株価の戻りは一服、今後のトレンドは?
前回のコラム後、日経平均株価は200日移動平均線(下記の図表チャート上には示されていない)を上回るとともに終値で38,000円台を回復しましたが、翌営業日に上昇が一服すると、その後は下向きの200日と5日移動平均線を下回り、5月20日の取引を終える結果となりました。
また、5日移動平均線を下回るとともに5日移動平均線が上値の抵抗になっているため株価水準が切り下がり、前回指摘した5月12日と13日にあけた窓を埋めています。こうした状況から下降トレンドの発生が警戒されるものの、売り込む動きは見られておらず、もち合いを形成しそうにも見えます。
そこで注目されるのが各移動平均線の向きです。チャート上では、5日、25日、75日移動平均線が表示されていますが、その移動平均線上に5営業日前、25営業日前、75営業日前に当たる各ローソク足に線を引いて示しました(図表参照)。

なぜ、このようなことをするかと言えば、今後のトレンドを探るヒントになるからです。移動平均線は、n日前の株価が捨てられて当日の株価と入れ替わりますが、この入れ替わりの状況から今後のトレンドが判断できます。
例えば、5営業日前(本稿執筆時点からは5月14日)から5月20日までの値動きを見ると、株価が切り下がっていますが、このまま下げ止まるようなら、5日移動平均線が上向きに変化することが期待されます。また、25営業日前(本稿執筆時点からは4月11日)から当日までの株価を見ると、右肩上がりが続いており、値幅を伴う急落が発生しない限り、25日移動平均線の上昇が続き、下落した場合でもサポートになることが期待されます。
一方、75日移動平均線を見ると、75営業日前(本稿執筆時点からは1月28日)は39,000円台で推移していたため、当日の株価が値幅を伴って水準を切り上げない限り、75日移動平均線の低下が続くことが考えられます。
このように3本の移動平均線のn日前の株価と当日の株価の比較から今後のトレンドを予測すると、当面37,500円前後を維持できれば、5日移動平均線が上向きに変化してサポートになることが期待されます。それとともに、25日移動平均線の上昇も継続することになり、再び38,000円に乗せて維持することが視野に入るのではないかと思われます。
一方で、5日移動平均線を下回ったまま推移するとともに75日移動平均線も下回ってしまうようなら、5日移動平均線の低下が続いて上値の抵抗となり、上向きの25日移動平均線辺りまで下落したり、割り込んだりすることが考えられ、注意が必要です。
このように各移動平均線のn日前に当たる株価を見つけることができれば、その後の株価水準と当日の株価水準を比較するだけで、反発基調に戻るのか、あるいは下落基調に変化してしまうのかなどの判断に役立てられるというわけです。
現在のようにもち合いが発生しそうな値動きの時は、特に3本の移動平均線の向きを正確に捉え、トレンドの判断に役立てていく必要があると思われます。
モメンタムの低下が続くのか注目
では、上昇や下落の勢いを教えてくれるモメンタムの向きや水準はどうなっているのでしょうか。モメンタムとその移動平均線であるシグナルは、上昇と下落の勢いの判断の分かれ目となる0ラインに接近しているものの0ラインを下回っていません。この状態が意味するところは、上昇の勢いが弱まっているということであり、下落の勢いが強まった状態ではありません。
そのため、株価水準がわずかに切り下がっているものの、売り込む動きが出ていないのではないかと思われます。
では、今後の展開についてですが、2本線の低下が続き、0ラインを割り込んでマイナスに転じるようなら、下落の勢いが強まることになるため、75日移動平均線を下回って上向きの25日移動平均線辺りまで下落したり、下回ったりすることが視野に入ります。
また、前回のコラムで指摘した窓埋めの可能性も高まるため、買いポジションを持っている投資家は、売りそびれがないようにすることに加え、損失の発生や拡大に注意が必要です。
一方で、2本線の低下が限定的だったり、上向きに変化して水準を切り上げたりするようなら、5日移動平均線上を回復して38,000円台を回復することが視野に入りそうです。
上昇が一服している日経平均株価ですが、もち直すのか、あるいは下落基調に転じるのか、重要な局面に差し掛かっていると考えらえます。移動平均線の向きとモメンタムをしっかり活用して売買判断に役立てたいところです。