為替介入の効果は一時的なものなのか
為替介入の効果は数日から数週間後の値動きで測られることが多く、介入直後は米ドル/円相場を数円程度動かしたとしても、その後、再びトレンドに回帰し介入時のコストを超えてしまうことも少なくありません。よって介入効果は一時的であり意味がない、とする見方もあります。しかし、過去の介入実績とその後の長期的効果を検証すると、見え方が変わってきます。
2000年~2011年に行われた為替介入を振り返る
2000年以降に行われた円売り米ドル買い介入(円高を阻止する意図で行われた介入)を振り返ると、すべてが短期的には効果が薄いとされてきました。
2003年7月頃まで米ドル/円相場は1ドル=120円前後で推移していました。米国の利下げ示唆を契機に、10月に110円超の円高となった際、日本の通貨当局は円売り米ドル買い介入を行い、2003年度中に過去最大規模となる32兆8697億円の円売り介入を実施しました。しかし、米ドル/円は2004年に入っても105円台まで円高が進行。介入の効果には疑問が呈されました。
2010~11年、米ドル/円相場が80円を割り込む円高のトレンド下にあったケースでは、2010年9月15日から2011年11月4日の間に合計で8日間にわたり円売り介入が行われ、金額は16兆3420億円にも上りました。しかし、米ドル/円相場は75~80円のレンジを抜け出せず、当時は「弾切れ懸念」とまで書かれました。つまり短期的には効果が薄いとされてきたのです。
長期的視点=バランスシートに巨額の資産を積み上げる長期投資
しかし、長期的にみればその時期の介入によって、外為特会(外国為替資金特別会計)のバランスシートが大きく膨らみました。2000年以降に実施された円売り米ドル買い介入は、財務省公式データの累計で約59兆円。取得ドルは約5900億ドル、介入時の加重平均レートは約100円です。現在の米ドル/円155円との差から、為替差益は約32兆円規模に達する計算です。
加えて、これらの取得ドルは米国債で運用され、毎年2兆円規模の利金収入を生み続けています。財務省によると2025年末時点の外貨準備高は1兆3697億ドル(およそ210兆円)規模あります。この外為特会は、円高時の介入で取得した米ドルの元本が膨らんだものと整理することができます。
円高当時「効果がなかった」と批判された介入が、結果として国家のバランスシートに巨額の資産を積み上げる長期投資となっているわけです。介入に動かざるを得ない水準というのは、日本の通貨当局にとって看過できない行き過ぎの水準であったからこそのオペレーションですので、当然といえば当然の結果とも言えますね。
外為特会の利潤をもたらすオペレーションとなるか
そして2022年以降、通貨当局は複数回円買い米ドル売り介入に動いています。2022年に米ドル/円相場が145円に達した9月から円買い介入が実施され、2024年までに計7回行われてきました。この間の介入発動時の加重平均水準は154~156円程度となります。
2026年のゴールデンウィーク前後の介入に関してはまだ財務省からの正式データが公表されていないものの、4月30日の介入が160円台で実施されたことを考えると、加重平均水準はもう少し上がるでしょうか。2024年からの円買い介入も現在までのところ、その効果には疑問もありつつ、長期的にはこれが外為特会の利潤をもたらすオペレーションとなるかどうかに注目しています。
基本は日米の経済動向や金融政策が重要です。米国の利下げ見通しが消滅したことから、米ドル金利上昇・米ドル高を警戒する向きが増えています。ただ、2024年には4%にも及んだ長期金利の日米金利差が、現在1.9%にまで縮小していることを考えると、2022年から円買い介入に動いている日本の通貨当局のオペレーションが、功を奏するシナリオもあるかもしれません。
