「行き過ぎ」圏に達してきた投機円売り=当局は円買いへの転換を意識か
投機筋の代表格であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、4月28日時点で売り越しが10.2万枚となり、2025年1月のトランプ政権発足後で最大となった(図表1参照)。これまでの実績からすると、売り越しが10万枚以上になると「行き過ぎ」圏といえる。トランプ政権発足以降、ヘッジファンドなど投機筋は円売りに慎重な傾向が続いたが、いわゆる「イラン危機」発生を受けて円売りを積極化した形となった。
投機筋の円売りは、過去最高規模に拡大した2024年には及ばないものの、2022年の円安阻止介入局面並みには拡大してきた。日本の通貨当局は、4月30日に2024年7月以来の米ドル売り・円買い介入に動いたと見られているが、「行き過ぎ」懸念が出てきた投機筋の米ドル買い・円売りを巻き戻すことを強く意識している可能性がある。では、それは可能なのだろうか。
円買いへ転換の分岐点になってきた120日MA=足下では157円程度
2022年、2024年の円安阻止介入局面では、大きく積み上がった投機筋の米ドル買い・円売りポジションが、一転して急縮小に向かう中で円高への反転が広がった。この米ドル買い・円売りポジションの処分に伴う米ドルの売り戻し、円の買い戻しが加速する分岐点になったのが米ドル/円の120日MA(移動平均線)だった。
120日MAは、ヘッジファンドが損益分岐点の目安にしていると見られている。つまり、米ドル/円が120日MAを割り込むことで、米ドル買い・円売りポジションが含み損に転じ、損失の拡大を回避するためにポジションの処分に伴う円買い戻しが拡大し、一段と米ドル安・円高が進んだと考えられた(図表2参照)。
その120日MAは、足下で157円程度。このため157円より米ドル安・円高の動きが広がる場合、投機筋の米ドル買い・円売りポジション処分に伴う米ドル売り・円買い戻しが拡大することでさらに米ドル安・円高に向かう可能性が出てくるのではないか。
金利差円劣位が縮小=円売りの優位性低下
これまで投機筋が米ドル買い・円売りを仕掛けやすかった理由の1つに大幅な日米金利差(米ドル優位・円劣位)ということがあった。2024年7月に米ドル高・円安が161円まで進んだのは、実は日米金利差が縮小に向かう中でのことだったが、金利差が縮小してもなお日米2年債利回り差で4%以上もの大幅な米ドル優位・円劣位は米ドル買い・円売りにとって圧倒的に有利な要因だったのだろう。
その日米金利差は、2025年1月のトランプ政権登場以降大きく縮小、2年債利回り差は足下では2%台まで縮小した(図表3参照)。金利差円劣位は、2024年頃までと比べると円売りに有利な要因ではなくなってきたようだ。その意味では、円高が進んだ場合、円売りポジションの処分が広がりやすくなっている可能性もある。
