米ドル/円は方向感のない動きが続く

・米ドル/円は、8月1日の「雇用統計ショック」以降、1ヶ月以上にわたって、146円から148円の狭いレンジ内で方向感のない動きが続いている。日米の金利差は縮小しているにもかかわらず、米ドル/円相場はあまり反応せず、米ドル安材料への反応が極めて鈍い。

・円とユーロに対する米ドルポジションを見ると、4月関税ショック以降、米ドルは過去最高に「売られ過ぎ」の状態が続いている。この状況が米ドル安要因に対する反応の鈍さの原因である可能性がある。

米国の労働市場は悪化トレンド

・米国の労働市場は明らかに悪化トレンドにある。特に過去3ヶ月のNFP(非農業部門雇用者数)は3万人まで減少しており、これまで毎月15万人~20万人増えていた雇用が大幅減少している。「予想以上に強い米国経済」という従来の見方に変化の兆しが出ている。

円安の許容限度は150円付近=「ベッセント・シーリング」

・トランプ政権及びベッセント米財務長官の通貨政策には、円安に対する許容限度がありそうだ。これをベッセント・シーリングと呼んでいる。2月5日に植田日銀総裁とベッセント米財務長官が会談した時点では、米ドル/円は152円程度だった。その後139円まで円高が進み、そこから米ドル高・円安に戻し、8月初めには150円まで戻した。この150円付近が米国側の円安の許容限度ではないかと考える。

・米ドル安要因への鈍い反応はもうしばらく続くだろう。その観点からすると、チャートをテクニカルな観点で意識する必要があるだろう。2025年の米ドル/円相場において、146円が重要な分岐点となっている。146円が上値抵抗(レジスタンス)として機能し、この水準を超えると150円まで上昇し、146円がサポートとなっている。今後は146円を下回れば、米ドル安・円高基調に転じる可能性があり、この水準がサポートされている限りは、現在のレンジ相場が続く可能性がある。