日経平均は最高値圏での推移が続いています。欧米の金融緩和期待を追い風に、日本も再び最高値更新をうかがう展開にあるでしょう。そのため、当面は9月中旬に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向は要注目といえるでしょう。
既に株式市場は利下げをかなり織り込んでいる中、ノーサプライズであれば材料出尽くし感が一旦拡がる可能性は否めません。その後に予定されている日銀金融政策決定会合で利上げが示唆されれば、日本には逆風が吹くことにもなりかねません。依然として「音楽が鳴っている間はダンスを楽しむ」べき状況にあると考えますが、そろそろ小休止が入るタイミングになってきたのかと考えます。
さらに、自民党総裁選の影響も無視できません。仮に総裁選前倒しとなると雰囲気は一変し、総選挙の可能性や連立政権の枠組み変更まで現実味を帯びてくることになります。この行方もまた読み難いところです。サマーラリーをエンジョイできた8月から9月へと月が替わり、気持ちも新たにアンテナを張って相場に臨みたいところです。
世界のAI市場の動向を総括する存在
さて、今回はエヌビディア[NVDA]をテーマに取り上げてみましょう。企業そのものをテーマに取り上げるのは(そもそもその企業の分析になってしまうので)いささか変な感じはするのですが、当該企業の高い影響力に鑑み、ご容赦ください。
8月27日のエヌビディアの決算発表は、株式市場で大きく注目されました。5-7月期の決算は売上・最終利益ともに過去最高という好決算だったのですが、決算発表後の時間外取引では株価は下落しました。
米国のAI関連需要は拡大が続いているものの、データセンター売上で成長鈍化の兆しが見えたことや中国向けビジネスの先行不透明感が株価の重石になった格好です。エヌビディア株の下落は世界中の半導体関連企業の株価にも大きく影響を与えたとの指摘もありました。既にエヌビディアは世界のAI市場動向を総括する指標と言えるような位置づけとなっているのです。
エヌビディアはいかにして「AI界の巨人」となったのか
GPUの世界シェアで圧倒的な存在感
エヌビディアがそこまで「AI界の巨人」となっているのにはどういった背景があるのでしょうか。答えは簡単です。AIに求められる極めて高性能な半導体を供給できる企業がエヌビディア以外に極めて少ないためです。これは大量のタスクを同時処理できるという特性を持つGPUというロジック半導体なのですが、それらAI向け高性能半導体市場においてエヌビディアは現在7~8割(9割とする指摘もあります)の世界シェアを持つと言われるほど圧倒的な存在感を示しているのです。AI製品開発において同社の半導体なしには計画すら立てることができない状態であり、それがエヌビディアをAI市場の指標たらしめているのだと言えるでしょう。
AIはまだまだ黎明期にあるため、雨後の筍のごとく様々なサービスが乱立し、それぞれがどういった成長を遂げているのか、あるいはそこから何が大化けするのかの予測は極めて困難です。であれば、必要不可欠な部品(GPU)に注目することで、つまりエヌビディアの業績動向から全体を把握しようというのは至極真っ当なアプローチと言えます。エヌビディアが単なる半導体メーカーではなく、AI市場の指標として認識される由縁がここにあります。
エヌビディア一強を脅かす「中国」という存在
しかし、同時に懸念材料も見え隠れします。最大の懸念は中国関連でしょう。エヌビディアのAI半導体は米国の対中輸出規制対象に含まれるものもあり、その出荷の増減には実需のみならず、米中の政治的駆け引きも抜きには語れません。
また、中国ではエヌビディアに対抗できる(とされる)AI半導体メーカーの出現も報じられており、これまでのエヌビディア一強という状況に風穴が開くのではというシナリオも無視できない状況となってきました。
俯瞰的に見るとAI市場の長期的成長に議論の余地はないように思えますが、その中で果たしていつまでエヌビディアがAI市場の指標として機能・君臨するのかの議論は、今後徐々に高まってくるのではないかと考えます。
投資対象として注目されるエヌビディア関連銘柄は?
では、エヌビディア関連としてどういった企業が投資対象として注目されるでしょうか。まず挙げられるのは、エヌビディア社そのものです。これは当然ですね(笑)。
次いで、エヌビディアとビジネスを共にするパートナー企業群でしょう。同社のHPではABEJA(5574)、アプライド(3020)、アルゴグラフィックス(7595)、BIPROGY(8056)、ディジタルメディアプロフェッショナル(3652)、ジーデップ・アドバンス(5885)、富士通(6702)、HPCシステムズ(6597)、日立製作所(6501)、兼松(8020)、マクニカホールディングス(3132)、三井物産(8031)、MCJ(6670)、日本電気(NEC)(6701)、NTT(9432)、日鉄ソリューションズ(2327)、大塚商会(4768)、リョーサン菱洋ホールディングス(167A)、リコー(7752)、SCSK(9719)、ソフトバンク(9434)、テクノホライゾン(6629)、東京エレクトロン(8035)、といった日本の上場企業群が紹介されています。ただし、それぞれパートナーレベルや協業領域が異なることはご留意ください。
これら以外にも、日本企業とではトヨタ自動車(7203)と次世代自動運転車開発における包括的提携も発表しているほか、公式には明らかにされていないものの、任天堂(7974)やアドバンテスト(6857)、三菱瓦斯化学(4182)、日東紡績(3110)なども重要な取引先(ユーザーや部材・機器の供給)として認識されています。
さらに、エヌビディアをAI分野全体の指標として捉えると、日本では時価総額1000億円超のAI企業としてAppier Group(4180)、PKSHA Technology(3993)といった企業にも注目できるかもしれません。
「よくわからないけど、素晴らしい」ものには投資しない
なお、AI関連といえば、上場前から手を染めていた売上不正が発覚し、先日上場廃止となったAI議事録の株式会社オルツについて、不正は断じて許されるものではありません。
同時に、AIのポテンシャルを盲信し、「よくわからないけど、素晴らしいようだ」といった思考停止が審査の目を曇らせた可能性もあります。AIを理解するのはなかなかハードルが高いのですが、「事業内容が理解できないものは投資しない」というバフェット氏のスタンスもまた戒めとして頭の隅に置いておきたいところです。
