では、年度はまだ4分の1しか経過していません。そのため、このタイミングで会社計画を修正する企業は多くありません。
それでは、この早い段階で営業利益予想を上方修正した企業は、本当にその後も好業績を維持するのでしょうか。また、株価も高いパフォーマンスを示すのでしょうか。今回は、第1四半期決算時の営業利益予想の修正に着目し、業績の着地と株価パフォーマンスの両面から、その投資効果を検証します。
第1四半期で営業利益予想を上方修正する企業が少ない2つの理由
では、なぜ第1四半期決算で営業利益予想を上方修正する企業はこれほど少ないのでしょうか。その理由は、大きく2つあります。
1つ目は、第1四半期決算時点では、年度が始まってまだ3ヶ月しか経過していないことです。たとえ足元の業績が好調であっても、その後9ヶ月間の事業環境は不透明です。原材料価格や為替の変動、景気動向などによって業績が変化する可能性もあるため、多くの企業はこの時点では会社計画を変更せず、状況を見極めようとします。
2つ目は、企業には業績予想を慎重に公表する傾向があることです。いったん上方修正した後に再び下方修正すると、市場から経営計画の精度に疑問を持たれかねません。そのため、経営陣は「この利益水準なら達成できる」という確信が得られるまでは、会社計画を据え置くケースが少なくありません。
つまり、第1四半期決算という早い段階で営業利益予想を上方修正する企業は、その時点で業績に対して相応の自信を持っている可能性が高いと考えられます。
第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業は、本決算で「上方着地」となるか
図解:「上方修正」と「上方着地」
第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業は、本決算で公表される実績営業利益が、その時点の会社計画を上回る「上方着地」となりやすいのかを確認してみましょう。図表1は、本稿で用いる「上方修正」と「上方着地」のイメージを示したものです。
図表1の左側は、第1四半期決算発表時点の流れを示しています。年度当初(期初)に公表した営業利益予想に対して、第1四半期決算発表時に会社が営業利益予想を引き上げた状態が「上方修正」です。
一方、右側は本決算発表時の流れです。第1四半期決算時点で示した営業利益予想に対して、年度終了後に公表された実績営業利益がさらに上回った状態を、本稿では「上方着地」と呼びます。
過去5年分のデータで検証:第1四半期決算で上方修正した企業のうち7~9割が、本決算でも「上方着地」
図表2は、実際に第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業について、その後の本決算でどのような着地となったかを年度別に集計した結果です。例えば直近の2026年3月期決算企業では、第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業の89%が、その後の本決算でも実績営業利益が第1四半期時点の会社計画を上回る「上方着地」となりました。図表1で示したようなケースが、実際には非常に高い割合で起きていたことが分かります。
また、この傾向は2026年3月期決算企業だけに限りません。過去5年間をみても、第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業の約7~9割が「上方着地」となっており、第1四半期時点で営業利益予想を上方修正した企業は、その後も業績が会社計画を上回る可能性が高いことが確認できます(図表2)。
注2: 対象は各年度のTOPIX構成銘柄(3月期決算企業)。ただし、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外
注3: 「上方着地」は、期初予想に対して第1四半期決算発表時点で会社が営業利益予想を上方修正した銘柄について、その後の本決算で公表された当該年度の実績営業利益が、第1四半期時点の会社予想を上回った場合を指す。「一致」は実績営業利益が第1四半期時点の会社予想と一致した場合、「下方着地」は実績営業利益が第1四半期時点の会社予想を下回った場合を指す
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
上方修正企業の株価を検証
業績の変化は評価されるのか?
第1四半期決算発表時に会社が営業利益予想を上方修正した企業は、その後の本決算で上方着地する可能性が高いことが分かりました。では、株式市場もこうした業績の変化を評価し、株価は高いパフォーマンスを示しているのでしょうか。
そこで、第1四半期決算発表時に営業利益予想を上方修正した企業と下方修正した企業について、その後3ヶ月間の株価パフォーマンスを比較しました。投資タイミングは、決算発表当日に内容を確認して直ちに売買することは現実には難しいため、決算発表翌営業日の終値で投資したと仮定しています。
また、個別企業の値動きだけでなく市場全体の影響も受けるため、分析では同じ分析対象銘柄全体の平均リターンを差し引いた超過リターンを用いて評価しました。結果を示したのが図表3です。
注2: 対象は各年度のTOPIX構成銘柄(3月期決算企業)。ただし、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外
注3: 「上方修正」は、期初予想に対して第1四半期決算発表時点で会社が営業利益予想を上方修正した銘柄、「下方修正」は期初予想に対して営業利益予想を下方修正した銘柄を指す
注4: 超過リターンは、第1四半期決算発表日の翌営業日の終値を起点に算出した3カ月後までの配当込み株価リターンから、同じ起点・同じ方法で算出した分析対象銘柄全体の平均リターンを差し引いて算出した
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
株価は市場平均や下方修正銘柄に対して優位なパフォーマンス
分析結果から、次のことが分かります。第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業は、いずれの年度も下方修正した企業を上回る株価パフォーマンスとなりました。特に2026年3月期決算企業(2025年度)では、3ヶ月後までの超過リターンは12.6%と、同様に計算した母集団平均リターンを大きく上回る結果となっています。
一方、第1四半期決算で営業利益予想を下方修正した企業は、2022年3月期から2025年3月期までは▲1.8~▲3.2%程度のマイナス超過リターンとなり、市場平均を下回る傾向が続きました。2026年3月期決算企業ではプラスとなりましたが、上方修正銘柄の12.6%には及ばず、両者の差は依然として大きい結果となっています。
2024年3月期決算企業では、上方修正銘柄も▲0.6%と小幅ながらマイナスの超過リターンとなりました。しかし、下方修正銘柄は▲3.2%とさらに大きく下落しており、相対的には上方修正銘柄のパフォーマンスが優れていました。つまり、市場環境によっては上方修正銘柄でも株価が下落することはありますが、そのような局面でも下方修正銘柄よりは堅調に推移する傾向がうかがえます。
3月期決算企業の第1四半期決算、業績や株価動向を占う有力なシグナルに
以上を踏まえると、第1四半期決算で営業利益予想を上方修正した企業は、その後の業績が上振れしやすいだけでなく、株価も市場平均や下方修正銘柄に対して相対的に優位なパフォーマンスを示す可能性が高いと考えられます。
これから始まる3月期決算企業の第1四半期決算では、営業利益予想を上方修正した銘柄は、その後の業績や株価動向を占う有力なシグナルとなる可能性があります。銘柄選別の参考にしてみてください。
実践編:ツールを使って該当銘柄の「業績予想修正」を確認する方法
実際に投資候補となる銘柄を探す際に、第1四半期決算で営業利益予想が上方修正されたかどうかを確認する方法を紹介します。本稿の分析と同様に、第1四半期決算で公表された営業利益予想を、期初予想と比較して確認します。
マネックス証券ウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、図表4の赤丸印の検索欄に銘柄コード、あるいは銘柄名を入力すると、銘柄の基本情報を確認することができます。ここではトヨタ自動車 (7203)を例にあげましょう。
「業績予想修正」タブの「当初予想修正」を選択すると、図表5の画面が表示されます。
2026年6月30日時点では、2027年3月期の第1四半期決算はまだ発表されていないため、ここでは昨年度の2026年3月期決算を例に説明します。
図表5では、2025年5月8日時点で2026年3月期の営業利益予想は3,800,000百万円となっています。これが年度当初(期初)に会社が公表した営業利益予想です。その後、2025年8月7日に第1四半期決算が発表され、営業利益予想は3,200,000百万円へ引き下げられました。つまり、このケースでは、第1四半期決算発表時に会社が営業利益予想を下方修正したことが分かります。
このように、銘柄スカウターの「業績予想修正」機能を利用すれば、第1四半期決算発表時に営業利益予想が上方修正されたのか、それとも下方修正されたのかを簡単に確認できます。また、第1四半期決算の発表予定日は、「決算スケジュール」画面で確認できます。


