トランプ次期政権の政策の影響は計り知れず
2024年も残すところあとわずか。2025年の幕開けがすぐそこに迫っています。
例年と同様にこの時期は「新年の見通し」を述べる時期ですが、今回はそれがいつになく難しくなっています。2025年1月に米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が就任することになっているためです。
トランプ次期大統領の掲げる政策の大きな柱は「関税の強化、減税の継続(恒久化)、移民規制」の3つです。政策としては比較的単純とされていますが、その影響の大きさは計り知れません。
世界最大の経済大国であるアメリカが保護主義を前面に打ち出しているのですから、アメリカ以外の国は戦々恐々としています。減税の継続は米国経済をより一層強くし、関税の強化も工場の移転などを通じて米国への資本シフトにつながります。
しかし中国をはじめ、他の国にはその分のしわ寄せがもたらされます。日本も例外ではありません。2025年の見通しがいつになく難しいのはまさにこの一点にあります。
中国経済の見通しは厳しい
10月にIMF(国際通貨基金)がまとめた「世界経済見通し」では、2025年の世界経済は3.2%成長で、2024年とほぼ同じ3%台の安定した伸びが見込まれています。しかしこれはトランプ大統領が誕生する以前の予想です。
米国は2024年の2.8%成長が、2025年には2.2%に低下する予想になっていますが、トランプ政権下の一連の政策で引き上げられる可能性があります。
欧州は2024年が0.8%の成長に対して、2025年は1.2%とわずかながら上昇。日本も同じく2024年の0.3%が2025年は1.1%に高まる見通しです。
しかし、中国は2024年の4.8%から、2025年は4.5%へダウンする見通しとなっています。もともと厳しい見通しから、さらに米国との関税引き上げの応酬で中国経済はさらに冷え込むことが予想されます。前回、2018年のトランプ政権時は米中間の貿易摩擦が世界経済にブレーキをかけました。
不確実な時代に改革を進める経営者たち
新年を迎えるにあたって不透明な要素があまりに多く、明るい見通しは非常に限られてしまう状況ですが、唯一の希望はこのような不確実な時代だからこそ、企業経営者は五里霧中の状態にあって自分たちの手の届く範囲の事業改善や、長年手を付けられなかった構造改革を今のうちに進めておこうという意識になっている点です。
2024年の株式市場では、強者と弱者がはっきりと区分けされる二極化が一段と鮮明になった年でした。来たる2025年はそれがさらに強まることでしょう。
二極化の下の階層に位置している企業は、自分たちが弱者であることを十分に意識しています。そこからの脱却を図ることが2025年の大きなテーマになっていくのではないでしょうか。
2025年の日経平均の見通しとしては「45,000円」を想定しています。主にPBR(株価純資産倍率)から算出しました。現在、日経平均の一株当たり純資産は27,300円です。例年どおりに内部留保が積み上がれば、1年後には29,100円くらいに増えていることになり、PBRが1.55倍とすると「45,000円」くらいになります。
その時に活躍する銘柄として、内需系の中・小型株に注目しています。
2025年の活躍に期待できる内需系中・小型株4銘柄
サッポロホールディングス(2501)
「サッポロ黒ラベル」で知られるビール大手メーカー。根強いファンが多いものの、キリンやアサヒに次ぐ「万年3位」の座を余儀なくされてきた。最大の特徴は国内で130店を展開する外食部門と「恵比寿ガーデンプレイス」を中心とした不動産事業。これが現在の主たる収益源だが、不動産事業の展開を賭けて外部資本からの提案を模索。ここからの飛躍を期す。
ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)
後継者の不在、事業存続の課題に直面している中小食品企業に特化したM&Aを専門に手がけている。単独での経営が困難となった地方の食品会社にターゲットを絞り込んでグループに取り込む。その上で経営者不足や営業力不足、品質管理、新商品の開発、資金調達などを支援していく。ホタテを中心に日本の水産物の輸入を禁じていた中国が、2025年前半にも輸入再開に踏み切る可能性が強くなってきたことは同社にとって大きな朗報である。
住友理工(5191)
自動車の防振ゴムで世界シェア28%を持つトップ企業。自動車用ホースでは国内トップで、世界シェアは19%に達する。住友電工が筆頭株主で発行株数の49.5%を保有する。トヨタグループを軸に国内自動車メーカーのほとんどと取引あり。自動車業界は苦戦を強いられているが、住友理工は今期も大幅増益で過去最高益を大きく更新。燃料電池車用の水素供給ホースなど最先端製品の研究開発型企業でもある。
セイコーグループ(8050)
腕時計の「セイコー」。国内外に根強いファンが多くインバウンド需要も活発。フラッグシップモデルの「グランドセイコー」を筆頭に、「プレサージュ」、「アストロン」、「ドルチェ&エクセリーヌ」など高価格帯のブランドが強み。腕時計の製造で培った小型精密技術を応用して電子部品、二次電池、水晶振動子の製造に進出。時計や部品、システムなどの形あるモノを作る企業から、価値を創造する企業へと脱皮を図っている。