5月の米国株式市場は、4月の不安定な地合いから一転し、主要3指数がそろって大幅に反発しました。S&P500は前月比+6.2%、ナスダック総合株価指数も+9.6%とハイテク株を中心に大きく上昇しました。米中で互いに課していた追加関税の引き下げや対EU(欧州連合)向けの関税延期など、トランプ政権による通商政策の柔和化が投資家心理の改善につながりました。
S&P500の業種別パフォーマンスを見ると、生成AIや半導体分野への期待を背景に情報技術が+10.8%と最も上昇し、コミュニケーション・サービス(+9.6%)、一般消費財・サービス(+9.4%)、資本財・サービス(+8.6%)も高パフォーマンスを記録しました。一方で、相場全体がリスクオンの様相を強める中、トランプ大統領による薬価引き下げの影響もあり、ヘルスケアは-5.7%と大きく下落しました。
個別銘柄では、エヌアールジー・エナジー[NRG]が+42.3%と月間の上昇率トップとなりました。LSパワー・エクイティー・アドバイザーズから天然ガス発電資産を取得すると発表し、発電能力の大幅な増強や地理的な事業拡大への期待が高まったほか、決算でも利益・売上が市場予想を上回ったことで、買いが広がりました。また、米議会で可決された予算調整法案が、太陽光・風力・地熱発電企業を支援する内容として投資家の期待を上回ったことから、再生可能エネルギー関連も堅調で、ファースト・ソーラー[FSLR]が+25.6%、コンステレーション・エナジー[CEG]は+37.0%の上昇となりました。その他、ブロードコム[AVGO]やシーゲイト・テクノロジー・ホールディングス[STX]、マイクロチップ・テクノロジー[MCHP]など、生成AI関連の半導体・ストレージ関連株も買われ、情報技術セクターの上昇を主導しました。
一方、ワーストパフォーマンスとなったのはユナイテッドヘルス・グループ[UNH]で、CEOの突然の交代や業績見通しの取り下げが嫌気されたほか、トランプ政権が掲げる薬価引き下げ方針の影響も逆風となりました。また、薬価引き下げの影響により、イーライリリー・アンド・カンパニー[LLY]やリジェネロン・ファーマシューティカルズ[REGN]などの医薬品メーカーも大幅安となりました。その他、信用スコア提供会社のフェア・アイザック[FICO]は、連邦住宅金融局(FHFA)の局長が同社の信用スコアに対し高コストであるとの懸念を示し、代替案への支持を表明したことで、売りが広がりました。
全体として、5月はハイテクやクリーンエネルギーを中心とした上昇が際立ち、政策リスクが一時的に後退する中でリスク選好が広がる展開となりました。6月以降も、引き続き関税政策や金融政策の動向が注目されることになりそうです。