2024年までの「投機的円安」とは違う

米ドル/円が2024年7月に161円まで上昇した局面で、代表的な投機筋のポジション・データであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、売り越しが過去最大規模に拡大していた。また、2022年9月に日本の通貨当局が円安阻止介入に出動した時も、円売り越しは10万枚以上と、経験的には「行き過ぎ」圏に達していた(図表1参照)。その意味では、確かに2022年と2024年の円安阻止介入局面は、行き過ぎた投機的円安局面だった可能性が高いだろう。

【図表1】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

足下の円ポジションはほぼニュートラルで、2024年までのような大幅な売り越しとは程遠い状況となっている。これを見る限りでは、2024年までのような「投機的円安」という状況とは違うだろう。

2024年までほど「行き過ぎた円安」でもない

次は「異常な円安」なのかを考えてみる。2022年と2024年の円安阻止介入が行われた局面では、米ドル/円は過去5年の平均値の5年MA(移動平均線)を3割程度と大きく上回っていた(図表2参照)。これは、経験的には米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強いことを示すものだった。

【図表2】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

これに対して足下の米ドル/円は、最大でも5年MAを15%上回った程度にとどまっている。以上のように5年MAとの関係を参考にすると、2024年までに比べて最近までの米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念は強くなく、その意味では「異常」ということにはならないだろう。

金利差からは「異常な円安」=ただ、それを正当化した財政懸念の金利上昇

米ドル高・円安に「異常性」があるのは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)との関係だ。日米金利差は2025年半ば以降大きく縮小したが、米ドル高・円安はそれを尻目に大きく広がった(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただし、金利差から異例な形でかい離した円安は、日本の長期金利上昇とある程度連動したものだった(図表4参照)。この長期金利上昇は、特に2025年10月の高市政権誕生を前後して加速した。それはアベノミクスの継承を自認、「ニュー・アベノミクス」という高市総理の「責任ある積極財政」への反応とされている。言葉とは裏腹に、無責任な財政拡張への懸念から長期金利上昇が加速し、それに円安が連動したようになった。

【図表4】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

政策転換なしでの市場介入では状況は変えられない?

以上からすると、異常なまでの金利差からかい離した円安ではあるが、それをもたらしたのは高市総理の「ニュー・アベノミクス」に対する不信任ということになるのではないか。高市総理のいう「異常な円安」が自身の政策が招いたものであるなら、その政策を転換しない限り「異常な円安」は止まらないだろう。

そうした点に触れることなく、客観的には疑わしいままに「市場の投機的、異常な動き」と位置付け、「打つべき手を打っていく」として為替市場への米ドル売り・円買い介入などで対応しても、状況を変えることは出来ないのではないだろうか。