「金利差で説明できない円安」の変化

10月の高市政権誕生を前後して急拡大した米ドル高・円安は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に広がったものだった(図表1参照)。その「金利差で説明できない円安」は、最近にかけて少し変化が見られる。

【図表1】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

米ドル高・円安は、これまでのところ11月20日の157円台で一巡、その後は緩やかに米ドル安・円高へ戻す展開となった。米ドル安・円高は、基本的に日米金利差縮小に沿った動きだった(図表2参照)が、ここに来て米ドル/円と日米金利差の連動性が復活したようになっている。

【図表2】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年11月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

高市政権誕生時に前後した、金利差で説明できない一段の米ドル高・円安、いわゆる「高市円安」を比較的うまく説明できそうだったのは日本の長期金利上昇だった。ところが、この関係は最近にかけて大きく崩れた。これまで見てきたように、米ドル/円は11月下旬から反落に転じたが、それは米長期金利上昇が続いたことを尻目とした動きだった(図表3参照)。11月下旬を境に米ドル/円の反応する対象が、それまでの日本の長期金利から日米金利差に変わったのはなぜか。

【図表3】米ドル/円と日10年債利回り(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ヘッジファンドの円「買われ過ぎ」修正に伴う円売り一巡

2025年の米ドル/円の動きを、もう1つ比較的うまく説明してきたのが、おもにヘッジファンドの取引を反映しているというCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションだった。それによると、日米金利差縮小傾向を尻目に展開した11月157円台までの米ドル高・円安は、空前規模で拡大した投機筋の円買い越しの縮小に連動していた(図表4参照)。その意味では、金利差で説明できなかった米ドル高・円安は、投機筋の円「買われ過ぎ」修正に伴う円売りが一因だった可能性はあっただろう。

【図表4】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

CFTC統計の投機筋の円ポジションは、11月25日時点で2.6万枚まで縮小した。4月末の円買い越しピークが空前規模の18万枚程度だったことを考えると、円「買われ過ぎ」は11月下旬にかけてほぼ解消されたと言えるだろう。金利差からかい離した円安の一因だった投機筋の円「買われ過ぎ」修正に伴う円売りの一巡により、米ドル/円と日米金利差との連動が復活した面はあるのかもしれない。

金利差から極端にかい離した円売り=復活した金利差との連動は続くのか?

もう1つ、金利差から見てあまりに円安になり過ぎたという観点も注目される。米ドル/円と日米金利差が強く連動していた3月頃の関係を前提にすると、一時米ドル/円は日米金利差の示唆する水準を10%と極端に大きく上回った(図表5参照)。日米金利差縮小傾向が続く中で、さすがにそれから大きくかい離した米ドル買い・円売りは、年末が近づくということも重なりワークしづらくなった可能性はある。

【図表5】日米金利差が示唆する水準からの米ドル/円のかい離(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

11月下旬以降、米ドル/円は基本的に日米金利差と連動する関係が復活した。その理由は、これまで見てきたようにいくつか考えられるものはある。ただそうしたことも、あくまで年末が近づく中で損益確定に動きやすいことに伴う一時的なものに過ぎないかの見極めは不透明である。