2024年1月8日(水)0:00発表(日本時間)
米国 ISM非製造業景気指数
【1】結果:市場予想・前回結果いずれも上回る
ISM非製造業景気指数(12月)
結果:54.1 予想:53.5
前回:52.1
12月の米ISM非製造業景気指数は54.1となり、市場予想および前回結果を上回りました。好不調の境目とされる50を6ヶ月連続で上回り、米国のサービス業が堅調である様子が示されています。

【2】内容・注目点:米サービス業は好況も気になる支払価格指数の上昇
そもそもISM非製造業景気指数とは
ISM非製造業景気指数とは、全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が400社以上の購買担当者を対象にアンケート調査を実施し、その結果を指数化したものです。
総合指数は、事業活動・生産、新規受注、雇用、入荷遅延の4つのサブ項目から構成され、50以上はサービス業の好況、50以下は不況を示唆します。
その他、総合指数の構成要素以外に、在庫や受注残に関する項目や、インフレ指標として注目される支払価格指数が報告されます。米国経済ではサービス業の占める割合が大きく、主要指数のなかでは比較的早く公表されるため、この指数に注目が集まります。
12月結果の詳細・内訳

図表2に示されている通り、先行指標である新規受注は前月から0.5ポイント上昇して54.2となり、事業活動・生産も4.5ポイント上昇して58.2となりました。製造業での景況感の向上と同様に、サービス業でも大統領選挙を終えたことで目先の不透明感が払しょくされ、受注や生産活動の再開を後押ししていると考えられます。
また、新規受注と事業活動・生産の好調を背景に、雇用指数と入荷遅延指数も50を上回り、12月は総合指数を構成する4つの指数が健全な水準を示しました。
一方、企業担当者のコメントには、次期政権の関税に関する懸念や「住宅ローンが予想ほど下がらず、購入者が様子見している」といったネガティブな意見も見られます。指数の値からはサービス業が足元で好況である様子がうかがえますが、コメントからは次期政権の政策に対する先行きの不安や、一部業界で利下げの効果がまだ及んでいない状況も浮かび上がります。

また、今回気になる点は、支払価格指数の急反発です。11月から6.2ポイント上昇し、12月には64.4と2023年2月以来の高水準を記録しました。

ISMサービス業調査委員会のミラー委員長は、今回の支払価格指数の上昇について「物価の持続的な上昇を示す兆候は見当たらない」とコメントしていますが、それでも2025年の利下げペースの鈍化や雇用への影響が懸念されます。
現状、物価指数がFRBのインフレ目標を上回っている中、今回のような結果はFRBの利下げを足踏みさせる要因となる可能性があります。そして、利下げが思うように進まない場合、企業が生産性向上のための資本投資を制限する恐れがあり、その結果、企業は労働者の雇用削減を通じてその不足分を調整するという状況に発展する可能性があります。
なお、支払価格指数は前年も年末年始に一時的に上昇していたため、今回も一過性のものにとどまるかもしれません。今後の数値も引き続き注目が必要です。
【3】所感:2025年もインフレがテーマとなるか
ISM非製造業景気指数と同日に公表された11月の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も市場予想を上回り、両指標から米景気の強さが示される結果となりました。しかし、トランプ次期政権による財政規律の悪化懸念を背景に米長期金利が高止まりしている中、今回の結果はインフレ再燃懸念やFRBによる利下げペースの鈍化を意識させ、株式市場にとっては悪材料となりました。7日の米株式市場では、ハイテク株を中心に下落しました。
一方で、米経済が好調であることに変わりはなく、今回の結果が必ずしも悪いニュースとは言えません。2025年は引き続きインフレが重要テーマとなりそうですが、トランプ次期政権が具体的にどのような政策を実行するかは依然として不透明であり、期待や思惑で動くマーケットが過敏に反応している面も否めません。
今週1月10日(金)には雇用統計の公表が予定されており、個々のデータを基に冷静に米国経済の現状を把握する姿勢が重要となるでしょう。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐