生成AIブームが株価上昇をけん引してきました。各国の意欲も高く、米国以外でも、中国は低いエネルギーコストと緩い規制を背景に競争力を高めており、欧州連合(EU)も競争力維持を狙い、AI法での規制を緩和する方向に動いています。世界各地で生成AIへの設備投資は旺盛で、日本でもAIを国家戦略分野として重点的に支援する動きです。

中東の湾岸産油国も戦略投資を強化しています。脱石油を掲げるサウジアラビアやUAEは、電力と資金力という強みを背景にAIデータセンターの建設を進めています。ポスト石油時代の成長戦略です。

過剰な期待への注意も必要です。サウジアラビアの巨大都市構想「NEOM」は物理的・財政的な限界に直面しています。全長170キロ・高さ500メートルの線状都市「ザ・ライン」は、壮大な未来都市として注目を集めました。しかし、建設コストの急膨張や技術的リスクから、いまや砂上の楼閣となりつつある様が、メディアで「Line in the sand(砂上の線、境界線)」と紹介されていました。現実との乖離は投資熱の裏に潜むリスクを想起させます。

AIの進歩は確実に私たちの生活に入り込み、仕事や創作を変え始めています。歓迎すべき進化の浸透とともに、失業の増加や情報の信頼性などにも目を向ける必要が出てくるでしょう。現実やマーケットに対しても、長期的には楽観的な一方、短期的には冷静さも必要です。技術革新の波に乗りつつも、熱狂と現実のバランスは意識したいです。