完璧な結晶構造のダイヤモンドに、あえて窒素という異物を混ぜ、炭素が抜けた空隙を作ることで、微細な磁場を読み取る超高性能センサーが生み出されます。今、科学の世界では第2の量子革命が幕を開けており、量子現象を人間が制御し、使いこなそうとしています。
この不完全なダイヤモンドは、航空分野ではGPSに頼らず地球の磁場を読み取って飛行するナビゲーションに、医療分野では心臓の動きを非接触で捉えたり、ウイルスのわずかな兆候を早期発見したりする技術に応用されているそうです。あえて作った欠陥が、人間の知覚を超えた驚異的な感度を生み出しています。
あえて欠陥を認めるという最適主義的なアプローチは、至るところに見られます。例えば陶磁器のひび割れもそうです。意図的なひびがあることで、温度変化による歪みを逃がすしなやかさをもつ、唯一無二の作品となります。
我々も、つい自分の中の欠陥を排除しようとするところがありますが、最先端科学が示すのは、欠落や異物こそが外部とつながるアンテナになるという事実です。完璧ではないことが共感や察知の窓口になる、と思えば短所も推しポイントでしょうか。
