先週(6月30日週)の振り返り=予想外に強い雇用統計受けて145円まで米ドル反発
米失業率、予想外の低下で7月米利下げ期待が急後退
先週の米ドル/円は、前週に148円から反落した流れが続き、米金利が低下し日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に連れながら一時142円台まで下落しました。ただ7月3日(木)に発表された米6月雇用統計が予想外に強い結果となったことで、米早期利下げ期待が後退し、米金利が大きく上昇したことから、米ドル/円も一時145円台まで反発しました(図表1参照)。
米雇用統計について、私は政策金利と相関性がある失業率に注目していました。その失業率は前回の4.2%から4.3%へ悪化するとの予想が一般的でしたが、結果は逆に4.1%への改善となりました。
失業率から失業率の過去10年平均(10年MA=移動平均線)を引いて求めた修正失業率にすると、FFレートとの相関関係はより高くなります。6月の失業率4.1%で修正失業率を計算すると、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では政策金利のFFレートは据え置きといった示唆になるでしょう(図表2参照)。
雇用統計発表が終わったことで、次の焦点はいわゆるトランプ減税案が議会で成立したことが米ドル/円にどう影響するかに移ることになります。減税案はかねてよりトランプ米大統領が要請していた通り、7月4日の米独立記念日までに成立となりました。では、それが米ドル/円にどう影響するか。
今週(7月7日週)の注目点=トランプ減税成立に米ドル/円はどう反応するか
政権1期目の減税成立後は「悪い金利上昇」に
減税は、景気刺激の観点からも財政赤字拡大懸念の観点からも米金利上昇要因と考えられます。すでに見てきたように、雇用統計の結果を受けて米早期利下げ期待が後退したこともあり、週明け米金利は一段と上昇することになるかがまず注目されるでしょう。そして米金利が上昇し、日米金利差が拡大するなら、それに連れる形で米ドル/円も上昇することになるのか。
トランプ米大統領は政権1期目にも大型減税を実施しました。この減税案が成立した後、米金利は大きく上昇し、それを受けて日米金利差も拡大しましたが、ただ米ドル/円は逆に下落しました。つまり、米金利上昇を尻目に米ドルが下落する「悪い金利上昇」となったのでした(図表3参照)。
株価に短期的「上がり過ぎ」懸念=政権1期目の減税成立後と類似
この時、鍵になったのは株価の動きだったと私は考えています。2017年12月の減税案成立の後、2018年1月から米国株は下落に向かいました。当時ナスダック総合指数の90日MAかい離率はプラス10%程度に拡大していましたが、これは短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていることを示唆するものでした(図表4参照)。
以上からすると、トランプ政権1期目の大型減税の実施に対して、当初株価が下落する反応となったのは、すでに短期的に「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたことから、米金利の上昇がその修正のきっかけになったためだったのではないでしょうか。こうした中で米ドル/円は、結果的に「上がる金利」ではなく「下がる株価」に追随した形となったのでした。
ナスダック総合指数の90日MAかい離率は先週(6月30日週)プラス12%まで拡大しました。短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっているようですから、この点はすでに見てきたトランプ政権1期目の減税案成立後の状況と似ています。ではトランプ政権1期目のケースと同じように、減税案成立後に米金利は一段と上昇するのか。そしてそうなった場合、それは株価の短期的な「上がり過ぎ」修正のきっかけとなり、株安をもたらすことになるか。
米金利上昇、米国株下落となった場合、米ドル/円は政権1期目と同じように株安に追随して下落に向かうのか、それとも今回は違うのか。それが今週(7月7日週)の大きな焦点ではないでしょうか。
今週(7月7日週)の米ドル/円は142~146円で予想
今週は、トランプ米大統領が発表した相互関税の一部について発動を3ヶ月停止するとした期限が到来します。期限の再延長はあるのか、それとも当初の予定通り期限まで合意できなかった貿易相手国に対しては新たに関税を発動することになるのか。
相互関税発表後に「関税ショック」と呼ばれた世界的な株価暴落が起こりましたが、今回も関税発動となった場合の株価の反応は注目されるでしょう。株価には短期的な「上がり過ぎ」懸念も強くなってきているようなので、新たな関税発動も「上がり過ぎ」修正のきっかけとなり、株安をもたらす可能性が注目されそうです。
米ドル/円は「関税ショック」以降、142~146円をコアレンジとして、それを超えたところは「上ヒゲ」、「下ヒゲ」となってきました(図表5参照)。このため、このコアレンジの142~146円をどちらにブレークするかが当面の方向性を考える上で注目されるのではないでしょうか。
私はこれまで見てきたように、雇用統計の結果やトランプ減税の成立などを受けて米金利は目先上がりやすいと思います。ただ、それを受けて株価がどう反応するか。金利上昇が株安のきっかけになるようなら、米ドル/円も上昇から下落へ転換する可能性があるのではないでしょうか。以上を踏まえ、(7月7日週)の米ドル/円は142~146円で予想します。
