日銀が打ち出したETF売却の方針は、完遂まで百年を要するとされる壮大な取り組みです。過去百年を振り返れば、戦争や体制転換、技術革新を経て、経済や金融の姿は大きく変わってきました。そのため、百年先を前提とする設計とは、実務的な工程表というよりも、抽象的・象徴的な理念と捉えるのが適切でしょうか。
「百年」という時間軸は国際政治でも語られます。米国では「中国は百年かけて覇権を目指す」とされ、戦後秩序の百年後にあたる2045年は、国際連合体制の再編を占う節目と見なされています。こうした長期の数字は、未来を拘束するものではなく、方向性を示す象徴としての意味合いが強いでしょう。
また、気候変動対策として多くの国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」や、構築後百年前後で老朽化するインフラ更新も、社会が抱える百年の課題です。資産の「百年整理」と重ね合わせれば、持続性や世代責任の重要性がより鮮明になります。
投資の世界でも、GPIFが「世代を超えて資産を守る」というスタンスのように、百年という言葉は継承の理念を示しています。金融政策の転換についても、「放置せず、正常化への一歩を踏み出した」という事実は、未来への責任を示す前向きな取り組みとしての評価もできるでしょう。
