東京市場まとめ

1.概況

日経平均は359円安の50,524円で反落して寄り付きました。米雇用情勢の悪化を背景に前日の米国市場が下落した流れを引き継ぎ、割高なバリュエーションが意識されるハイテク株を中心に売りが広がりました。相場は前場を通して軟調に推移し、前日比1,100円安の49,783円で午前の取引を終えました。

後場も売り優勢でスタートしました。短期的な調整リスクへの警戒感が広がるなか、前場の引け値から下げ幅を拡大し、一時50,000円を割り込みました。しかし、高市首相が単年度の基礎的財政収支黒字化目標を取り下げると発言したことで積極的な財政出動への期待が高まり、最終的に前日比607円安の50,276円で大引けとなりました。

東証グロース250指数は2.2ポイント安の700.84と小幅な下落にとどまりました。

2.個別銘柄等

ソフトバンクグループ(9984)は約6.9%安の21,700円となり大幅下落しました。前日の米国市場でナスダック総合株価指数が下落した流れを受け、ハイテク株安が運用ファンドの収益に影響するとの見方から売りが広がりました。また、人工知能(AI)や半導体関連銘柄への過熱感が再び意識され、投資家のリスク回避姿勢が強まりました。傘下の英アーム・ホールディングス[ARM]は5日に好決算を発表したものの、6日の米国市場の通常取引では反落し、支援材料にはなりませんでした。こうした流れを受け、アドバンテスト(6857)をはじめとする半導体関連銘柄にも売りが波及し、同様に軟調な展開となりました。

日産自動車(7201)は4.3%高の351.5円となり5営業日ぶりに反発しました。6日に発表した2025年4-9月期決算では、2026年3月期の最終損益見通しを公表しなかったものの、コスト削減の進展が好感されました。同社は2026年度までに固定費・変動費で計5,000億円を2024年度比で削減する計画を掲げ、11月時点では約2,000億円の削減を見込むとされます。加えて本社ビル売却により約739億円の売却益を今期に計上予定で、財務改善への期待が高まりました。

リクルートホールディングス(6098)は約16.1%高の8,487円となり大幅に続伸しました。6日に2026年3月期の連結純利益見通しを従来の5%増から10%増の4,483億円へと上方修正し、市場予想を上回ったことが好感されました。主力の求人検索サイト「インディード」で米国などの収益が伸びており、単価引き上げによる採算改善が寄与しています。国内証券が「単価上昇の実績と見通しが想定を上回る」と評価しており、業績への期待が株価上昇を後押ししました。

太陽誘電(6976)は約16.1%安の3,645円となり、ストップ安水準に張り付きました。6日に発表した2026年3月期の営業利益見通しを従来比20億円上方修正し180億円としたものの、市場では実質的な下方修正との見方が広がりました。円安の修正幅に対して利益の上振れ幅が限定的だったことが失望要因となりました。主力の積層セラミックコンデンサー事業は通信機器や自動車向けで堅調でしたが、スマートフォン向けデバイスの低調が重荷となり、市場予想には届かず。短期的な株価調整を見込む声が聞かれました。

味の素(2802)は16.2%安の3,623円となり、ストップ安水準に張り付きました。6日に発表した2025年4-9月期の連結決算で、事業利益が前年同期比微減の867億円となり、増益から減益に転じたことが嫌気されました。冷凍食品など家庭用食品でプライベートブランドとの競争が強まり、販売が伸び悩んだことも影響しました。通期の事業利益見通しは1,800億円と据え置かれましたが、達成への不透明感が株価の重荷となりました。一方、医薬品開発製造受託事業の成長期待は引き続き根強いとの見方も出ています。

VIEW POINT: 明日への視点

日経平均は週間で4.1%安の50,276円で取引を終えました。米国市場の流れを受け、国内でもこれまで相場を牽引してきたAI・半導体関連銘柄が大幅に下落し、過熱感に対する警戒が強まっています。来週も割高なバリュエーションへの懸念から調整売りが続く可能性がありますが、一方で国内企業の決算内容が堅調であれば、下げ圧力を吸収して高値圏を維持する展開も考えられます。

(マネックス証券 暗号資産アナリスト 松嶋 真倫)