「高市円安」の背景は日本の財政リスクへの懸念

米ドル/円は、2025年10月4日、高市氏が自民党総裁選挙で勝利した直後から150円を大きく上回り米ドル高・円安が急拡大した。その意味では、これは「高市円安」と呼んでも良さそうだが、その大きな特徴は日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に展開したことだった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と日米金利差(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この金利差とほぼ逆方向の動きとなった「高市円安」は、当初はやはり高市氏の自民党総裁選挙勝利の後から大きく上昇に向かった日本の長期金利と連動した状況が続いた(図表2参照)。この長期金利上昇は、高市政権の積極財政を懸念した面が大きいとされた。このため、金利差変化から大きくかい離した「高市円安」は、日本の財政リスクを懸念した結果との見方が有力になった。

【図表2】米ドル/円と日本の10年債利回り(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

為替介入で「高市円安」の反転は可能なのか?

ただ2025年11月下旬頃から、長期金利上昇に対して「高市円安」の足踏みが目立つようになった。これは日本の通貨当局が円安けん制を強め、円安阻止の為替介入の可能性も示唆するようになった影響が大きかっただろう。以上のように見ると、「高市円安」を止められるかという観点で、まず注目されるのは為替介入ということになりそうだ。

日本の通貨当局は、2022年、2024年に為替介入によって円安の反転に成功した。ただ当時に比べると、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率はかなり低い(図表3参照)。これは、介入で円安が止まった当時に比べると、足下ではまだ米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強くないことを示している。それでも通貨当局は為替介入を行い、そして「高市円安」の反転ができるだろうか。

【図表3】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「高市円安」阻止に必要なのは長期金利低下=ここまでは逆の動き

これまでを振り返ると、「高市円安」をもたらしたのは日本の財政への懸念を受けた長期金利上昇の可能性が強い。そうであれば、そもそも「高市円安」を止めるためには財政懸念を払しょくして長期金利上昇を止める必要があるのではないか。

ところが、その長期金利は高市政権スタート以降、補正予算、来年度予算案などでの財政政策を受けてむしろ上昇加速となった。さらに、ここに来て高市総理が解散・総選挙を決め、選挙公約として消費税減税を発表すると長期金利上昇に拍車がかかった。「高市円安」の主因とされる財政懸念とそれに伴う長期金利上昇が続く中で、為替介入だけで「高市円安」を止めることはできるのだろうか。

「高市円安」が160円を大きく超えて進むことを回避するためには、これまでの関係を参考にすれば、長期金利の10年債利回りを2%以下に押し戻すことが必要ではないか。ただ、これまでのところはむしろ逆の動きになっているようだ。