アベノミクス開始時の米ドル/円は80円の「超円高」
第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」がスタートする前、米ドル/円は80円程度での推移が続いていた。戦後の米ドル/円の最安値は75円なので、最安値近辺での推移となっていたわけだ(図表1参照)。
これに対して、今回、高市政権がスタートする足下の米ドル/円は150円近辺での推移となっている。1990年以降の米ドル/円の最高値は、2024年に記録した161円なので、足下は最高値に近い水準での推移となっている。このように見ると、米ドル/円の状況は、2012年12月のアベノミクス開始当時に比べて、ほぼ真逆といえる中で高市新政権は開始することになる。
「超円高」是正で脱デフレを目指したアベノミクス=今とは真逆の状況
念のために、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率についても確認してみよう。第2次安倍政権開始前、2012年11月末の同かい離率はマイナス7%だった(図表2参照)。つまり、米ドル/円の「下がり過ぎ」修正局面で第2次安倍政権の経済政策、アベノミクスはスタートした。こうした中で、アベノミクスが当時の日本経済における最大のテーマ、デフレからの脱却を目指す上で「行き過ぎた円高」の是正を目指したのは理解できるところだろう。
これに対して、足下の米ドル/円の5年MAかい離率は、一時プラス30%以上まで拡大していたところからプラス10%前後まで縮小した。つまり「行き過ぎた円安」是正の途上にある。
このように見ても、2012年12月のアベノミクスのスタート時点と、今回の高市政権スタート時点では、特に米ドル/円の置かれている状況はほぼ真逆となっているのではないか。
脱インフレのために「行き過ぎた円安」の是正を目指すという考え方
2012年12月の第2次安倍政権がスタートする頃の1米ドル=80円程度の「超円高」は、デフレに象徴された日本経済低迷の一因と見られた。このため「行き過ぎた円高」の是正により、デフレからの脱却を目指したのがアベノミクスだった。
一方で、足下は物価高対策、つまりインフレ対策への期待が強い。そのインフレが続く大きな要因が「行き過ぎた円安」との見方が基本だろう。そうであれば、高市新総理がかかげる「ニュー・アベノミクス」とは、アベノミクスがデフレ脱却のために「行き過ぎた円高」是正を目指したのとはほぼ真逆で、インフレ対策で「行き過ぎた円安」の是正を目指すというのが、本来は理屈に合うのではないか。
