従業員持株会の保有比率は「株価のヒント」になる?
株式投資で銘柄を選ぶとき、多くの投資家がまず注目するのは、企業の売上高や利益、それらの伸び率、配当利回りといった数字でしょう。もちろん、こうしたデータは銘柄選びの基本となる重要な情報です。しかし、少し違ったところに目を向けると、企業を見るうえで興味深い数字があります。それが「従業員持株会の保有比率」です。今回は、「従業員持株会の保有比率が高い会社は、その後の株式パフォーマンスも高いのか」という、少し意外な株価の法則を検証します。
従業員持株会とは、従業員が毎月の給与などから一定額を拠出し、勤務先の株式を継続的に購入する仕組みです。会社によっては、従業員の拠出額に対して奨励金を上乗せするなど、持株会への加入を後押ししているケースもあります。
では、なぜ従業員持株会の保有比率が、株式投資の参考になるのでしょうか。従業員は日々の仕事を通じて、自分が働く会社のことをよく知る立場にあることが挙げられます。もちろん、従業員が将来の株価を正確に予想できるという意味ではありません。それでも、会社の事業の状況や職場の雰囲気、会社の成長などを身近に感じている存在であることは確かでしょう。
さらに、自社株を保有する従業員が多ければ、会社の業績や株価の動きが自分自身の資産にも関係してきます。そのため、会社の成長をより身近なものとして意識することにつながる可能性もあります。そこで、実際に従業員持株会の保有比率が高い会社について、その後の株式パフォーマンスを調べました。
「保有比率3%以上」の企業を長期データで検証
配当込みリターン、毎年の運用成果を積み重ねた場合のパフォーマンス検証手順
具体的な検証方法をみていきましょう。分析対象は、TOPIX構成企業のうち3月期決算企業です。各年8月末時点で取得できる従業員持株会の持株数を期末発行済株式数で割り、「従業員持株会保有比率」を算出しました。
そして、従業員持株会保有比率が3%以上の企業を「従業員持株会の保有比率が高い会社」とし、「3%以上の企業」と「それ以外」の2つのグループに分けました。そのうえで、それぞれのグループについて、その後の株式パフォーマンスを調べました。
具体的には、各年8月末時点の従業員持株会保有比率をもとに2つのグループに分け、それぞれについて、その後の配当込みリターンを計算しました。例えば、2024年は2024年8月末時点の保有比率で企業を分類し、2025年8月末までの1年間のリターンを計測しています。
この方法で、2010年8月末から始まるリターンから2025年8月末から始まるリターンまで、毎年同じ検証を繰り返しました。そして、各年について、それぞれのグループに含まれる企業のリターンを単純平均し、その平均リターンを2010年から順番に累積した結果を示したのが図表1です。つまり図表1は、各年のリターンを個別に示したものではなく、毎年の運用成果を積み重ねた場合のパフォーマンスを表しています。
なお、原則として各年8月末から翌年8月末までの12ヶ月間のリターンを用いています。ただし、直近の2025年については、2026年8月末までのデータが現時点では取得できないため、2026年7月末までの11ヶ月間のリターンを暫定的に用いています。
従業員持株会の保有比率が3%以上の企業の株式パフォーマンスの検証結果とは
図表1を見ると、従業員持株会の保有比率が3%以上の企業の株式パフォーマンスは、それ以外の企業を長期的に上回っていることが分かります。
注2: 従業員持株会の保有比率は、各年8月末時点で取得できる従業員持株会持株数を期末発行済株式数で除して算出しています。各企業を、同保有比率が3%以上の企業と、それ以外の企業に分類しています。
注3: 分析対象は、各年8月末時点におけるTOPIX構成企業のうち、3月期決算企業です。グラフは、それぞれの企業群の配当込みリターンを単純平均し、2010年を起点として累積したものです。 注4: 横軸の年は、従業員持株会の保有比率を判定した年を示しています。例えば「2024年」は、2024年8月末時点の保有比率に基づいて分類し、原則として2025年8月末までのリターンを計測した結果です。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
従業員持株会の保有比率は、銘柄を選ぶ際の一つの手掛かりに
留意点として、従業員持株会の保有比率が3%以上であれば、毎年必ず高いリターンが得られるわけではありません。実際、図表でも株式相場全体が下がる場面では、累積パフォーマンスも低下している時期があります。それでも、各年のリターンを積み重ねた長期の結果を見ると、従業員持株会の保有比率が高い企業が、それ以外の企業を上回る結果となりました。
この結果から、従業員持株会の保有比率という、一見すると株価とは直接関係がなさそうな数字も、銘柄を選ぶ際の一つの手掛かりになると考えられます。
業績や成長性などと合わせて判断を
一方で、業績が好調な企業や成長への期待が高い企業だからこそ、従業員が自社株を保有しやすいという面も考えられます。従業員持株会の保有比率が高い企業の良好な株式パフォーマンスには、こうした業績や成長性など、さまざまな要因も関係していると考えられます。
そのため、従業員持株会の保有比率だけで銘柄を判断するのではなく、業績や成長性などとあわせて、企業を見る際の一つの材料として活用するのがよいでしょう。
「従業員持株会保有比率3%以上」の企業14社とは
直近データを使って従業員持株会の保有比率が高い銘柄を抽出しました。今回の検証で基準とした従業員持株会保有比率が3%以上の条件を満たす企業です。対象は東証プライム上場銘柄のうち、3月期決算企業で時価総額5000億円以上の企業としています。銘柄選別の材料にご参考ください。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
