来週(10月6日週)はノーベル賞ウイーク

来週(10月6日週)はノーベル賞が相次いで発表される「ノーベル賞ウイーク」だ。2025年のノーベル賞の発表は10月6日生理学・医学賞、10月7日物理学賞、10月8日化学賞、10月9日文学賞、10月10日平和賞、10月13日経済学賞というスケジュールで行われる。

これまでにノーベル賞を受賞した日本人は1949年の湯川秀樹さん(物理学賞)を皮切りに、米国籍も含めて29人(団体を含む)。2024年はノーベル平和賞に、核兵器の廃絶を訴える日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が受賞した。

ノーベル賞の前哨戦「クラリベイト引用栄誉賞」で有力候補がみえてくる

ノーベル賞の前哨戦として注目されるのが、イギリスの学術情報サービス会社クラリベイトが発表する「クラリベイト引用栄誉賞」だ。これはおよそ6400万本の論文の引用回数などを分析して、ノーベル賞の受賞が有望視される研究者に贈られるもの。クラリベイト引用栄誉賞は2024年までに441人が受賞し、このうち83人がノーベル賞を受賞しているという。

2025年は2人の日本人研究者が「クラリベイト引用栄誉賞」を受賞

2025年は22人が受賞し、日本からは生理学・医学賞の有力候補として、寒川賢治・国立循環器病研究センター元研究所長、児島将康・久留米大学名誉教授が選ばれている。

2人は共同研究を行い、1999年に胃から分泌される食欲などを調節するホルモンの「グレリン」を発見したことが評価された。体がエネルギー不足を感じたときに、胃からグレリンが分泌されて脳に運ばれて、食欲が刺激される。拒食症などの治療薬として実用化されている。

食欲増進ホルモン「グレリン」関連銘柄

小野薬品工業(4528)が2021年に、グレリン作用薬として、がん患者の体重減少(特に筋肉量の減少)や食欲不振の治療薬「エルドミズ」を発売している。この分野で初の治療薬で、患者のQOL(生活の質)改善に寄与している。

ラクオリア創薬(4579)はグレリン受容体作動薬「カプロモレリン」を医薬成分としたペット用の食欲不振治療薬を開発している。

各賞の有力候補と関連銘柄をチェック

さらに受賞が有力視される研究者を挙げていこう。

生理学・医学賞

「小胞体ストレス応答」の第一人者

生理学・医学賞候補では森和俊・京都大学特別教授。細胞の中にある小胞体という小さな器官で起きる仕組み「小胞体ストレス応答」の第一人者である。異常なタンパク質が蓄積されたことを検知し、修復や除去する機能で、糖尿病や動脈硬化、パーキンソン病などの予防や治療に役立つと考えられている。

コスモ・バイオ(3386)は小胞体ストレスマーカーを手がける。かつて、アステラス製薬が米社と小胞体ストレス応答を調節する治療薬の研究・開発契約締結を発表している。

睡眠制御「オレキシン」の発見

生理学・医学賞候補では、筑波大学・国際統合睡眠医科学研究所機構の柳沢正史機構長も挙げられるだろう。柳沢氏は睡眠の仕組みを解き明かす神経科学の基礎研究を行っている。注目されている功績は、睡眠の制御に関わる「オレキシン」という物質の発見。オレキシンは脳の「視床下部」で作られる神経伝達物質で、睡眠や覚醒、食欲などに関わっている。

オレキシン受容体拮抗薬として不眠症治療薬として実用化されている。脳の覚醒を促すオレキシンの受容体を阻害することで脳を睡眠の状態にさせることができる。2020年6月にエーザイ(4523)が「デエビゴ」という商品名で発売している。

化学賞 

化学賞では桐蔭横浜大学の宮下力特任教授。「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を用いた太陽電池を考案したことが知られている。発光層で厚みがあるシリコン系に比べて極めて薄いため、軽量で曲げることもできる。国内でも建物や窓に活用できる点も注目ポイント。

関連銘柄では実用化に最も近いとされる積水化学工業(4204)のほか、原料のヨウ素では伊勢化学工業(4107)、K&Oエナジーグループ(1663)が挙げられる。

物理学賞

物理学賞では名城大学の飯島澄男終身教授が、カーボンナノチューブ発見で毎年のように候補に挙げられている。カーボンナノチューブは炭素から構成された物質で、重さはアルミニウムの半分。しなやかながら強度は鋼鉄の数10倍といわれる。テニスラケット、ゴルフクラブ、自転車のフレームなどで実用化されている。

日本ゼオン(4205)、GSIクレオス(8101)などが関連銘柄。飯島氏は日本電気(NEC)(6701)の特別主席研究員。

文学賞

文学賞ではこれも村上春樹氏が毎年候補に。書店の丸善CHIホールディングス(3159)、文教堂グループホールディングス(9978)の株価が、発表前に動意付く傾向がある。

経済学賞

経済学賞ではプリンストン大学の清滝信宏教授。地価や株価の下落が、金融機関による貸し出しの低迷を通じて景気が悪化する仕組みを理論化した点が、世界で評価されている。日本人でこれまで、経済学賞を受賞した人はいない。