きっかけは2022年12月「日銀ショック」=1日で約7円の円暴騰
為替相場においては、12月中旬に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)が年内最後に大きく動くイベントと位置づけられ、それ以降は実質的なクリスマス休暇入りで市場参加者も少なくなり、相場も極端にボラティリティ(変動率)が低下するというのが基本だった。それが大きく変わったのは、2022年12月20日の「日銀ショック」がきっかけになった面が大きかったのではないか。
この日の日銀金融政策決定会合では、当時行われていた長期金利上昇抑制策であるYCC(イールドカーブ・コントロール)の見直しとして、容認する長期金利の上限拡大が決まった。これは市場において「サプライズ」と受け止められたことから、米ドル/円は137円台から一気に130円割れ寸前まで、最大で7円近い暴落となったのだった(図表1参照)。
年末控えたポジションの損益確定も急変動へ影響
2022年は、1990年以来の150円を超える米ドル高・円安となったことから、市場参加者は米ドル買い・円売りポジションに大きく傾斜した可能性があった。この12月の日銀会合が行われる以前に、すでに140円を割れるまで大きく米ドル安・円高に戻していたものの、それでもまだ円売りポジションは残っていたのかもしれない。
または、年明け以降の米ドル高・円安再燃を見込み、新たに円売りポジションを仕込む動きもあったのではないか。そうした円売りポジションが、「日銀サプライズ」を受けた日本の金利急騰により円買い戻しへの急転換を余儀なくされたことが、この円急反騰をもたらしたと考えられた。
これが大きなきっかけになったと見られ、為替相場が大きく変動する年内最後のビックイベントの役割は、それまでのFOMCからこの12月日銀会合に変わるところとなった。
2023、2024年は3円前後の円安に=12月の日銀会合
2023年12月19日の日銀金融政策決定会合では政策変更は行われなかったが、この日だけで米ドル/円は142円台から145円突破寸前まで最大で3円近い上昇となった(図表2参照)。それでも145円の大台突破に至らないと、その後は年末にかけて米ドル安・円高再燃となった。これは日銀会合を受けた円安再燃を期待した円売りポジションの損益確定の円買いの影響だったのではないか。
2024年12月19日に行われた日銀金融政策決定会合でも政策変更はなかったが、米ドル/円は154円台から157円台まで最大で3円以上と大きく上昇した(図表3参照)。この年は、11月の米大統領選挙でのトランプ米大統領復活を米ドル高要因と位置づけた米ドル高・円安が156円台まで広がっていたが、この日銀会合を受けた動きで米ドル高値を更新するところとなると、そのまま年明けには158円台まで米ドル続伸となった。
以上のように見ると、2022年12月の「日銀ショック」をきっかけに、為替相場において12月の日銀会合が、年内最後に相場が大きく動くイベントに位置づけられてきたことが分かるだろう。3年連続で12月19日に行われる日銀金融政策決定会合を受けた為替相場の動きも要注意と言えそうだ。
※12月22日の「吉田恒の為替ウィークリー」と、12月22日から12月26日の間、「吉田恒の為替デイリー」レポートは休載いたします。
