先週(3月30日週)の米国株は6週ぶりに週間上昇、過度な悲観がいったん後退か
2月28日に米国とイスラエルの攻撃で始まったイラン紛争は、足元で6週目に入りました。先週(3月30日週)の米国株は、イラン情勢をめぐるヘッドラインに振り回される展開が続いたものの、最終的には6週ぶりの週間上昇で終わりました。
先週の3月30日(月)は、戦争長期化への警戒に加え、テクノロジー株への不安も重なり、S&P500とナスダックは下落して始まりました。もっとも、その後は相場が切り返し、4月1日(水)には、トランプ米大統領が「戦争終結が近い可能性」を示唆したことを受けて、投資家心理が改善し、主要指数は大きく反発しました。
ただし、4月1日の発言で明確な終戦シナリオが示されたわけではなく、週後半も市場は安心しきれませんでした。4月2日(木)は、トランプ米大統領の対イラン強硬姿勢と原油高を嫌気して朝方は売られたものの、午後には、イランがオマーンとホルムズ海峡の通航管理に向けた協議を進めているとの材料が支えとなり、相場は下げ幅を縮小しました。
翌4月3日(金)は「聖なる金曜日」(キリスト教の復活祭「イースター」直前の金曜日)のため、米国株式市場は休場でした。主要指数はそろって5週連続安をとめ週間ではS&P500が3.36%上昇、ナスダック100は3.95%上昇しました。
先週(3月30日週)の株高は、戦争終結への楽観が完全に織り込まれたというより、原油高と地政学リスクへの過度な悲観がいったん和らいだことによる反発と見るのが自然です。
今週(4月6日週)も引き続き、株価そのものより、原油価格と中東情勢が市場心理をどう変えるかが最大の焦点になるでしょう。加えて、4月10日(金)公表予定の3月CPIは、原油高がインフレにどこまで波及し始めているかを見極めるうえで重要な材料になりそうです。
引き続きマーケットの主役は原油、WTI価格がブレントを上回る
先週(3月30日週)のマーケットで主役だったのは、引き続き株ではなく原油でした。実際、ホルムズ海峡をめぐるヘッドラインが、そのまま株価の方向を左右していた週だったと言えます。4月2日(木)には、トランプ米大統領が対イラン強硬姿勢を改めて示したことを受けて、WTIは11.54%高の111.54ドル、ブレントは7.8%高の109.03ドルまで上昇しました。市場が織り込んだのは、戦争の長期化そのものというより、ホルムズ海峡の閉鎖が長引くことで、目先の供給が一段と逼迫するリスクです。
注目すべきは、今回はブレントだけでなくWTIの上昇が大きく、2022年以来初めてWTIがブレントを上回ったことです。通常、ブレントは国際海上市場の指標、WTIは米国内陸の指標です。今回はホルムズ海峡の混乱で中東産原油の供給不安が強まるなか、中東以外で比較的確保しやすい米国産の期近原油に買いが集中したことが、この逆転の背景にあります。ロイター通信は、5月限WTIが6月限に対して一時16.70ドルもの異例なプレミアムを付けたと報じています。
こうした原油高は、日本でもそうですが、米国の家計にも波及し始めています。全米平均のガソリン価格は2026年3月末時点で1ガロン4.02ドルと、2022年8月以来の高水準に達しました。
これは消費マインドの悪化や裁量消費の鈍化につながりやすく、景気に対する逆風として意識され始めています。バロンズ誌によると、原油価格が100ドルを超えた状態で高止まりすれば、米GDP成長率を1ポイント超押し下げる可能性があるとのことです。ロイター通信も、供給ショックによる25%の原油高が4四半期続けば、実質GDPは約1.5%低くなり得るというモルガン・スタンレーの試算を伝えています。
マーケットは原油と地政学リスクに大きく左右されやすい局面
トランプ米大統領は4月4日(土)、イランに対し、ホルムズ海峡の航路を48時間以内に再開するよう迫り、応じなければエネルギー関連インフラへの攻撃を一段と強める構えを示しました。さらに翌5日(日)には、自身のSNSで、7日(火)に「かつてない規模」で発電所や橋を攻撃すると警告し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖解除を強い調子で求めました。今週(4月6日週)明け前半は、一つの重要な節目になりそうです。
もっとも、イラン側も譲歩する姿勢は示していません。ロイター通信によれば、イランは「攻撃がさらにエスカレートすれば地域全体が地獄になる」と警告しており、ホルムズ海峡をめぐる対立もなお続いています。
現時点で僕が最も警戒しているのは、トランプ米大統領とイラン双方による強硬なレトリックそのものに加え、イランが中東でさらなる混乱を広げる手段として、米軍基地への直接攻撃ではなく、中東諸国の水供給施設など生活インフラを標的とし、その波及効果を一段と広げるリスクです。
足元では緊張緩和への道筋は依然として見えにくく、マーケットは引き続き原油と地政学リスクに大きく左右されやすい局面にあります。英BBCペルシャ語サービスによれば、イラン国内でも一般市民が戦争による苦しみのみならず、戦争に伴う物価急騰の影響を強く受けており、事態の深刻さが改めて伝わってきます。今の報道を見る限り、明るい兆しはなお乏しく、ただ一日も早く、この無益な戦争が終わることを願うばかりです。
ただし最後に株式投資の観点から付け加えるなら、先週(3月30日週)のコラムの繰り返しになりますが、こうしたもっともらしい悲観論が市場を覆う局面こそ、長期投資家にとっては将来のリターンの起点となる買い場になりやすい、という点は忘れてはいけません。
