予想通り荒れたトランプ政権2期目の開幕
ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、カナダドルの5通貨で試算)は、1月14日時点で買い越しが33万枚まで拡大した。同買い越しの過去最高の38万枚に迫る動きとなった(図表1参照)。
同買い越しは2024年12月半ばには20万枚程度だったのが、12月末から1月中旬にかけて一気に拡大したと言える。12月FOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げ見通しが後退したことともに、大統領就任式直後にトランプ氏が関税引き上げに動くことが想定されてきたこと、それに伴い米金利上昇、米ドル高が進むことを意識した影響が強かったと考えられる。
米ドル/円は156円台から一時155円割れへ急落
ところが、就任式直後の関税引き上げは見送られた。それを受けて米ドル/円は156円台から一時155円割れへ急落したが、これはすでに見てきたように大きく米ドル買いに傾斜したポジションの反動が入った影響が大きかったのだろう。
ただし、この「トランプ関税」を意識したと見られる米ドル買いの中心は対円ではなく、かねてから名指しされていたカナダドルなどに対してだったと見られた。CFTC統計の投機筋のカナダドル・ポジションは最近にかけて18万枚以上に拡大した(図表2参照)。なお、円の売り越しは1月14日現在で2.9万枚と小幅にとどまっていた(図表3参照)。
こうしたことから、「トランプ関税」引き上げへの懸念が後退すると、米ドル買い戻しは対円以上にカナダドルなど円以外の通貨に対して大きくなった。この結果、米ドル/円が急落する一方で、クロス円の中には上昇するケースも少なくなかった。
その後、トランプ大統領が2月1日にはカナダとメキシコの関税を25%に引き上げると表明したとの報道が流れると、一転、米ドル買いが再燃した。トランプ政権2期目は、ある程度予想通りの荒れる幕開けとなり、その主役を演じたのは「トランプ関税」だった。
「トランプ関税」巡る動きに日米金利差がどう反応するかに注目
「トランプ関税」に対しては、すでにそれを見込んだ米ドル買い・ポジション拡大となっているようだ。その場合、実際に関税を引き上げる際のさらなる米ドル買い拡大は自ずと限られるのではないか。むしろ米ドルは、対カナダドルを中心に「買われ過ぎ」の懸念もあるため、その修正で米ドル売りになった場合の影響が大きくなる可能性もあるだろう。
最後に、米ドル/円は、少なくともCFTC統計の投機筋のポジションを見る限り、米ドル買い・円売りポジションへの偏りは大きくなさそうだ。このところの米ドル/円は日米10年債利回り差との相関性の高い状況が続いている(図表4参照)。その意味では、「トランプ関税」巡る動きの中で日米金利差がどのように反応するかが手掛かりになるのではないか。