米ドル全面高の展開となるも、米ドル/円相場は160円を挟む展開

2月28日のイラン戦争開戦を受けて、原油価格が急騰。60ドル台で推移していたWTI原油先物価格は一時119ドルまで上昇しました。原油が2倍近く上昇した割には、米ドル/円相場は想定よりも抑制的に感じます。原油高になると米ドル需要増につながることやインフレ期待を強めることなどから、米金利上昇となる傾向があります。今回、米ドル全面高の展開となりましたが、米ドル円相場は160円を挟む展開で抑えられています。

日本の通貨当局からは断固たる措置をとるという市場へのけん制が繰り返され、介入への警戒が強いこともありますが、日銀による4月利上げの可能性が根強く織り込まれていることも投機筋の円売りを抑え込んでいるものと思われます。

根強い日銀の4月会合での利上げ観測

4月8日に発表された日本の3月景気ウォッチャー調査では、現状判断指数が42.2と2022年2月以来の低水準となりました。4月の利上げには慎重になるべきとの見方も強まる中、仮に4月の利上げが見送られても、6月の日銀会合までには利上げが決定されるというのが市場のコンセンサスです。

一方で同日発表された2月の毎月勤労統計から、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年比+1.9%となったことが確認されました。2ヶ月連続のプラスとなり、伸び率は1月の+0.7%を大きく上回っており、市場は日銀の利上げを正当化する材料として、利上げ予想を強めています。これは、米ドル/円相場が意外と円安加速とならない背景にあるのかもしれません。加えて、有事下での米ドル買いとされている米ドル高にほころびがみえてくるようだと、米ドル下落によって円高がもたらされる可能性もあるでしょう。

米国の景気後退への懸念とFOMCの金融政策

4月9日、米国の2025年第4四半期のGDP確報値が公表されました。前期比年率+0.5%と、前回改定値から0.2ポイントの下方修正です。直前の第3四半期が+4.4%だったこともあり、この急減速には驚きが広がりました。もっとも、今回は政府支出・投資が▲5.8%と急減し、GDPを1ポイント超押し下げており、2025年秋の政府閉鎖の影響が出たという特殊事情があります。問題は4月30日発表の2026年第1四半期GDP速報値で、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に伴う原油高、ガソリン高の影響が米経済に影を落としていないか注目です。

原油高で、米国では2026年の年内の利下げ観測が後退、インフレ再燃で次の政策は利上げになるのではないかという警戒が市場に広がる局面もありました。しかし、4月8日に公表された3月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録では、「原油価格の大幅な上昇が家計の購買力を低下させ、金融情勢を引き締め、海外での成長を鈍化させる可能性があるため、労働市場情勢がさらに軟化すれば、追加の利下げが必要となる恐れがある」との懸念が示されました形にとどまりました。

パウエル議長も「インフレ急騰を防ぐために現時点で利上げを行うことは、FRBの利上げ措置の効果が遅れて現れることを考慮すると、長期的には悪影響を及ぼす可能性がある」と述べており、インフレが景気減速をもたらすことで結局は2026年の年内の利下げが正当化される展開となる可能性もあります。

目下、イラン戦争の停戦協議と原油価格が市場の関心事ですが、その先のシナリオを考えると、有事の米ドル高はそう長くは続かないかもしれません。