日本の個人投資家のバイブルとなっている『株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド』の著者であるジェレミー・シーゲル氏とマネックス証券のチーフ・外国株コンサルタントのハッチこと岡元兵八郎の対談を4回にわたってお届けします。

第3回は「ポートフォリオの考え方、巨大テクノロジー企業の競争優位性はいつまで続くのか」についてお届けします。

>> ジェレミー・シーゲル教授が語る長期投資の本質【第1回】
>> S&P500の未来、バブルと割高相場をどう見極めるか【第2回】
>> AI革命、そして次の10年、これから投資を始める人へのメッセージ【第4回】(coming soon)

ポートフォリオの考え方、年齢とともに債券へシフトする必要はあるのか

多くの人は自分の寿命を過小評価し、債券のパフォーマンスを過大評価している

岡元:シーゲル教授の研究では、株式は歴史的に債券よりも優れた長期リターンを生み出してきました。一般的には、投資家は年齢を重ねるにつれて債券を増やし、株式の比率を下げるべきだとされていますが、教授は、この考え方が常に正しいと思われますか。

また、長期的な視点で投資を行う投資家にとって、優良な増配株は、債券のような固定利回り資産の代わりを部分的に担うことができるでしょうか?

シーゲル教授:もちろんです。ただし、まず考えなければならないのは、年齢だけではありません。年齢を重ねたときに、自分や家族が必要な額を超える資産を持っているかどうかが重要です。将来、子どもや孫などの相続人に資産を残したい、あるいは慈善団体へ寄付したいと考えているのであれば、投資期間はさらに長くなります。

多くの人は自分がどれほど長く生きるかを過小評価しがちです。「65歳で退職したのだから、債券中心の運用に切り替えなければならない」と考える人は少なくありません。しかし現在では、健康な65歳であれば、平均余命はおよそ25年あります。退職後の25年というのは、投資期間として見れば十分に長期です。そして、そのような長期の期間では、株式が債券を上回ってきたケースが90%を大きく超えているのです。

ですから、単純に「年齢を重ねるにつれて債券の比率を高めるべきだ」という考え方は、必ずしも正しいとは思いません。もちろん、その考え方に一定の合理性があることも理解できます。実際、判断はその人が保有している資産の規模によっても変わります。老後に必要な資産をぎりぎり確保しているのか、それとも必要額を上回る余裕資金があるのか。これは非常に重要なポイントです。

ただ、多くの人は自分の寿命を過小評価し、同時に、債券で得られるリターンを過大評価しているように思います。配当株は、ある意味で「準債券」のような性格を持っています。なぜなら、そうした銘柄は一般的にバリュー株であることが多く、PERも比較的低く、市場全体の中でもリスクが相対的に低い傾向があるからです。

岡元:以前、バートン・マルキール教授にその点について伺ったことがあります。彼は「私は債券を保有していない」とおっしゃっていました。

シーゲル教授:バートン・マルキール教授のことはよく知っています。私たちは友人です。実は、1ヶ月後あたりに彼と夕食をともにする予定です。私が現在保有している唯一の債券は、ハイイールド債、いわゆるジャンク債です。購入したのは、1976年にウォートン校へ移った頃でした。当時、同僚が「私たちの研究によれば、ジャンク債は本来あるべき水準を上回るリターンを投資家にもたらしている」と話していたのです。

ちょうどその頃、バンガードがハイイールド債ファンドを立ち上げました。そこで私は、そのファンドにまとまった資金を投じました。それ以来、ほとんど何も触っていません。自動的に配当や利息を再投資し続けてきただけです。

その結果、リターンは株式市場を1%、あるいは1.5%ほど下回る程度だったと思います。これは驚くほど良い成績です。国債や投資適格社債を大きく上回るパフォーマンスでした。

マグニフィセント7は今後も勝ち続けるのか

巨大テクノロジー企業の競争優位性と「モート(堀)」の重要性

マグニフィセント7の成長を見極める兆候

岡元:マグニフィセント7が、今後10年マグニフィセント7であり続ける可能性はどれくらいだと思われますか。

シーゲル教授:歴史を見れば分かるように、それは難しいと思います。例えば、かつてコンピューター業界を支配したIBMは、今も存在していますが、最大のプレーヤーではありません。2000年当時、シスコはインターネット業界を支配する最も価値のある企業でした。今も存在していますが、その地位は低下しました。

巨大企業は、分割される可能性もありますし、政府が分割する可能性もあります。部分的に合併することもあるでしょう。今後は非常に大きなAI企業が次々と誕生してくるでしょう。同じようなサイクルは起きると思います。しかし、どの企業がどれだけ速く成長するかを予見するのは困難です。
だからといって、今がマグニフィセント7への投資をやめるべき時だと言っているわけではありません。

岡元:では、マグニフィセント7企業がこれまでのように成長できなくなる場合、どのような兆候から見極めればいいのでしょうか。

シーゲル教授:それは競争圧力だと思います。彼らは非常に高い利益率を持っています。もし彼らが互いに競争し合い、利益率が低下していくなら、それは良い兆候ではありません。あるいは、中国や世界のどこかで画期的な技術が出てきて、彼らの利益を守る「モート(堀)」を脅かすなら、それも問題となるでしょう。

ただし忘れてはならないのは、そうした可能性も現在の株価に織り込まれているということです。マグニフィセント7の多くは高い成長性を持っているにもかかわらず、PER(株価収益率)の30倍未満で取引されています。つまり、市場はすでに、将来そうした脅威がある可能性を、ある程度織り込んでいるのです。現在のバリュエーションにおいて、そうした脅威が無視されているわけではありません。

テクノロジーセクターに多めに投資したほうがよいか

岡元:テクノロジーセクターは長年、米国市場をけん引するセクターとなってきました。教授は、今後もテクノロジーセクターが市場の重要なセクターであり続け、長期的に市場全体をアウトパフォームし続けると思われますか。さらに、投資家はこのセクターをオーバーウェイト、つまり多めに保有すべきでしょうか。

シーゲル教授:オーバーウェイトすべきだとは思いませんが、現水準でアンダーウェイトすべきだとも思っていません。テクノロジーは常に重要であり続けるでしょう。ただ、もし熱狂が行き過ぎれば、2000年のようなバブルとなる可能性はあり得ます。現在のテクノロジー企業は規模があまりにも大きいため、当時ほど極端なことにはならないと思いますが、それでも可能性はあります。

しかし、もしそうなった場合は、先ほどお話ししたように、私は間違いなくアンダーウェイトへの変更を勧めるでしょう。テクノロジーは今後も常に重要です。しかし、経済にとってどれだけ重要かということと、株式市場でどれだけ利益を生むかは同じではありません。株式市場では利益、そして利益率が重要です。イノベーションを追求し続けなければなりません。イノベーションを続けることが極めて重要なのです。

何かが誰にでも使われるようになると、それはコモディティ化(汎用品化)します。その結果、実体経済では非常に一般的なものになっても、株式市場ではほとんど価値を持たないことがあります。したがって、単にテクノロジーについて考えるだけではなく、そのテクノロジー企業の周囲にある「モート(堀)」が維持できるかどうかが重要です。

先ほどお話ししたのは、そういった企業の利益率に対する「競争上の脅威」です。その「モート(堀)」と競争力が維持される限り、安泰であると言えますね。

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