エヌビディア[NVDA]の研究開発費は日立(6501)の10倍、今後日本では官民50兆円の国策投資が後押し

AIブームを背景に、企業の研究開発投資への注目が高まっています。生成AIの性能は、どれだけ優れたAI半導体やソフトウェア、アルゴリズムを開発できるかによって大きく左右されます。そのため、AI市場では研究開発力そのものが企業の競争力となり、将来の収益を左右する重要な要素となっています。

その代表例がAI半導体で世界をリードするエヌビディア[NVDA]です。同社は2026年2月の決算説明会で、年間の研究開発予算が200億ドル(約3兆円)規模に達しつつあると説明しました。莫大な研究開発投資を背景に、次世代AI半導体を毎年投入する開発体制を構築し、世界トップクラスの競争力を維持しています。

一方、日本を代表する電機メーカーである日立製作所(6501)の2026年3月期(直前決算)の研究開発費は約2,900億円であり、エヌビディアはその約10倍の規模の研究開発投資を行っています。もちろん、事業内容や企業規模が異なるため単純な比較はできません。

しかし、AI時代には研究開発投資が企業価値を左右する重要な経営資源となるなか、日本企業の研究開発力を一段と高めることが重要な課題となっています。日本政府も、AIや半導体などの先端分野への支援を強化しています。経済産業省は、半導体・AI分野に対して2030年度までの7年間で10兆円以上の公的支援を行い、10年間で50兆円を超える官民投資を促す方針を示しています。こうした政策面の後押しもあり、今後は日本企業でも研究開発投資への注目が一段と高まると見られます。そこで今回は、企業の研究開発投資から銘柄を選別する戦略を紹介します。

AI時代、研究開発投資が企業の競争力を左右

企業の研究開発投資を測る代表的な指標に、「研究開発費÷売上高」があります。この指標は、売上高のうちどの程度を研究開発に投じているかを示すものです。一方で、研究開発が将来の製品やサービスを生み出す源泉であることを考えると、企業が将来の売上や利益につながる技術開発にどれだけ資金を振り向けているかを示す指標ともいえます。この比率が高いほど、企業が将来の成長に向けて積極的に研究開発へ投資していると考えられます。

ただし、「研究開発費÷売上高」の水準だけで企業を評価するのは適切ではありません。例えば、医薬品のように研究開発が事業の中核となる業界では、この比率はもともと高くなります。一方、研究開発費がほとんど発生しない業種もあります。さらに、同じ業界でも企業ごとに事業戦略や成長段階が異なるため、単純に企業間で比較すると業種や事業構造の違いを反映してしまいます。

そこで今回は、企業間の水準を比較するのではなく、「その企業自身が以前と比べて研究開発投資を強化しているか」という変化に注目します。過去と比べて研究開発費÷売上高が高まっている企業は、将来の成長に向けて研究開発への資金配分を積極化している可能性があるためです。

研究開発投資を強化し、成長加速が期待される企業を探す

継続的に研究開発投資を強化している企業を選別

実際の投資戦略は図表1のイメージです。いつでもその時点で入手可能な情報のみを用いて構築できる戦略です、ここでは2026年7月時点を例に説明します。

まず、図表1の上段では、「研究開発投資を強化している」企業を抽出します。① では、直近実績の「研究開発費÷売上高」が前年実績を上回っているかを確認します。②  では、同じく直近実績の「研究開発費÷売上高」が過去3年間平均を上回っているかを確認します。※前年との比較だけでは一時的な変化を捉えてしまう可能性があるため、過去3年間平均も上回ることを条件とし、継続的に研究開発投資を強化している企業を選別します。

【図表1】3月期決算企業の研究開発投資を強化し、売上成長加速が期待される銘柄の判定イメージ(2026年7月時点)
出所:マネックス証券作成

成長モメンタムの加速が期待される企業を抽出

続いて、図表1の下段では、「成長が加速している」企業を抽出します。③から⑤では、直近実績の売上高伸び率がプラスであることに加え、今期予想売上高伸び率が直近実績を上回り、さらに来期予想売上高伸び率が今期予想を上回ることを確認します。このように売上成長率が段階的に高まる企業を選ぶことで、成長モメンタムの加速が期待される企業を抽出します。

なお、直近実績売上高伸び率をプラスとしたのは、売上高が減少すると、研究開発費が横ばいでも「研究開発費÷売上高」が見かけ上上昇してしまうためです。 こうした企業を除外することで、売り上げ減少による見かけ上の比率上昇ではなく、実際に研究開発投資を積極化している企業を抽出することを目的としています。

最後に⑥では、来期予想営業利益伸び率が今期予想営業利益伸び率を上回ることを条件とします。売上だけでなく利益についても成長モメンタムの加速が期待される企業に絞り込むことで、研究開発投資を積極化し、その成果が将来の業績拡大につながることが期待される企業を抽出する戦略としています。

投資パフォーマンスの結果は?銘柄選別の有効な視点

研究開発投資を強化し、成長加速が期待される企業群は良好なパフォーマンス

分析対象となる母集団は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄として金融業は除外しました。検証方法としては、毎月末時点で取得可能な情報を用いて6つの条件をすべて満たす銘柄を選定し、それらに均等投資を行い、翌月以降のリターンを積み上げました。結果を示したのが図表2の青線グラフです。青線は累積リターンを表しており、中長期的に右肩上がりで推移していることから、研究開発投資を強化し、成長加速が期待される企業群は良好なパフォーマンスを示していることが分かります。

【図表2】研究開発投資を強化し、売上成長加速が期待される企業の累積株価パフォーマンス
注1: データ期間は2024年8月~2026年6月。データサイクルは月次
注2: 母集団はTOPIX構成銘柄。ただし金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外
注3: 毎月末時点において、研究開発費÷売上高が過去3年間平均および前年を上回り、かつ売上高伸び率がプラスで、実績売上高伸び率<今期予想売上高伸び率<来期予想売上高伸び率、さらに今期予想営業利益伸び率<来期予想営業利益伸び率(予想値はいずれもコンセンサスベース)を満たす銘柄を「研究開発・成長加速期待銘柄」と定義した。各月末時点で入手可能な情報のみを用いて算出
注4: 毎月末時点で注3の条件を満たす研究開発・成長加速期待銘柄を対象とした。絶対リターンは各銘柄の配当込み収益率を単純平均し累積したもの。超過リターンは同月の母集団全銘柄の平均リターンを控除した月次超過リターンを累積したものである
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

市場平均を継続的に上回る

さらに、図表2の赤線グラフは、選定銘柄群のリターンから母集団全体(金融業を除くTOPIX構成銘柄)の平均リターンを差し引いた累積超過リターンを示しています。こちらも長期的に右肩上がりで推移しており、本戦略が市場平均を継続的に上回るパフォーマンスを示していることが確認できます。

この結果は、研究開発投資を積極化している企業の中でも、売上高や営業利益の成長が今後さらに加速すると期待される企業は、株式市場でも高く評価される傾向があることを示唆しています。研究開発投資は短期的には費用として利益を押し下げる要因となりますが、市場はその投資が将来の成長につながる企業を評価している可能性があります。

そのため、単に研究開発費の水準が高い企業ではなく、研究開発投資を強化し、その成果として業績モメンタムの改善が期待される企業に注目することが、銘柄選別の一つの有効な視点になると考えられます。

コマツ・小林製薬など注目銘柄9選:研究開発投資が期待され、6つの条件を満たす企業

直近データを使って銘柄を抽出しました。ただ単に研究開発費の比率が高い企業を選ぶのではなく、研究開発投資を強化し、その成果として今後の成長加速が期待される企業に絞り込んでいます。

具体的には、直近実績の研究開発費÷売上高が前年および過去3年間平均を上回る企業を対象としました。さらに、売上高の減少によって研究開発費比率が見かけ上、上昇した企業を除外するため、直近実績の売上高伸び率がプラスであることを条件としています。そのうえで、来期予想売上高伸び率が今期予想売上高伸び率を上回り、さらに今期予想売上高伸び率が直近実績売上高伸び率を上回る企業を抽出しました。加えて、来期予想営業利益伸び率が今期予想営業利益伸び率を上回ることも条件とし、研究開発投資の成果が今後の業績拡大につながることが期待される企業に絞り込みました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除くTOPIX構成銘柄とし、流動性を考慮して時価総額800億円以上の企業に限定しています。

具体的な条件:
①  の条件:研究開発費÷売上高が前年を上回る。
②  の条件:研究開発費÷売上高が過去3年間平均を上回る。
③ ~⑤の条件:直近実績売上高伸び率がプラスであり、今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回り、さらに来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回る。
⑥ の条件:来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)を上回る。

結果を図表3に示しました。①および②については、各企業の直近実績本決算時点の研究開発費および売上高を用いて判定しています。また③~⑥については、QUICKが提供するコンセンサス予想データを用いて判定しています。

銘柄の中には、今期予想の営業利益伸び率がマイナスの企業も見られます。しかし、研究開発投資の積極化を背景に、来期以降の業績改善が市場で期待されている企業として注目できます。銘柄選びの参考にしてみてください。

【図表3】研究開発費比率が上昇し、売上成長加速が期待される企業(2026年7月6日時点):研究開発費÷売上高の前年差で降順に並べ替えている
注1: スクリーニング基準日は2026年7月6日。対象はTOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除き、時価総額800億円以上の企業とした
注2: ①研究開発費÷売上高が前年を上回る、②研究開発費÷売上高が過去3年間平均を上回る、③直近実績売上高伸び率がプラス、④今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回る、⑤来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回る、⑥来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率を上回り、6つの条件を満たす企業を抽出した
注3: ①および②の判定には、各企業の直近実績本決算時点の研究開発費および売上高を用いた。「研究開発費÷売上高に関して前年差」は、直近実績から前年実績を差し引いた値、「研究開発費÷売上高に関して過去3年間平均との差」は、直近実績から過去3年間平均を差し引いた値を示す
注4: ③の条件は、売上高の減少によって研究開発費÷売上高が見かけ上上昇した企業を除外することを目的としている 注5: ④~⑥で用いた来期予想売上高伸び率、今期予想売上高伸び率、来期予想営業利益伸び率、今期予想営業利益伸び率は、いずれもQUICKが提供するコンセンサス予想を用いているため、他社推計のコンセンサスとは異なる
出所: QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

実践編:ツールを使って該当銘柄を確認する方法

ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが投資候補として銘柄を検討する際に、その銘柄が本稿で取り上げた「研究開発費比率が上昇し、売上成長加速が期待される企業」に該当するかを確認する方法を紹介します。

銘柄をチェック:「銘柄スカウター」と6つの条件

マネックス証券ウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、図表6の赤丸印の検索欄に銘柄コード、あるいは銘柄名を入力することで、銘柄の詳細な財務情報や業績予想を確認できます。ここでは図表3のランキングで1位となったデクセリアルズ(4980)を例に挙げます。同社はスマートフォンやデータセンター向け電子部材を手掛ける機能性材料メーカーです。図表6の赤丸印に同社の銘柄コード番号あるいは、銘柄名を入力します。 

【図表4】銘柄スカウター
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年7月7日時点)

実際に、次の6つの条件を順番にチェックしていきます。

①研究開発費÷売上高が前年を上回る
②研究開発費÷売上高が過去3年間平均を上回る
③直近実績売上高伸び率がプラス
④今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回る
⑤来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回る
⑥来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率を上回る

ステップ1:条件①と②で「研究開発投資を強化している」を確認

まずは①と②のチェックです。

図表5のマネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「企業分析」「設備投資・減価償却費・研究開発費」で確認します。
① 「研究開発費÷売上高が前年を上回る」については、直近実績の5.9%(赤四角)がその前年の4.8%
を上回っているので条件を満たします。
② 「研究開発費÷売上高が過去3年間平均を上回る」については、直近実績の5.9%(赤四角)が前年
までの前年の3年間平均の4.43%(=4.8%、4.5%、4.0%の平均)を上回っているので条件を満たします。

【図表5】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「企業分析」「設備投資・減価償却費・研究開発費」、例:デクセリアルズ(4980)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年7月7日時点)

ここまでで「研究開発投資を強化している」の確認が終わります。 

ステップ2:条件③~⑥で「成長が加速している」を確認

続いて、成長モメンタムに関する③~⑥の条件をチェックします。図表6に示される「銘柄スカウター」の「アナリスト予想」 の「財務状況」で確認できます。

③直近実績売上高伸び率がプラスについては、紫四角の数値3.1%がプラスのことから、条件を満たしています。
④今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回るについては、青四角の8.6%が、紫四角の3.1%を上回っており、条件を満たしています。
⑤来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回るについては、青四角の8.6%に対して、茶色四角の11.5%が上回っており、条件を満たしています。
⑥来期予想営業利益伸び率(コンセンサスベース)が今期予想営業利益伸び率を上回るについては、赤四角で21.0%が4.7%を上回っており、条件を満たしています。

【図表6】マネックス証券のウェブサイト「銘柄スカウター」の「アナリスト予想」 の「財務状況」、例:デクセリアルズ(4980)
出所:マネックス証券のウェブサイトの「銘柄スカウター」(2026年7月7日時点)

このように、「銘柄スカウター」を利用することで、本稿で用いた「研究開発費比率が上昇し、売上成長加速が期待される」という条件を、個別銘柄ごとに確認することができます。

売上成長モメンタムの加速を示す重要なポイント

もっとも、6つすべての条件を満たす銘柄は多くありません。そこで実際の銘柄選別では、まず「研究開発投資を強化している」ことを示す①と②の条件を満たす企業を抽出し、そのうえで成長性を確認する③~⑥の条件を確認するとよいでしょう。特に、④「今期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が直近実績売上高伸び率を上回る」、⑤「来期予想売上高伸び率(コンセンサスベース)が今期予想売上高伸び率を上回る」という2つの条件は、売上成長モメンタムの加速を示す重要なポイントです。

これらの条件を満たす企業は、研究開発投資の成果が今後の業績拡大につながることを市場が期待している可能性があり、注目に値すると考えています。皆さんも、投資候補銘柄を分析する際に活用してみてください。