米国債の長期信用格付けが最上位の「AAA」から「Aa1」に引き下げ
先週(5月12日週)のダウ平均は1,405.36ドル高となり、200日移動平均線(以下、200日線)上を回復し、米国株式が順調に戻りを試しています。また、S&P500やナスダックは200日移動平均線上を回復してから上値追いとなっています。米中が関税を90日間停止することに合意したことにより、貿易摩擦問題への楽観が続いているほか、経済が予想以上に悪化しないことを織り込む動きにも見えます。株価は景気の先行指標であり、そのような考えも念頭に置きながら次の展開を想定する必要がありそうです。
さて、米格付け大手ムーディーズ・レーティングスが16日、米国債の長期信用格付けを最上位の「AAA」から「Aa1」へ引き下げたと発表しました。米国財政赤字の拡大と返済能力に対する懸念を理由としています。グローバルマーケットには不安材料となり、株価上昇一服の要因になることも想定する必要があります。
ただ、2011年8月にスタンダード&プアーズ(S&P)が初の格下げを行った際は株式市場にとって大きなインパクトとなりましたが、2023年8月のフィッチ・レーティングスが格下げをした際は大きな波乱は生じませんでした。今回も直近で大波乱を経験した株式市場が、想定内の材料に対して弱気の方向に長く大きく影響しないとみられます。
5月16日現在、史上最高値に一番近いのはS&P500
5月16日現在、米主要指数の4月安値からの上昇率を確認すると、ダウ平均は13.3%、S&P500は19.5%となっており、ナスダックの25.8%、半導体株指数(SOX指数)の38.1%に比べるとアンダーパフォームしています。ただし、史上最高値に一番近いのはS&P500です。S&P500は2025年2月に史上最高値をつけましたので、あと約3%上昇すれば到達します。SOX指数の約20%やナスダックの約5%に比べると違いが鮮明です。
S&P500はダウ平均より市場全体の動きに近い動きを示し、米国の経済動向を反映する重要な指標と言えます。ここまで戻ってくると、史上最高値を再び更新した後の展開(上値余地)を想定する必要があります。強気シナリオの想定が空っぽのままではよくありません。
S&P500がコロナショックの急落後につけた安値が2020年3月の2,191.86(取引時間ベース)です。安値からの上昇相場では2022年1月高値(4,818.62)が最初の高値となりました。その後、2022年10月安値(3491.58)までの押し目をこなし、2025年2月の史上最高値(6,147.43)まで上昇が続いたのです。
「二段上げ相場」から考えるS&P500の史上最高値の更新タイミングと上値目途
言葉で表現するのは難しいですが、上げ・下げ・上げの3つの波動で構成される「二段上げ相場」です。一目均衡表ではこの3つの波動を相場の基本的な動きとし、目標値(均衡点)の算出の仕方として、「N、V、E、NT」の4つの基本計算値があります。今回はそのうち「N、V、E」について確認しておきましょう。
実は、S&P500の史上最高値(6,147.43)の水準は、2020年3月安値から2022年1月高値までの上昇幅と2022年10月安値からの上昇幅とが同じと見立てた「N」の計算値の6,118に近いです。2022年1月高値から2022年10月安値までの下落幅を2倍にして、2022年10月安値からの上昇幅と見立てた「V」計算値の6,145とも一致します。いわゆる倍返しです。なお、「N、V」計算値を達成した後に2025年4月の急落が生じました。
この先、いつ史上最高値を更新するのか、高値更新後はどれぐらいの時間をかけて上昇が続くのか、といった観点は別にしても、次の「E」計算値を算出しておく必要があります。「E」計算値は、2020年3月安値から2022年1月高値までの上昇幅と2022年1月高値からの上昇幅が同じと見立てた7,445です。
4月の波乱は需給面に大きな変化を及ぼすことになったに違いありません。相場用語で言うと、下に「往ってこい」の相場展開だったことになりますが、その反動は決して小さなものではないような気がします。