投資単位を引き下げることが如何に重要かはこのつぶやきでも何度も書いてきました。では具体的にどうしたらいいかについて私見を述べたいと思います。単位株制度を抜本的に改革したり制度自体を撤廃しようということがよく論ぜられます。その結果、整合性をもって法律の構造を変えることは大変な労力が掛かることなので時期が遅れたり、或いは変更の仕方如何によっては特定の株式の売買が数日間停止する可能性などが指摘されます。私は法律、特に商法の類は経済活動をサポートするという目的のために存在するものですから、見栄が悪くても実利を取るべきだと考えています。株式の分割についても、単位株のくくり替えについても、商法或いはその附則の中で1株もしくは1単位あたりの純資産額が分割・くくり替え時に5万円を超えてなければいけないという決まりがあり、その為に投資単位が大きくなってしまっています。
私が思うに、これはこの「5万円」を単純に「1000円」とかに換えてしまえばいいと思うのです。そうすれば法の整合性が崩れることもないでしょうし、制度を変える必要もなく、売買停止もありません。各企業が各社の判断で、投資単位を引き下げたい会社がくくり替えをするだけです。確かに屋上屋のような手当の仕方ですが、見た目を気にするよりも、実利を取ってこの国の資本市場を手っ取り早く改善することの方がより良い英断だと思うのですが。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。